プロフィール
映像の総合プロダクション、デキサホールディングス株式会社(DXA)。同社代表取締役の奥山正次さんは元々、テレビ局系列会社社員やフリーランスのディレクターとして数々のテレビ番組の制作に従事。それらを通じ培ったノウハウを基に2012年、DXAを設立。以来、長年携わる映像分野を中心に、それに付随する形でスタートしたコンピュータグラフィックス(CG)、動画にウェートを置いたウェブサイトなどの制作業務に対応。現在は、1)医療をはじめ広範な分野に及ぶ展示会やウェブ用などの企業向け映像制作、2)テレビ番組/テレビCM向けCG制作、が同社事業の大きな柱となっています。
奥山さんは、自身がディレクターだった20年近く前、趣味の一環でShadeを試しに購入。自らのCG制作ニーズに最適なそのメリットを実感したことから、その後も継続的にバージョンアップしつつShadeを活用。「特急CG」を謳うDXAにとって、Shadeは不可欠なツールになっている、と位置づけます。
医療ドラマや再現番組から企業VPCMまでTV業界に精通したノウハウ駆使
「特急CG」支えるShade3D、その普及とCGの裾野拡大にも注力
「この時代、CG抜きの映像はありえないと思う」。映像の本質は直感性であり、そのカギはシンプルさ。それを実現する道具がCG、と奥山さんは言及。「なぜ、映像制作会社が自前でCGを作らないのか」と疑問に思っていた2000年代初め、ゴールデン枠のディレクターとして携わった番組で急きょCGが必要となり、当時趣味で使い始めていたShadeで自らCGを作成。それがオンエアされて何ものにも代えがたい達成感を得たのがきっかけとなり、仕事の速さを売りにテレビ番組向けCG制作を担うビジネスへと踏み出した経緯があります。
この「特急CG制作」という独自のスタイルは、実際に顧客ニーズと合致。奥山さんは、1)当初はカメラで撮影した脳腫瘍摘出手術の様子を放映する予定が、数時間前になってCGに差し替えられたテレビ番組、2)クライアントとの間に広告代理店や制作会社が介在しそのやり取りに時間を割かれる中で短納期の対応を求められた企業VP(ビデオパッケージ)制作、などでの成功例を振り返ります。
「最初は他のCGソフトを使っていたのです」。それが20年近く前、家電量販店で見つけたShadeのBasic版を買って試したところ、ベジェ曲線を用いる自由曲面モデリングが自身にフィット。そのもたらす上質なモデリングの感触に「これだよ」と閃いて以降、多機能版へと移行。今度は、大画面の静止画を短時間に描き出せるその優れたレンダリング機能、さらに、急ぎのCG制作で必要最低限度の品質を確保しつつ短時間に大量のレンダリング画像を出さなければならないケースで最適な解をもたらす機能性を実感。以後DXAは暖簾分けのアライアンスパートナーである株式会社ゲインともソフト環境をShade3Dで統一、以後共同作業で多方面のCG制作に進出します。
「クリエーター冥利に尽きる仕事でした」。奥山さんがそう語るのは、今年初めにShade3Dを利用して臨んだ株式会社アデランスのテレビCM用CG制作。そこでは、髪の毛のふわっとした動きの表現への妥協のない追求が徹底。顧客のイメージに確実に近づけていくため、ふわり加減を多段階で設定。顧客の語る意図を自身が咀嚼し、それを言語化しクリエイターに伝えてモデリングやレンダリングに反映。微修正を加えながら顧客にプレビュー版を見せつつ動きを追い込むという作業が重ねられました。
一方、テレビ番組向けCG制作は短納期が通常です。とりわけ、あるバラエティ番組では「明後日までに10秒尺のCGを30カット」制作することが求められ、「もうパニックです」と言いつつ、奥山さんらはPoserと連携するなどの工夫により対応。また、医療ドラマのクランクイン直前(前年12月末)で脳外科医役が術式解説シーンで使うCG素材が必要なことが判明。依頼を受けて翌年の1月初頭には高精細なCGの納品に繋げています。
これらの経験も踏まえ、奥山さんはShade3Dが有する様々な機能を列挙。その上で、Shadeの良さは誰でも直感的に簡単にCGを作れるところと位置づけ、Shadeを通じ幅広い層の人々にCGの楽しさを訴求すべきでは、との考えを述べます。
そこには、Shadeは元々良いソフトなのだから、もっとプロに使ってもらうための工夫が必要。また、プロは育てないと増えないため、これから可能性のある若い人たちにその楽しさをいかに理解してもらうかが重要になる、と説きます。
「その意味からもShade3Dには懐の深いソフトであり続けて欲しいと思います」
CG制作/モデリング協力/横山敦子(株式会社ゲイン)
執筆:池野隆
(Up&Coming '21 盛夏号掲載)