連載 【第25回】
皮膚の乾燥とスキンケア

profile
関西医科大学卒業、京都大学大学院博士課程修了・医学博士。マウントシナイ医科大学留学、東京慈恵会医科大学、帯津三敬三敬塾
クリニック院長を経て、現在ピュシス統合医療クリニック院長。公益財団法人 未来工学研究所研究参与、東京大学大学院新領域創成科学研究科共同客員研究員、統合医療 アール研究所所長。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本心療内科学会登録指導医、日本心身医学会専門医、日本森田療法学会認定医。日本統合医療学会認定医・業務執行理事。日本ホメオパシー医学会専門医・専務理事。『妊娠力心と体の8つの習慣』監訳。『花粉症にはホメオパシーがいい』『がんという病と生きる森田療法による不安からの回復』共著。『1分で眠れる4-7-8呼吸』監修など多数。


冬に皮膚がカサカサになり、足のすねや前腕が痒くなることはありませんか。今回は皮膚の乾燥に対するスキンケアをご紹介します。スキンケアとは医薬品を使わないで、皮膚の健康を維持したり、皮膚の病気を予防することです。スキンケアには1)皮膚を清潔に保つこと、2)乾燥から皮膚を守ること、3)紫外線の害から皮膚を守り、皮膚の老化を防ぐことがあります。


皮膚の乾燥;ドライスキン

ドライスキンとは角質層(角層)の水分含有量が低下し潤いのない肌の状態をいいます。図1に皮膚の構造、図2に角質層を示しています。健康な皮膚の角質層では15~20%の水分が保たれ、この水分は汗や湿気により供給されます。気温が低下して空気が乾燥する1~2月にもっとも少なくなります。また皮脂量も秋から冬にかけて急激に減少し、皮膚のバリア機能の低下により皮膚からの水分蒸散量の増加により乾燥していきます。角質層の皮脂量は顔より躯幹の方が少なく、とくに手足は乾燥しやすい傾向があります。全脂質量を額、胸、足の3カ所で比較すると、額がもっとも多く、次いで胸、足の順です。特に足のすねは一番皮膚が乾燥するところで、皮脂減少性湿疹の好発部位です。顔の中では皮脂分泌の少ない、目や口の周りは一番乾燥しやすくなります。

図1
図2

ドライスキンの外的要因としては冬の乾燥だけでなく、紫外線やストレスなども原因となります。

内的要因は加齢による皮膚の老化です。加齢によって脂腺や汗腺の機能低下による皮脂分泌低下、発汗量の低下、皮脂膜形成の低下、さらに代謝機能が低下して、セラミドを中心とする角質細胞間脂質の合成、天然保湿因子(NMF)の形成減少が要因となります。

皮膚の肌質は皮脂量と角質層の水分含有量で決まってきます(図3)。肌質が乾燥肌の人はドライスキンに対するスキンケアが役立ちます。

図3


スキンケアの基本

1)ライフスタイル

  • 室内の乾燥に注意する。加湿器を置くなどの工夫をする。肌には湿度50~60%がよい(30%以下では乾燥)
  • こたつや電気毛布を長時間使用しない
  • 肌に直接触れる衣類は、チクチクする素材は避け、木綿など刺激の少ない素材を選ぶ
  • 衣類を洗濯するときは、せっけん分が残らないようによくすすぐ
  • 辛いものを避ける
  • 睡眠を十分にとる
  • たばこは吸い過ぎないようにする
  • メンタルストレス、過労を避ける
  • 入浴時の注意;熱いお湯で長湯すると皮膚温が高まり、痒みが増すので避ける:皮膚温を高める効果のある入浴剤も避ける:体を洗うときはナイロンタオルなどでゴシゴシ洗うと、角質層が剥がれ落ちて薄くなり、乾燥が進み、湿疹が起こりやすくなる。木綿のやわらかいタオルを使ったり、手で直接洗う:せっけんやシャンプーは少量を手のひらでよく泡立ててから使う。多量に使うと角質層の脂分が取り除かれる危険があり、できれば弱酸性のマイルドなせっけんを使う

2)皮膚の保湿
保湿剤は吸湿性の高い水溶性成分を含み 直接的に角質層の水分を増加させるモイスチャライザーと皮膚を被覆することにより水分蒸散を抑え間接的に角質層の水分を増加させるエモリエントに分類されています。エモリエントには,ワセリンなどで、油脂膜を形成することで水分蒸発を防ぎますが、ベタつきがあります。モイスチャライザーはヘパリン類似物質や尿素といった保水成分を含み、エモリエントよりも角質層の水分を増加させる効果が強く、剤形のバリエーションも豊富です。図4に保湿剤をあげています。保湿剤の外用は入浴後5分もたたないうちに手足や乾燥しやすい部位にパタパタと軽くたたくようにして、皮膚を膜で覆うような感じで用います、皮膚からの水分蒸散を防ぐと効果的です。

図4




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(Up&Coming '24 春の号掲載)
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