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異方性材料の値設定

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時折、「3次元のソリッドモデルで、X方向には剛性を考慮し、Y方向には剛性を考慮しない物性を与えたいが、どのようにしたらよいでしょうか」というような、1方向だけ剛性を小さくしたいという問い合わせが寄せられます。

今回は、このような材料を設定する上での注意点について紹介いたします。

3次元直交異方性材料

すべての方向が同じ特性の材料(いいかえれば方向によらず特性が同じ材料)を等方性材料といいます。これに対して、方向によってその特性が異なる材料を異方性材料といいます。

従いまして、問い合わせの回答としては異方性材料を使用します、ということになります。

異方性材料の定義は[条件]-[材料]-[異方性]で行います。3次元異方性材料の場合、入力方法から「3次元異方性入力」を選択します。


図1 3次元異方性材料入力画面

ここで注意が必要なのは、異方性材料の場合、いい加減な材料定数を与えることはできない、ということです。物理的にあり得る材料定数を入力する必要があります。

LISAユーザガイドのソリッド要素の”直交異方性材料”の項に以下の歪-応力関係式を示しています。


EX,EY,EZ:ヤング率
νXY,νYZ,νZX:ポアソン比
GXY,GYZ,GZX:剪断弾性係数
式1:3次元異方性材料 歪-応力関係式

応力-歪の関係を表す構成則を一般にDマトリックスと呼びます。これは式1の逆マトリックスになっていて、具体的には次のようになります。


式2:3次元異方性材料 Dマトリックス (Eij=Eji)

前述しました物理的にあり得る材料定数とは、この逆マトリックスが存在し、かつこのDマトリックスの対角項E11、E22、E33が正値となる必要があります。


式3:Dマトリックスの必要条件

この条件を満たす値を設定するようにしてください。例えば、ある異方性材料でX方向の剛性を小さくするため、



と設定した場合、LISAの解析は実行されますが(E11、E22、E33は全て正)、EXXをもう一桁小さくした場合、



「異方性材料データが不適当です」とエラーになります(E11、E22が負になります)。

実験値などで求められている材料定数を使用する場合はこのようなケースには当たらないと思いますが、人為的に極小の値を設定したいということで、E=0としてしまうと、明らかに式1から分母に0を指定することになるのでNGとなります。

また、0でなくても式3の条件を満たさなければなりません。これを逸脱することは通常の材料力学の理論ではありえないことを示すことになります。


(Up&Coming '23 春の号掲載)

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