最先端表現技術利用推進協会レポート

Vol.46

第8回 羽倉賞受賞作品発表

羽倉賞は、表技協の創設者であり、3D立体映像、ホログラフィ、VRなどの最先端表現技術の研究、普及に多大な功績を残された故羽倉弘之氏の功績を称え、表現技術の質を高めて広い分野への普及に貢献するために、2017年に表技協により創設されました。分野を問わず最先端の表現技術を活用した作品および取り組みを通して社会に貢献した功績を表彰します。2024年11月15日、FORUM8デザインフェスティバル2024 Day3にて第8回羽倉賞表彰式を実施。応募作品の中から、羽倉賞1作品、フォーラムエイトDKFORUM賞1作品、優秀賞2作品、奨励賞5作品の計9作品が選ばれました。

羽倉賞

「Spot Shadow: インタラクティブな空間デザインに向けた影の操作を可能にするシステム」

東京都立大学 阪口 紗季

室内の照明環境を「光」ではなく「影」の制御を使って実現するための技術開発に取り組んでいます。Spot Shadowは、その要素技術として、室内の任意の位置に任意の大きさや形の影を生成できる装置であり、 コントローラで影を操作できることを確認しました。

推薦:CG-ARTS協会

フォーラムエイトDKFORUM賞

「デジタル能舞 in 高台寺2024」

株式会社Droots 土井 大輔

北政所「ねね」の400年遠忌記念として太閤秀吉公に京都を代表する寺院の一つであり、ゆかりある高台寺で太閤能を奉納。高台寺の方丈前庭と開山堂前において、プロジェクションマッピングと能舞との融合(コラボレーション)を実現。全国の寺社においては初めての開催となります。

推薦団体:最先端表現技術利用推進協会

優秀賞

「光源アレーを用いた3次元ディスプレー」

NHK放送技術研究所 空間表現メディア研究部

視点位置に応じて自然な3次元(3D)映像を表示する技術の研究を進めています。電気的に切り替え可能な光源アレーを用いることで、好みに応じて3Dと2Dの映像を選択して視聴できるディスプレーを開発しました。視聴者は、3D/2D表示モードやコンテンツ(海の生き物)を、ボタンで簡単に切り替えることができます。

推薦団体:超臨場感コミュニケーション産学官フォーラム

優秀賞

「体積走査型立体ディスプレイ brightvox 3Dによる情報コミュニケーションの発展」

株式会社ブライトヴォックス

3D映像情報を、特別なグラスを着用することなく、肉眼で全方位から鑑賞できるディスプレイを開発。サイネージ、デジタルアート、文化財の復元表示、立体コミュニケーションツール、アバターなど、様々な応用用途での展開に着手。将来的には、教育・医療・建築など立体構造の情報伝達を支援するデバイスとして発展を睨みます。

推薦団体:最先端表現技術利用推進協会


奨励賞

「360度映像による新感覚コンサート」

エール管弦楽団 音楽監督 鯵坂 圭司

通常バレエもしくは管絃楽のみで演奏される白鳥の湖をデジタル掛け軸を使用して演奏。ホールを包む映像から観客が結末を想像する仕掛けを作成。

「AIアバターによる次世代遠隔医療システム」

株式会社YS MEDIA AGENCY

AIアバターを用いた遠隔医療システム。顔認証や音声認識技術を活用し、ユーザーの身元確認と医師との対話を可能にするインターフェースを実現。

「Mosion: Gaze Guidance with Motiontriggered Visual Cues by Mosaic Patterns」

東京科学大学 小池研究室・宮藤研究室

運動中の観測者に対してのみ働き, 静止中の観測者には影響を及ぼさない視線誘導手法を提案。

「リアルな影と光沢を再現する人物全身画像の再照明」

筑波大学 計算幾何学とグラフィックス研究室
田島 大地, 金森 由博, 遠藤 結城

人物全身写真の照明効果を後処理で編集できる技術を開発。照明を新方式の離散表現で近似することで、強弱のある影や光沢をよりリアルに再現。

「Chronospoon: 時を操る調味食器」

明治大学 総合数理学部 宮下 芳明

味の経時変化、特に熟成過程を味センサで測定し、味物質の添加量を数式としてモデル化することで、食品の味の時間変化を操れるスプーン。

(Up&Coming '25 新年号掲載)



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