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 サポートトピックス・CAD/UC-1シリーズ

柔構造樋門の設計・3D配筋のなぜ?解決フォーラム

柔支持と剛支持の違い

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「柔構造樋門の設計・3D配筋」では、柔構造樋門(柔支持基礎)に加え、剛支持樋門(剛支持基礎)の設計に対応しています。「柔構造樋門設計の手引き」(以下「手引き」)では、これらの形式は設計思想が根本的に異なることから、混用や中間的な採用は避けなければならないとされています。

今回は、お問い合わせを多くいただいている基礎形式の選定方法、および設計方法の相違点について解説します。

樋門の基礎形式

樋門の構造形式は、表1の通り柔構造樋門と剛支持樋門の二つに区別されます。基礎形式は柔構造樋門では柔支持基礎、剛支持樋門では剛支持基礎を採用します。


表1 樋門の構造形式とその特徴

一般に、基礎形式は柔支持基礎とすることが望ましいとされています。これは、樋門が堤防盛土による地盤の沈下などの地盤変位の影響を避けられないことによるものです。樋門函体が地盤の沈下に追随しない剛支持基礎では、図1のような函体周辺の空洞化や堤防のクラック発生などを招き、堤防機能を損なってしまう可能性があります。このため、樋門の構造形式としては、地盤あるいは基礎の沈下・変位に追随し、周辺堤防に悪影響を与えることが少ない柔構造樋門(柔支持基礎)とすることが原則とされています。


図1 剛支持樋門の問題点

基礎形式の選定方法

「手引き」では、残留沈下量が5cm程度より大きければ柔支持基礎、5cm程度以内であれば直接基礎(剛支持基礎)を選定しています。ただし、この残留沈下量の値は目安とされており、明確には規定していません。
また、国土技術研究センターが公開する「柔構造樋門設計の手引き FAQ」の「I共通編:第2章 設計一般|樋門の構造形式と基礎形式に関する質問」では、残留沈下量が5cm程度以内でも、以下のような場合は柔支持として検討することを促しています。

  • ・その沈下分布形状等の特性によって樋門本体に与える影響が大きいと判断される場合
  • ・地盤の残留沈下量の推定精度によっては、実際に生じる地盤の沈下量が5cmを超える可能性が大きい場合(想定される沈下量の範囲において本体の安全性を照査する)
これらの条件を考慮して、状況に応じた適切な基礎形式を選択することが必要となります

設計モデルの相違点

表2は、柔支持と剛支持の設計モデルの相違点をまとめたものです。

表2 設計モデル相違点

柔支持と剛支持の大きな違いは、堤防盛土による荷重のモデル化にあります。
剛支持の設計モデルは、図2の通り函体上面の堤防盛土による荷重を鉛直土圧としてモデル化します。常時は土重を載荷しますが、地震時は鉛直土圧係数を考慮した地震時鉛直土圧を載荷します。

図2 剛支持モデル(弾性床上の梁)

一方、柔支持の設計モデルでは、図3の通り、堤防盛土による地盤変位を地盤変位等価荷重(沈下・側方)としてモデル化します。

地盤変位等価荷重は、沈下量・側方変位量に地盤反力係数を乗じて算出します。常時、地震時に応じた地盤反力係数を使用しますので、常時と地震時で荷重値は異なります。


図3 柔支持モデル(地盤変位の影響を考慮した弾性床上の梁)

(Up&Coming '24 秋の号掲載)

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