Vol. 48
このコーナーでは、ユーザーの皆様に役立つような税務、会計、労務、法務などの総務情報を中心に取り上げ、専門家の方にわかりやすく紹介いただきます。今回は、フリーランス・事業者間取引適正化等法について解説いたします。
 
フリーランス取引の適正化に関する新法について

はじめに

 フリーランスとの取引を適正化する新たな法律(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)が、本年11月1日に施行されます[1]。本稿ではその概要についてご紹介致します。

フリーランス新法が適用される取引の範囲

1. 「事業者間(BtoB)」の取引であること
 フリーランス新法は、発注者が消費者である取引には適用がありません[2]。例えば、個人が自分自身の結婚式の写真撮影をフリーランスに発注するような場合です。
 一方、下請法等とは異なり資本金等の要件はなく、事業者間の取引であれば、どのような規模でも新法の対象となる可能性があることは留意が必要です。

2. 「業務委託」取引であること
 「業務委託」とは、事業者が、その事業のために他の事業者に対し
・物品の製造
・情報成果物の作成
・役務の提供
を委託する行為を指します。

3. 業務委託を受ける側の事業者がフリーランスであること
 フリーランス新法では、業務委託を受ける側の事業者が個人であって従業員を使用しないものや、法人であっても代表者以外に役員がなく従業員を使用しないものを「特定受託事業者」と位置付け、この特定受託事業者に業務を委託する事業者に様々な規制を課すことにより、保護の対象としています(以下「フリーランス」と記載)。
 なお、ここでいう「従業員」には、短時間・短期間等の一時的に雇用される者は含まれず、同居親族も含まれません[3]

規制の概要

1. 取引主体や取引期間により規制が異なること
 規制内容は、「フリーランス」に発注する側が従業員を使用するかどうか、取引期間の長短によって変わりますので、場合分けして説明します。

2. 規制の内容[2]
(ア)「フリーランス」に業務委託する全事業者に課せられる規制
①書面等による取引条件の明示
 委託事業者が「フリーランス」に業務委託をする場合、書面等より「委託する業務の内容」「報酬の額」「支払期日」等の取引条件を明示することが必要です。この義務は、委託事業者も「フリーランス」である場合にも適用されます。

(イ)発注事業者(ただし、従業員を使用する委託事業者に限る。以下同じ。)が「フリーランス」に業務委託する場合に課せられる規制
②報酬支払期日の設定・期日内の支払
 発注事業者が発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内の報酬支払期日を設定し、期日内に支払うことが必要となります。

③募集情報の的確表示発注事業者が広告等に「フリーランス」の募集に関する情報を掲載する際、虚偽の表示や誤解を与える表示をすることが禁止され、内容を正確かつ最新のものに保つことが求められます。

④ハラスメント対策に関する体制整備
 発注事業者に対し、「フリーランス」へのハラスメント行為に関する相談対応のための体制整備等の措置を講じることが義務付けられます。例えば、自社従業員に対するハラスメント研修や「フリーランス」向けの相談窓口の整備等が考えられます。

(ウ)発注事業者が「フリーランス」に一定期間以上の継続的業務委託をする場合に課せられる規制
⑤禁止事項
 発注事業者が「フリーランス」に1か月以上の継続的業務委託をする場合、「フリーランス」に責任がないにもかかわらず、「発注した物品等を受け取らない」「不当に著しく低い報酬の設定」「報酬額の事後減額」「納品物の事後返品」「一方的な業務内容の変更」といった行為をすることが禁止されます。

⑥中途解約等の事前予告・理由開示
 発注事業者が「フリーランス」に6か月以上の継続的業務委託をする場合、継続的業務委託の中途解除や更新をしないときは、原則として30日前に予告することが求められます。また、「フリーランス」から中途解約等の理由開示を求められた場合はこれに応じなければなりません。

⑦育児介護等と業務の両立に対する配慮
 発注事業者が「フリーランス」に6か月以上の継続的業務委託をする場合、「フリーランス」が育児介護などと業務を両立できるよう、「フリーランス」の申出に応じて必要な配慮をすることが求められます。


違反行為に対するペナルティ

「フリーランス」は、本法違反と思われる行為があった場合、公正取引委員会、中小企業庁及び厚生労働省に設置される窓口に申告でき、行政はその内容に応じて違反事業者等に対し、報告徴収・立入検査、指導・助言または勧告措置を取ることになっています。
 そして、違反事業者等が行政からの勧告に従わない場合、命令や事業者名の公表ができることになっています。違反事業者等が命令に従わない場合、50万円以下の罰金が科されます。



図1 フリーランス新法の取引主体・取引期間と規制の関係
出典:内閣官房ほか作成リーフレット「フリーランスの取引に関する新しい法律が11月にスタート!」[4]をもとに一部改変したもの

出典

[1]厚生労働省ウェブサイト「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00002.html
[2]内閣官房ほか作成パンフレット「ここからはじめるフリーランス・事業者間取引適正化等法」
https://www.mhlw.go.jp/content/001278830.pdf
[3]公正取引委員会・厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」
https://www.mhlw.go.jp/content/001259281.pdf
[4]内閣官房ほか作成リーフレット「フリーランスの取引に関する新しい法律が11 月にスタート!」
https://www.mhlw.go.jp/content/001261528.pdf

監修:中本総合法律事務所

(Up&Coming '24 秋の号掲載)



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