丹後あおまつ号
大阪から列車で丹後へ向かう。山を越えるたびに天気は変わり、柏原を過ぎて黒井城のあたりでは虹に出会えた。丁度、カーブしながら移動する車窓からは、最初は虹の左側が、次第に、虹の右側が見えてきた。
福知山で京都丹後鉄道(丹鉄)に乗り換える。あおまつ号が待っていた。インダストリアルデザイナー・水戸岡鋭治氏のデザイン。車内カウンターでは、ドリンクと共に焼鯵やケーキが販売されていた(図1)。丹鉄コーヒーを注文して一番前の席へ。レストラン列車・くろまつ号が向かいに入線してきた。見知らぬ乗客から「この電車は指定席ですか?」と尋ねられる。鉄ちゃんと間違われたのか。
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1 旅の友 |
2 元伊勢神社の解説 |
列車はカタンコトンと進んでいく。なのに、大江山口内宮駅の手前、白い鳥居が見えるあたりで突然ストップして、優しい声の車掌さんが、元伊勢神社の解説をはじめた(図2)。列車が線路上で止まり、地域資源を解説してもらえること自体が新鮮だ。都心の環状線だったら大渋滞だろうけど、体験してみたくもある。
元伊勢内宮 皇大神社は、「お伊勢参り」で有名な三重県の伊勢神宮より54年も前にまつられたといわれるため「元伊勢神社」と呼ばれる。正面に見えるピラミッド型の日室ケ嶽は聖地とされる。
天橋立
天橋立は、古くから日本を代表する景勝地であり、松島、宮島と並ぶ、日本三景のひとつである(図3)。宮津湾と阿蘇海を切り取るように形成された、全長3.6km、幅20~170mの砂州で、白い砂浜と青い松原が美しい。天橋立の写真を見ると、誰もが一目で天橋立とわかる珍しい風景。小倉百人一首、雪舟「天橋立図」など、古来より和歌や絵画で表現されてきた。庭園造景のモチーフとしても参照されてきた。
天橋立はなぜできたのか。「丹後風土記」によると、イザナギノミコトが天界と下界を結ぶために梯子を作って立てておいたが、イザナギが寝ている間に海上に倒れ、そのまま一本の細長い陸地になったそうである。他には、丹後半島から宮津湾に流れ出す河川から流出した砂礫(砂や小石のこと)が海流によって宮津方面(北から南)に流され、一方で、野田川から流れだす阿蘇海の海流とのぶつかり合いにより、ほぼ真っすぐに砂礫が堆積したともいわれる。
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3 天橋立(飛龍観) |
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4 天平観 |
天橋立の楽しみ方は色々とある。高いところから眺める方法。飛龍観、昇龍観は、天橋立を南から北から縦方向に眺めた姿。一字観、雪舟観は東から西から横方向に眺めたもの。丹後国分寺跡からの眺めは天平観と呼ばれ、阿蘇海と横一文字の天橋立を台地に吹き込む心地よい風と共に一望できる(図4)。
股のぞきをすれば、天橋立は龍となり、空を舞う。遊覧船から眺めていれば、カモメやトンビが大量にやってきてアングルの中に入ってくれる。撮影料は、カッパえびせん(図5)。
天橋立の見え方の違いは、なんと、今年1月に実施された大学入学共通テストにも出題された。さらに、共通テストの1週間前にNHK「ブラタモリ」で天橋立が紹介され、ネットは大騒ぎであった。
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5 かっぱえびせんキャッチできるか!? |
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6 宮津湾と阿蘇海が同時に見える |
天橋立を歩いて渡ろう。幅が細くなっている真ん中あたりでは、宮津湾と阿蘇海の両側の汀が視界に飛び込んでくるので、砂州の中にいることを直接感じさせてくれる(図6)。
天橋立の風景といえば松林であるが、維持管理は欠かせない。近年は松枯れ被害や、台風で倒されたり(図7)、松はやせ地を好むのに土壌は肥沃化していることなど、環境の変化に対応しなければならないそうである。船越の松は、杖が必要なようだが是非頑張って欲しい(図8)!
路線バス
天橋立を渡り切り、天橋立ケーブル下から、路線バスに乗る。観光地ムードはすぐに消えて、のんびりとした風景が広がる。右に宮津湾と栗田半島、左に丹後半島の山なみ。栗田半島がどんどん小さくなっていき、バスは日本海に出た。ここで、虹をまた見た。診療所など生活の拠点を巡りながら、伊根についた。
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7 双龍の松
(2004年10月の台風23号で倒壊) |
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8 船越の松 |
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驚いたのは、バスの運賃である。30分以上、16kmほど乗車して、なんと200円。地方交通は、利用者減少モードで、値段を上げざるを得ず、値段を上げると利用者がさらに減るという悪循環が起こりがちと聞く。丹後の場合、以前は距離制運賃としていたが、近年、生活の足としての在り方が議論され、交通社会実験を経て、上限200円としたそうである。
伊根
伊根には何度か来たことがあるが、これまでは自家用車で来て、観光船に乗って、海から眺めることが主であった。今回は路線バスで来たので、観光案内所から耳鼻地区と呼ばれる、集落の端まで歩いてみた。
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9 伊根の舟屋 |
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集落は、伊根湾に面して、1階が船のガレージで海の上に建っているような家屋「舟屋」が230軒ほど建ち並ぶ(図9)。舟屋は妻入りであり、海からは緩勾配の三角屋根がリズミカルに並ぶ。舟屋は道に沿ってびっしりと建っており、海を見通せない場合が多いが、近年は観光用に見学できるものもある(図10)。道を挟んで陸側には、平入りとなる母屋が舟屋と一対で建てられている。伊根湾の干満の差は小さく、年間50㎝ほどなのだそうだ。
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10 舟屋内部 |
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このような独特の景観とそこに息づく人々の暮らしは、国の「重要伝統的建造物群保存地区」、日本遺産「300年を紡ぐ絹が織り成す丹後ちりめん回廊」に選定され、「日本で最も美しい村」連合にも加盟している。
ビビビッ
まちを歩いていると、過去の記憶と突然つながって、ビビビッと呼び起こされることはないだろうか。ビビビッときても、冷静に考えなおしてみれば大したことではなかったり、人に言葉で伝えようとしても中々わかってもらえなかったりするのだが(記憶を共有していないのだから当然かもしれない)、あの感触は心地よい。これは既視感(デジャヴュ)と呼ぶのだろうか。
今回は耳鼻地区を歩いている時、ビビビッときた。オーバーレイされた先は、ドイツ・ゴスラーのまち並み。ゴスラーは、15世紀から19世紀にかけて建てられた半木造家屋からなる集落である。建造物は、屋根と壁にスレートが使われておりモノトーンの渋い堅牢な表情、そして、木骨組建築(ハーフティンバー)といわれる、柱、梁、筋交いなどの軸組を外観に現れている。
帰宅してから10年ほど前に撮った写真を探してみる。ビビビッときた瞬間だから、写真に残してあった。それは、緩やかにカーブした細い通りがキュッと曲がる先に見えた、大きな平屋の木造づくりの風景であった(図11)。両者は9,000kmも離れていた。
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11 伊根とゴスラー |
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3Dデジタルシティ・丹後 by UC-win/Road
「丹後」の3Dデジタルシティ・モデリングにチャレンジ |
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今回は、京都府北部に位置する、丹後半島の天橋立を中心に作成しました。宮津湾にある『天橋立』は、日本三景とされている特別名勝のひとつです。全長約3.6kmの砂嘴(さし)でできた珍しい地形です。「天橋立ビューランド」の展望台からの眺めは、「飛龍観」と呼ばれていて、股のぞきをすることで、天と地が逆さになり、龍が天へ舞い上がる様に見えます。スクリプトを実行することで、この「飛龍観」の眺めを体験することができます。船が通るたびに90度旋回する「廻旋橋」の表現や、雪舟が天橋立図で描いた丹後国分寺五重塔を、現代に再現しました。 |
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スクリプト機能で、「飛龍観」を体験 |
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交通スナップショットで船の通行を表現 |
丹後国分寺五重塔を現代に再現 |
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CGレンダリングサービス |
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「UC-win/Road CGサービス」では、UC-win/Roadデータを3D-CGモデルに変換して作成した高精細なCG画像ファイルを提供します。今回の3Dデジタルシティのレンダリングでは「Shade3D」を使用しました。「天橋立まち灯り」のライトアップを再現し、水面の動きや反射する光、また船上のライティングの表現など、高品質な画像を生成しています。
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