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ACCS(一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会)
一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会は、デジタル著作物の権利保護や著作権に関する啓発・普及活動を通じて、コンピュータ社会における文化の発展に寄与しています。オービックビジネスコンサルタント(業務ソフトウェア開発・販売)の創業者・代表取締役社長 和田成史氏が理事長を務め、多数のソフトウェア開発企業が会員として所属。フォーラムエイトも、同協会の活動に賛同して2022年に入会し、ソフトウェアの地位向上のため活動を継続しています。
前号に引き続き、皆さまのビジネスにおいて留意すべき点について解説いたします。今回は、写真を撮影して利用する場合の注意点をまとめました。
前号では、他人が撮影した写真の利用について解説しました。では、自社の社員が撮影した写真をプレゼンテーション資料や会議資料やwebサイトなど利用する場合はどうでしょうか
写真の利用の場合は、「写真の著作権」と「被写体の著作権等」の両面に注意する必要があります。
① 会社などの法人が著作者
まず、写真は著作物として保護されています。そして、著作者は写真を撮影した人です。ただし、著作権法には「職務著作」という規定があり、著作者の例外として、業務として会社や団体などの法人の業務として従業員が撮影した場合は、原則として撮影者でなく、法人が著作者になります。つまり、仕事で撮影した写真は自分の属する会社等が著作権を持つのです。
それならば、自社の社員が撮影した写真であれば問題なく使えそうですが、実は被写体として何を撮影したのかも問題になるのです。
② 他人の著作物を撮影する場合
イラストが描かれたポスターなど、他人が著作権を持つ著作物を撮影して利用する場合、その著作物を複製したり公衆送信したりすることになりますから、著作権者から許諾を得る必要があります。
③ 他人の著作物が「写り込んだ」場合
では、駅前の風景を撮影した際に、漫画のキャラクターのTシャツを着た人がたまたま映り込んだ場合はどうでしょう。
著作権法では、このように他人の著作物が写り込んだ場合、その程度が軽微な場合には、著作権者の許諾は不要、という特別の規定を定めています。ですので、必要以上に写り込みを気にする必要はありません。
④ 屋外に常に設置されている美術作品等を撮影する場合
また、駅前に設置されているブロンズ像のように、屋外に恒常的に設置されている美術作品や、建築物を撮影してその写真を利用する事ができることも著作権法に定められています。
一方、例えば冒頭に例として出した「イラストが描かれたポスター」は、屋外に「恒常的に」設置された美術の著作物という条件を満たさないため、撮影の際には著作権者の許諾が必要となります(もちろん、写り込んだ場合には許諾は不要です)。
また、美術館などの屋内や、囲いがされている美術館の敷地内はここでいう「屋外」には当たりませんので、許諾が必要となります。
⑤ 撮影が可能な場所かの確認も必要
著作権の問題とは別の問題として、「撮影禁止」とされている場所ではその指示に従うことも大切です。
例えば、古い神社仏閣の建物や仏像は著作権で保護されていませんので、著作権法では自由に撮影することができますが、撮影禁止とされている寺社もあります。これは、敷地に立ち入るための条件として定められているもので、守らなければなりません。また、美術館でも同様の定めがなされていますし、展示会でも撮影可/不可のエリアを定めている場合があります。
さらに、遊園地や空港などの施設でも写真撮影の可否については定められていますので、業務での撮影を行う場合には、事前に確認することが大切です。
⑥ 人を撮影する場合
人を撮影し、撮影した写真を公表しようとする場合には、その人から許可を得なければなりません。わたしたちには「肖像権」という、人の姿形を無断で撮影されない権利があるからです。この権利は法律で定められておらず裁判で認められた権利ですが、日本国憲法が根拠とされています。
ただし、人が写ってしまった場合の全てが肖像権侵害となるわけではなく、例えば屋外で開催されたお祭りに集まる群衆や、駅前の人々を引いて撮影した場合には著作権侵害となるおそれは低い一方、街を歩く人をその人が誰か特定できる程度にアップで撮影した場合に肖像権侵害とされた裁判例があります。実際の裁判例ではさまざまな要素をもとにして肖像権侵害を判断していますが、「特定の人をその人が誰か分かるように」撮影・公表する場合には、肖像権の許可をとると良いでしょう。
なお、未成年者を撮影する場合には、本人の許可に加えて保護者の同意も必要となりますのでご注意ください。
⑦ 有名人を撮影する場合
芸能人やスポーツ選手などの有名人を撮影し、ビジネスで利用する場合にも、本人(または所属事務所)の許可が必要となります。これは、肖像権とは別の「パブリシティ権」という権利があるからです。パブリシティ権は、お客を引きつける力を持つ有名人の姿形や氏名を商業的に利用する権利とされています。パブリシティ権も裁判で認められた権利です。
一般人、有名人のいずれにしても、写真を撮影し公表する際には本人の許可をとること、と理解しておけば良いでしょう。
(Up&Coming '25 新年号掲載)
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