本連載は、「システム開発」をテーマとしたコーナーです。フォーラムエイトのシステム開発の実績にもとづいて、毎回さまざまなトピックを紹介していきます。
今回は、完全自動運転時代に向けた「交通標準プラットフォーム」の提案とその応用例についてご紹介します。

自動運転時代に対応可能な交通標準プラットフォームの提案

はじめに

2030年代には完全自動運転(レベル5)車両が自由に道路を走行する時代が到来すると予想されています。現在も公道での自動運転実証実験が進められている段階であり、レベル5の走行に向けて開発や検証が進められています。今後の自動運転の普及には、自動運転の技術向上はもちろんのこと、実際の運用面での課題解決が求められています。

具体的には、自動運転を全体で管理できるプラットフォームが存在していないことが課題として挙げられます。現状では各メーカーが個別の管理システムを構築していますが、結果として類似したシステムが乱立し、自動運転の管理上大きなデメリットになっています。また、MaaSをはじめとする各種交通サービスについても各交通機関や各自治体で独自のシステムを運用している状況です。

様々なデータが自動車に結びつくコネクティッドカーの時代ですが、今後の運用面ではコネクティッドデータの概念が更に重要視されると考えられます。交通に関するデータの標準化とシステムの一元化によって、統合的な交通ソリューションを創出することが有効です。

交通標準プラットフォームの提案

完全自動運転時代に有効なソリューションとして、弊社では交通標準プラットフォームを提案します。弊社は交通シミュレーションソフトウェアUC-win/Roadの開発を20世紀から継続しており、長年の蓄積とノウハウを有しています。近年では、ブラウザで簡易にメタバース体験ができるメタバニアF8VPS、統合情報管理システムであるForumSyncを発表しており、これらのソフトウェアを基盤として、あらゆる交通データの標準化とソリューションを提供します。イメージ図を図1に示します。

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図1 ForumSync 活用イメージ

自動運転車とのデータ連携については、現在位置や計器情報の走行データ、レーダーやカメラなどのセンサーデータ、車両区分のデータを連携します。公共交通については、路線図と現在の走行位置データ、運行ダイヤや運行情報などの運行データ、予約サイトのAPIや空車有無といった予約データを連携します。

交通関連施設として、駐車データやガソリン(EVスタンド)のデータ、道路や橋梁データと連携します。

これらのデータをForumSyncによってデータ連携を行い、データ連携と検索、利用に関して標準化を行います。標準化されたデータは用途に合わせて各種ソフトウェアでご利用頂けます。

自動運転の研究開発やモニタリングにはUC-win/Road、ブラウザで一般利用者やステークホルダー間に簡易にモニタリング結果を閲覧する場合やMaaSにはメタバニアF8VPS、橋梁など構造物の設計にはUC-1 Cloud等に適用できます。

交通標準プラットフォームの応用例

自動運転管理プラットフォーム

システム構築例を図2に示します。自動運転の走行時には、各メーカーが走行車両のデータをサーバに送信し、APIにより運行管理を行うシステムを提供している場合があります。これにより自動運転車両の外側でデータ連携が可能になりますが、API仕様や取得方法をForumSyncで登録することにより、UC-win/RoadやメタバニアF8VPSなど各種ソフトウェアでデータがご利用頂けます。

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図2 自動運転管理プラットフォームのシステム連携イメージ

ForumSyncを活用することで、データ連携の標準化を実現し、異なるメーカー間でのシームレスな情報共有が可能となります。また、機密情報は社内環境のみ、販売・一般公開できる情報は個々の環境に共有など、環境ごとに公開できるデータを設定できるのも特徴です。

UC-win/Roadでは走行環境の3次元可視化はもちろん、自動運転に関するパッケージ製品を展開しております。また、メタバニアF8VPS連携により、UC-win/Roadでモニタリングしている自動運転車両をブラウザ上で簡易に確認することが可能です。

各々のメーカーで自動運転のAPI連携は普及していますが、それらを標準化してデータを取得することは容易ではありません。また、モニタリング用のアプリケーションや管理ビューワーを独自に開発することは大きな開発コストを必要とするため、ForumSync、UC-win/Road、メタバニアF8VPS等の既存システムをベースとした自動運転マネジメントのシステム構築が有力です。

MaaSプラットフォーム

弊社既存製品によるシステム構築により、様々な交通機関のシステムと連携して複数の交通機関を一括で予約できるMaaSシステムを実現することが可能です。MaaSシステムでは、APIを通じて各種予約・配車アプリと連携し、シェアカー、タクシー、バスなどの様々な交通手段を予約可能になります。道路データや混雑情報、バスやタクシーの車載GPSによって、現在地周辺の交通機関の状況をリアルタイムで表示。ルート探索を行い、目的地までに必要な交通機関の予約を一括で行えるシステムが期待できます。今まで個別に使用していた予約アプリが集約化され、利用者の利便性向上はもちろんのこと、交通事業者にとっても運用コストがダウンしメリットが大きいものとなります。MaaSシステムの検索操作画面イメージを図3に示します。

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図3 MaaSシステムの検索操作画面イメージ

おわりに

完全自動運転時代の到来に向けて、交通データの標準化による交通標準プラットフォームの構築は喫緊の課題です。各国が自動運転技術を競い合う中、弊社は国産のデータ連携&交通シミュレーション技術により、各ステークホルダーが個別にシステムを構築する現状からの脱却を目指します。今後の開発に、ぜひご期待ください。

(Up&Coming '25 秋の号掲載)



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