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はじめに
福田知弘氏による「都市と建築のブログ」の好評連載の第51回。毎回、福田氏がユーモアを交えて紹介する都市や建築。今回は倉敷の3Dデジタルシティ・モデリングにフォーラムエイトVRサポートグループのスタッフがチャレンジします。どうぞお楽しみください。
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Vol.51
倉敷:町人の力
大阪大学大学院准教授 福田 知弘
プロフィール
1971年兵庫県加古川市生まれ。大阪大学准教授、博士(工学)。環境設計情報学が専門。CAADRIA(Computer Aided Architectural Design Research In Asia)国際学会 フェロー、日本建築学会 情報システム技術委員会 幹事、NPO法人もうひとつの旅クラブ理事など。著書に、VRプレゼンテーションと新しい街づくり(共著)、はじめての環境デザイン学(共著)、夢のVR世紀(監修)など。ふくだぶろーぐは、http://fukudablog.hatenablog.com/
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「建築家 浦辺鎮太郎の仕事」展へ
2019年晩秋、展覧会「建築家 浦辺鎮太郎の仕事」を見学に倉敷へ。倉敷駅を降りて、駅前広場に出ると、駅舎と両側に建つビルの表情が、よくある駅前ビルとは明らかに違う。センスある建築家が関わったのであろう、来街者にとって最初に目にする駅前の風景から文化の香りを感じさせてくれる。
展覧会の関連企画として連続シンポジウム「倉敷の建築文化」が催されており、ちょうど第4回シンポ「モダンとポストモダンの間」の日であった。丹下健三が設計した旧倉敷市庁舎(1960年)であり、その後、浦辺鎮太郎がコンバージョンした現・倉敷市立美術館が会場(1983年、図1)。
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1 倉敷市立美術館
シンポに使われたホールは、市庁舎時代は議場だったそう(図2)。
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2 美術館ホール
向かいには、浦辺による倉敷国際ホテル(1963年、図3)。著名な建築の中での建築シンポジウム。
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3 倉敷国際ホテル
倉敷アイビースクエア
松葉先生の講演を聴いてから、「浦辺鎮太郎の仕事」展覧会へ。会場は、浦辺さんの代表作・倉敷アイビースクエア(図4)。
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4 倉敷アイビースクエア
アイビースクエアは、1889年(明治22年)より操業していた倉敷紡績所(現・クラボウ)の紡績工場跡を宿泊施設などの複合施設へとコンバージョンした施設(1974年)。現在では、古くなった建造物は何でもつぶして建て直すというスクラップ・アンド・ビルドの考え方は改められつつあり、リノベーションやコンバージョンは専門家でなくとも知られるようになった。が、1970年代は、古いものは新しく作り変えてしまおうという考え方は当たり前。そのような中で、工場を宿泊施設へと生まれ変わらせるコンバージョンの考え方と実践は先駆的だった(図5)。
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5 アイビースクエア
展覧会では、著名な作品のパネル展示の他、浦辺さんが仕事で使われていた数々の手帳やスケッチ、一丁シャンゼリゼ計画や大阪万博1970などアンビルトのプロジェクト、展覧会に併せて学生さんが制作した数々の建築模型など、非常に興味深かった。日ごろ見慣れた、千里阪急ホテルも浦辺さんの仕事だった(図6)。
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6 「浦辺鎮太郎の仕事」展
吉備の穴海
古代の倉敷を眺めて驚く。当時の倉敷は、吉備の穴海(きびのあなうみ)と呼ばれる内海にあり、倉敷の中心部にある標高36mの鶴形山(阿智神社)は海に浮かぶ島であった(図7)。
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7 美観地区より鶴形山
鶴形山の麓は現在、電柱の地中化や道路の美装化が進められて、昔のたたずまいに戻りつつあり落ち着いた時間が流れているのだが(図8)、いきなり岩肌が露出している箇所に出くわす(図9)。
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8 本町通り付近
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9 露出した岩肌
景観保全
重要伝統的建造物群保存地区は、城下町、宿場町、門前町、商家町、山村集落など、歴史的な集落・町並みを保存すべく、市町村が定める伝統的建造物群保存地区のうち、価値の高いものを国が選定するものである。現在は、43都道府県120地区が指定されている。
第1号は、1976年(昭和51年)に選定された、仙北市角館(秋田県)、南木曽町妻籠宿(長野県)、白川村荻町(岐阜県)、京都市産寧坂、京都市祇園新橋(以上、京都府)、萩市堀内地区、萩市平安古地区(以上、山口県)の7地区である。
倉敷川畔と聞けば、倉敷川沿いに建つ白壁の土蔵群と柳並木、そして、雁木を思い浮かべる(図10)。この地区は、1979年(昭和54年)、重要伝統的建造物群保存地区に指定された。全国で13番目である。
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10 倉敷川畔
集積度の高さ
美観地区を歩くと、時代を跨いだ素敵な建物群、その集積の高さに驚く。点から点ではなく、一軒見学して、次はお隣を見学してみよう、という具合だ。宝箱の中をそぞろ歩ける嬉しさ。
大原美術館は、大原孫三郎が1930年(昭和5年)に開館した私立博物館(図11、12)。
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11 大原美術館本館
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12 大原美術館より大原邸
東京府美術館(現・東京都美術館)の開館が1926年(大正13年)、京都市美術館が1933年(昭和8年)、大阪市美術館が1936年(昭和11年)だから、如何に早い時期なのかが窺える。この分館が1961年(昭和36年)に浦辺の設計により完成しているが、建物は低く、城壁のようである(図13)。当時の急激な都市化から美観地区を守る城壁として構想されたためらしい。
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13 大原美術館別館
倉敷考古館は、古代吉備の歴史を紹介する。本館は江戸時代の米蔵を改装した木造であり、なまこ壁が特徴的。1957年に新設された増築棟は浦辺による。本館を意識しつつ、新たな建築を模索した姿である(図14)。
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14 倉敷考古館
大原美術館の向かいに、緑がかった瓦屋根と橙色の壁とした有隣荘(大原家別邸)。設計は薬師寺主計。古い写真を眺めているような、モノトーンの建物が並ぶ美観地区の中で、色を感じる(図15)。
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15 有隣荘
街角
現在の市役所も浦辺さんの仕事(1980年、図16)。
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16 倉敷市庁舎
一階の市民ホールは、正に市民に開かれた空間。大理石でできたモザイクタイルの床は倉敷の幸を表現されている(図17)。
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17 市民ホール
街角の喫茶「かど」で食事。日替り定食に天ぷらが付いてくるのは嬉しい(図18)。さらには、チクワとシソがワンオブジェクト化されていて可愛らしい。「十人のうち七人も八人も賛成するようなら、もうやらない方がいい」大原孫三郎の言葉はありがたし。
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18 日替わり定食
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3Dデジタルシティ・倉敷 by UC-win/Road
「倉敷」の3Dデジタルシティ・モデリングにチャレンジ
今回は、岡山県倉敷市にある重要伝統的建造物群保存地区に指定された倉敷美観地区を作成しました。大原美術館やアイビースクエアといった文化施設、白壁の蔵屋敷が作り出す情緒豊かな町並み、倉敷川沿いの柳並木の風景などをご覧いただけるように再現しています。景観表示の切り替えにより、紅葉の季節に変更することもできます。アイビースクエアでは、環境設定を変更することで雨の夜に変わり、濡れた地面に周囲の景色が反射している表現を行っています。また、スクリプトを実行することで倉敷川の川舟流しを体験することができます。
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VR-Cloud®で体験!特設ページ にて、3Dデジタルシティの操作・閲覧が可能です。
(Up&Coming '20 秋の号掲載)