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ACCS(一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会)
一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会は、デジタル著作物の権利保護や著作権に関する啓発・普及活動を通じて、コンピュータ社会における文化の発展に寄与しています。オービックビジネスコンサルタント(業務ソフトウェア開発・販売)の創業者・代表取締役社長 和田成史氏が理事長を務め、多数のソフトウェア開発企業が会員として所属。フォーラムエイトも、同協会の活動に賛同して2022年に入会し、ソフトウェアの地位向上のため活動を継続しています。
前回は、当協会のなりたちと活動について紹介しました。今回は、企業や団体等の組織内におけるビジネスソフトやデジタルフォントなどの違法コピーの問題について解説いたします。
コンピュータソフトウェアは著作権で保護されており、ソフトウェア会社が著作権を保有しています。ソフトウェアを使用する場合、パッケージ製品やライセンスを購入することで、ソフトウェア会社からソフトウェアの使用許諾を受けることが一般的です。インストールの際に、「使用許諾契約」が表示された画面を見た経験はありますでしょうか。
違法コピーの方法は、海賊版を入手して会社のPCにインストールすることや、不正なシリアル番号、アカウント等を入手しての使用が典型例です。
しかし、ソフトウェアを購入していても、違法コピーが発生してしまうことがあります。
パッケージで販売されているソフトウェアの場合、1パッケージでインストールできるPCの台数が決められていることが多いです。この場合、インストール可能台数を超えたインストールをしてしまうと、ソフトウェア会社の使用許諾のない違法コピーとなってしまいます。
また、インストール台数には制限がなく、使用者や同時起動ができる台数に条件がついているライセンスが増えてきました。この場合、ライセンス購入時に決められた人以外が使用するとライセンス違反になります。同時起動の台数制限の場合には、技術的に起動制限がかかっていることが多いため、ほぼ問題は生じません。
なぜ組織内の違法コピーが発生してしまうのでしょう。海賊版の購入の場合は、ソフトウェアは無料で使えてしまう(から使う)、といったソフトウェアに対する意識が根底にあるのかもしれません。ハードウェアと同じく、ソフトウェアの開発には多額のコストがかけられています。販売されているソフトウェアは、対価を払って使用してください。
また、「社員全員が黙っていれば発覚しないだろう」という意識もあるかもしれません。当協会には、従業員からの情報提供が多く寄せられています。違法コピーは隠し通せません。
意図的でない場合は、「ソフトを買ったのでどう使ってもいいはずだ」といった、ライセンスに対する理解が低い場合があります。さらに、ソフトウェアについて管理担当者がいない組織の場合には、利用実態が把握できていないことが原因となる場合もあるでしょう。
海外のソフトウェア団体の調査によると、当協会が発足した1990年代初頭における日本の組織内における違法コピー率は90%近くありました。その後、当協会と会員のソフトウェア会社が共同して、啓発活動や民事手続、ソフトウェア管理手法の普及などの組織内違法コピー対策活動を継続的に行い、また、ソフトウェア会社がソフトのコピーが行えない、インストールができてもライセンスがないと起動できない、などの技術的対策を行ってきた結果、現在では世界トップ水準の低い違法コピー率となりました。
当協会への情報提供内容も変わりました。以前は大企業や自治体などの大規模な組織の情報もありましたが、現在では中小企業の情報が中心となっています。また、情報提供数自体も減少しています。
組織内の違法コピーは規模も件数も減少傾向ですが、完全に消滅したわけではありません。また、会員企業によると、違法コピーはほぼ発生しなくなった企業がある一方、いまだに違法コピーの被害を受けている企業もあります。組織内の違法コピー対策には終わりはないのです。
組織内の違法コピーが発生した場合には、さまざまなリスクがあります。
そもそも著作権法に違反する違法行為です。また、ソフトウェア会社に支払う損害賠償に加えて、弁護士費用などの費用が必要となります。今後使用するソフトは購入しなければなりません。
さらに、ソフトウェアの利用状況の実態調査を行う間はPCが使えず、業務の停滞につながります。
最も重大なリスクは企業の信用度の低下です。違法コピーしたソフトを使っている企業と取引をしたいでしょうか?
組織内の違法コピーを発生させないためにはどうすればよいでしょう。
大規模な組織では、ソフトウェアの利用に関する社内規定を定め、管理ツールも活用しています。社員は社内規定を守っていれば違法コピーが発生しません。
中小規模の組織の場合はどうでしょう。管理者も社内規定もない場合もあるでしょう。この場合、ソフトウェアの利用状況が客観的に説明できるようにしておくことが最低限の対策になります。
例えば、購入したソフトウェアはパッケージもライセンスも、ライセンスの証明となるものを全て一カ所にまとめておきます。そのうえで、無断で持ち出せないようにしましょう。インストールについては、行える人を限定するのが望ましいです。パッケージ、ライセンスの再利用は、その利用がライセンス条件の範囲内であることを確認してから行うようにしましょう。
(Up&Coming '24 盛夏号掲載)
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