開発中製品情報

河川の氾濫解析システム

●リリース予定 2024年6月

開発中のシステムについて

近年の気候変動により、河川の氾濫による被害は増える傾向にあります。弊社では、河川氾濫に対する防災対策の一役を担えるシステムの開発に取り組んでいます。このシステムは、河川の氾濫位置・氾濫流量を解析し、氾濫による浸水域、浸水深を推定することを目的としています。氾濫解析を行うソフトウェアは既に市場に多く存在しますが、本システムは、入力しやすさ、結果の見やすさを重視して、扱いやすいものとなることを目指しています。ここでは、開発中のシステムの概要と展望をご紹介いたします。

河川氾濫のモデル化

図1は、河川と降雨のイメージをあらわしています。河川には、通常時は一定の流量が流れています。降雨があった場合、その雨量が流域を通過して河川の側面に流れ込みます。

この現象を計算するために、時間による水流の変化を考慮できる不定流計算を行います。図2は、図1の河川を不定流計算用にモデル化したイメージ図です。モデル化した河川よりも上流側で降雨の影響があった場合を考慮して、河川の上流端断面の流量は時間に応じて変化する流量ハイドログラフとして与えます。降雨は、横軸を時間、縦軸を降雨強度(mm/hr)としたハイエトグラフで表現されます。この雨量は流域を通過する過程で浸透等による損失が発生します。河川に流れ込む流量は、この損失分を除去した有効降雨のハイエトグラフを使用します。有効降雨の雨量が流域の地表面を流れて河川に達するまでの時間と流量の関係を、表面流モデルにモデル化します。表面流モデルから、河川の側面に流入するハイドログラフが求められます。この流量は、不定流計算では河道の断面間に流入する横流入量として計算に考慮します。

 

図1 河川と降雨

 

図2 不定流計算モデル


有効降雨モデル

有効降雨モデルは、降雨強度のハイエトグラフから流域の浸透量を差し引きます。本システムでは浸透損失法や、ホートン式等から選択できることを検討しています。図3のグラフは、灰色の部分が損失を表現しています。

図3 有効降雨モデル

表面流モデル

雨が地表面を流れて河道に達するまでの時間と流量の関係を、表面流モデルとしてモデル化します。本システムでは、表面流モデルとしてキネマティックモデル、貯留関数法モデルを用意することを検討しています。

図4 表面流流量の計算例(キネマティックモデル)

不定流計算式

不定流計算は、基礎式として以下の連続式と運動方程式を使用します。

連続式:

運動方程式:


プログラムでは、この偏微分式を差分式に近似して使用します。河川の断面間ごとに関係式を作成して、これらの式を連立して解を求めます。差分化の方法により精度や計算の安定性が異なりますが、最適な解法になるための調査・検証を行っています。

二次元不定流計算

河川から氾濫した水の流れを、二次元不定流計算でシミュレーションする機能を開発中です。地形メッシュデータをモデルとして、氾濫地点から拡散る水の時間ごとの流れを解析します。

外水氾濫と内水氾濫

開発では、河川の氾濫による外水氾濫から着手しています。最終的には、下水道、雨水排水施設等のモデル化による内水氾濫にも対応できるシステムを目指しています。

今後の展開

氾濫解析製品については、計算の安定性、計算時間の短縮、データサイズの圧縮、入力の簡素化、三次元による可視化、出力のわかりやすさといった課題があります。これらを解決・改善して、より使いやすい製品とすることで、氾濫推定域の空白地帯の縮小につながるよう、今後の取り組みを進めて行きます。

(Up&Coming '24 新年号掲載)




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