2章 ひび割れ原因の推定
ひび割れの原因を「コンクリートのひび割れ調査,補修・補強指針-2003-」(以下、指針)の「3.
2 標準調査による原因推定」により推定する。
2.1 橋脚
2.1.1 原因推定に用いる条件
(1)原因のおおよその判別
本構造物は竣工後30年経過しており、下部構造に発生している変状の原因として、A(材料)
およびB(施工)は考えられない。
よって、分類(i)は【C 使用環境】【D 構造・外力】を抽出対象とする。
(2)パターンの分類
鉄筋に沿ったひび割れ、さび汁が発生しており規則性が認められる。
また、ひび割れ、浮き、はく離は表層で発生している。
よって、分類(ii)の抽出対象は次表のとおりとする。
抽出条件 規則性:有 |
形態 | |||
a 網状 | b 表層 | c 貫通 | ||
発生 時期 |
1 数時間〜1日 2 数日 3 数10日以上 |
─ ─ ─ |
─ ─ b3 |
─ ─ ─ |
原因 | 結 | b3 |
C1 環境温度・湿度の変化 C2 部材両面の温度・湿度の差 C3 凍結融解の繰り返し C4 火災 C5 表面加熱 C6 酸・塩類の化学作用 C7 中性化による内部鋼材のさび C8 塩化物の浸透による内部鋼材のさび D1 設計荷重以内の長期的な荷重 D2 設計荷重を超える長期的な荷重 D3 設計荷重以内の短期的な荷重 D4 設計荷重を超える短期的な荷重 D5 断面・鋼材量不足 D6 構造物の不同沈下 D7 凍上 |
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ |
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ |
(3)メカニズムによる分類
浮き、はく離が見られることから、変形の要因は「膨張性」、ひび割れの関係する範囲は「部材」
が該当する。
よって、分類(iii)の抽出対象は次表のとおりとする。
抽出条件 | 関連する範囲 | |||
a 材料 | b 部材 | c 構造体 | ||
変形 要因 |
1 収縮性 2 膨張性 3 沈下、曲げ、せん断 |
─ ─ ─ |
─ b2 ─ |
─ ─ ─ |
原因 | 結 | b2 |
C1 環境温度・湿度の変化 C2 部材両面の温度・湿度の差 C3 凍結融解の繰り返し C4 火災 C5 表面加熱 C6 酸・塩類の化学作用 C7 中性化による内部鋼材のさび C8 塩化物の浸透による内部鋼材のさび D1 設計荷重以内の長期的な荷重 D2 設計荷重を超える長期的な荷重 D3 設計荷重以内の短期的な荷重 D4 設計荷重を超える短期的な荷重 D5 断面・鋼材量不足 D6 構造物の不同沈下 D7 凍上 |
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ |
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ |
(4)その他の分類
該当する項目は特に見当たらない。
よって、分類(iv)は抽出対象としない。
2.1.2 共通原因の抽出と推定
指針 解説表−3.1,3.2,3.3,3.4により共通する原因を抽出した結果は次表のとおりとなる。
原因 | 抽出結果 | i | ii | iii |
C1 環境温度・湿度の変化 C2 部材両面の温度・湿度の差 C3 凍結融解の繰り返し C4 火災 C5 表面加熱 C6 酸・塩類の化学作用 C7 中性化による内部鋼材のさび C8 塩化物の浸透による内部鋼材のさび D1 設計荷重以内の長期的な荷重 D2 設計荷重を超える長期的な荷重 D3 設計荷重以内の短期的な荷重 D4 設計荷重を超える短期的な荷重 D5 断面・鋼材量不足 D6 構造物の不同沈下 D7 凍上 |
○ ○ △ △ △ ○ ○ △ △ △ |
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ |
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ |
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ |
上表に示すように、ひび割れの原因としては以下が考えられる。
【C1 環境温度・湿度の変化】【C2 部材両面の温度・湿度の差】【C7 中性化による内部鋼
材のさび】【C8 塩化物の浸透による内部鋼材のさび】
このうち、以下の原因が除外される。
【C1 環境温度・湿度の変化】
環境温度・湿度の変化が構造物の変状に直接影響しているとは考えられないので原因か
らは除外される。
【C2 部材両面の温度・湿度の差】
部材両面の温度・湿度の差が構造物の変状に直接影響しているとは考えられないので原
因からは除外される。
【C7 中性化による内部鋼材のさび】
中性化残りが30mm以上であることから、中性化による内部鋼材のさびの発生は考え
られないので、原因から除外される。
したがって、ひび割れの原因は【C8 塩化物の浸透による内部鋼材のさび】であると推定される。