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「水道施設耐震工法指針・解説 2022年版」
改訂の傾向・ポイントについて

水道施設耐震工法指針・解説 2022年版

今年の6月、公益社団法人 日本水道協会より「水道施設耐震工法指針・解説2022年版(以下、本指針)が発刊されました。本指針は、1997年版、2009年版につづく改訂で、「Ⅰ本編」、「Ⅱ参考資料編」、「Ⅲ設計事例編」で構成されています。今回の改訂は以下のような趣旨、基本方針となっています。
・最新の知見・技術を取り込み、わかりやすく、使いやすい指針とする
・性能規定型設計化の徹底
・危機耐性についての記述の追加
・設計事例集等の充実
ここでは、本指針改訂の性能規定型設計と危機耐性について解説します。

性能規定型設計化の徹底

多種多様にわたる水道施設はその構造特性や地盤等の条件も様々ですが、それらの構造物がその用途・機能を果たすために要求される性能として、以下の4つが定義されています。
(1)使用性 (2)復旧性 (3)安全性 (4)危機耐性
また、水道施設の重要度は従来と同様、重要度の高い順にランクA1,A2,Bの3種類に分類され、考慮する設計地震動も従来同様、レベル1およびレベル2地震動となっています。
施設の重要度ごとに要求性能が規定され、その要求性能に対して設計地震動ごとに各構造物の限界状態が表1のように規定されています。

表1 宅地防災マニュアルの解説 第三次改訂版の主な改訂内容


また、各限界状態は構造物ごとに規定されており、例えば暗渠および共同溝の構造部材における限界状態とそれに対応した損傷状態や照査方法は表2のようになっています。
水管橋の耐震計算では、以前より道路橋示方書を参考としています。道路橋示方書では、平成29年の改訂において性能照査法として部分係数設計法が導入され、本指針でも性能規定型設計を反映した内容となったため、水管橋の構造物においても平成29年道路橋示方書に準じた部分係数設計法に変わりました。
設計事例集においても、水管橋の下部構造の計算例は平成29年道路橋示方書に準じた計算方法が示されています。

危機耐性についての記述の追加

2009年版の指針から本指針の間に日本では幾度かの大地震に見舞われました。中でも2011年の東日本大震災では未曽有の大災害を経験し、それを踏まえて、耐震設計で考慮される想定を超えた事象や不確実性への対応として危機耐性という新しい概念が導入されています。危機耐性では、施設の複数系列化やバックアップ管の設置等により施設全体で対応するような内容や、耐震性を考慮した管種選定、側方移動対策等の個々の施設・設備での対応が示されました。危機耐性は、その被災シナリオに対して水道施設への影響が小さくなるように、水道事業体等が対策可能な範囲で行うこととされています。

最後に

今回の改訂では、設計事例も充実した内容となっており、水道管等の耐震計算においては、従来の速度応答スペクトルを用いた地盤ひずみの計算だけではなく、一次元地盤応答解析を用いた地盤ひずみの算定例も記載されています。UC-1シリーズには、水工の「配水池の耐震設計計算」や「水道管の計算」等の水道施設耐震工法指針に準拠した製品がラインナップされており、弊社では、水道施設の設計業務に携わる技術者により一層ご活用いただけるよう、製品の機能強化、改善等を行って参ります。また、水管橋における下部構造の設計においては、平成29年道路橋示方書に準拠した橋梁下部工の「橋脚の設計・3D配筋(部分係数法・H29道示対応)」や「橋台の設計・3D配筋(部分係数法・H29道示対応)」等をご活用いただけます。



(Up&Coming '22 秋の号掲載)

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