Vol.9

大川(旧淀川)

大川は新淀川から分流し、中之島で南北に分かれ、北が堂島川、南が土佐堀川に分かれ再び合流し安治川、木津川、岩崎運河、尻無川へと続きます。旧淀川は分流や合流する川や運河が多くあり、最終的に大阪湾へ注ぐ一級河川です。

治水の歴史

淀川は、洪水と治水を繰り返してきた悲惨な歴史を教訓に、200年に一度という大洪水に備えるために行われた、淀川の改修工事によって毛馬の水門・閘門が建設され昭和49年(1974年)10月に完成しました。毛馬の閘門と旧洗堰は明治18年(1885年)の淀川大洪水を起因に明治43年に設けられたもので、オランダ人技師のヨハネス・デ・レーケの設計により当時の最高技術が駆使され、わが国近代治水工事の発祥と言われています。

毛馬閘門は新淀川と大川(旧淀川)の間に生じた約1mの水位差を解消し船が安全に航行できるように造られました。新淀川と旧淀川と分岐する部分を2つの扉で仕切り、その中に船を入れて扉を閉め、扉と扉の間(閘室)の水位を進行方向にある川の水位と同じにすることで、2つの川の水位差を解消しました。

写真1 淀川の分岐点 淀川の本流、毛馬の閘門を通り大川へ

写真2 昭和49年(1974年)から現役の毛馬閘門

写真3 旧毛馬閘門

大川(旧淀川)の歴史

毛馬の閘門を経て、淀川旧流路である大川は、大阪市都島区と北区の境を南流していきます。都島区側の左岸には桜ノ宮公園があり、桜の名所となっています。対岸の天満橋には公園があり、桜の名所となっています。対岸の天満橋には造幣局があり、ここも桜の名所で桜の季節には一般に開放され賑わいます。通称「通り抜け」と言われています。

造幣局の少し北あたりは、大阪アメニティパーク(OAP)として再開発が行われ帝国ホテルなどが入ります。

写真4 中之島地区(手前側:堂島川・奥側:大川)

見どころ寄りどころ

水上バス『アクアライナー』

大阪の中心街を流れる大川は趣のある建築物と緑の木々が共有する空間です。その大川をアクアライナーが周遊しています写真5。大川には歴史的に有名な橋が多く架かっています。新鴫野橋、天満橋、淀屋橋難波橋、天神橋の下をくぐり大阪城港へと戻ります。昭和10年(1935年)竣工の天満橋は、戦前の三大ゲルバー橋の一つです。

写真5 アクアライナー

大阪天満宮

大阪天満宮は大阪市北区にあり日本三大祭りの一つである天神祭が毎年7月24日・25日に行われます。天神祭に執り行われる船渡御と呼ばれる神事で神霊をのせた御鳳輦奉安船に、お囃子、供奉船などが従い、天神橋のたもとから出航して造幣局や中之島のある大川をさかのぼり、反転してくだり天満宮へともどります写真6

写真6 大阪天満宮

造幣局

造幣局は大阪市北区の大川沿いに位置し大阪造幣局とも俗称されます。明治4年(1871年)の創設時以来、工場内及び近隣周辺に貨幣鋳造時の余剰ガスでガス灯を灯しており、当初は日本初のガス灯による街灯でした。

昭和39年(1964年)東京オリンピックや平成10年(1998年)長野オリンピック・パラリンピックをはじめ今年の東京オリンピック・パラリンピックの金・銀・銅メダルなども製作されています。

写真7 源八橋から下流の国道1号線の桜宮橋を望む

写真8 淀川資料館(大阪府枚方市)

写真9 粗朶

写真10 粗朶沈床

日本の近代治水を支えた外国人技師

明治時代、水深の浅かった淀川を整備するため、大がかりな工事を行うことになりました。そこで技術指導を受けるためオランダから技術者たちが呼び寄せられました。

ヨハネス・デ・レーケはそのうちの一人です。デ・レーケは30年間も日本で過し、淀川だけでなく全国の河川や港の工事で活躍したとのことです。

粗朶沈床(そだちんしょう)ケレップ水制(Krib;水制)

粗朶とはくり、ナラ、カシ、クヌギなどの木の枝のことでこれらの木の枝を束ねて格子状に組んだ工作物を川岸から川の中心部に向かって設置する工法です。デ・レーケはこの工法で護岸や大型船の航行のために水深を確保する工事を行いました。水深の確保ができ、蒸気船のような大型船も通れるようになりました。現在はわんどとして生き物の住みかとなっています。

<参考文献>

1) 国土交通省 近畿地方整備局 淀川河川事務所
https://www.kkr.mlit.go.jp/yodogawa/


2) 淀川資料館
https://www.kkr.mlit.go.jp/yodogawa/shisetu/yodo-museum/


3) 大阪市HP
https://www.city.osaka.lg.jp/


4) 大阪市北区HP
https://www.city.osaka.lg.jp/kita/


5) 大阪市都島区HP
https://www.city.osaka.lg.jp/miyakojima/


(Up&Coming '21 秋の号掲載)