「業務の中で学ぶことは多いのですが、その時にどれだけ広い『引き出し』を作ることが出来るかと(いうことを意識しながら)幅広く情報の収集に努めています」
関連法案の施行により2019年4月から動き始めた「働き方改革」。最初に大手の建設コンサルタントや橋梁メーカーなど元請け会社などでそれへの対応が求められ、次第にその裾野は拡大。中小企業への要求もシビアになってくるとともに、その影響が下請け業界内で様々な変化をもたらしている、と有限会社シンユーテクノの三井真代表取締役社長は述べます。
「(長時間労働の是正ということで言うと)今までは、私たちの業界は青天井で、(必要とあれば)残業や徹夜でこなすことも普通だったのですけれど、それがなくなりました」。また、元請け各社で対応できないような業務がそこから中小の下請け業者のところへ下りてくる構図のため、計画段階からの準備や検討に関わる作業が年々増大するなど業務内容も変化。加えて、下請け業務を支える技術者らは確実に高年齢化していく一方で、大手の元請け各社では新入社員が次々と入ってきて、いつしか自身らが彼らの先生役をも務めるような繋がりを醸成。そのような中で、日ごろ積極的に収集・蓄積してきた情報の「引き出し」から状況に最適なものを提供できるよう努力している、といいます。
|
|
|
有限会社シンユーテクノ
代表取締役社長 三井 真 氏 |
|
執行役員 設計第1グループ
中島 智 氏 |
創業40年、「次に繋がる仕事」を追求
有限会社シンユーテクノの起源となる、「設計室 信裕(しんゆう)」(名古屋市北区)が現・三井信之代表取締役会長により設立されたのは、1980年。その翌年に「有限会社設計室 信裕」として法人登記され、以来今年で40周年を迎えています。その間、1995年に現在の社名に改称。また、着実な業容拡大などに合わせてオフィスの移転を重ね、2020年から現オフィス(同市東区)を拠点としています。
同会長が橋梁メーカーの出身ということもあり、同社は創業時から鋼上部工と下部工のトータル的な設計の下請け業務を展開。現在は鋼道路橋をメインとする上部工、RCおよび鋼製の下部工を主な対象とし、新設橋梁や耐震補強、補修・補強の設計、橋梁点検といった業務を大手建設コンサルタントや橋梁メーカーから受託しています。
「お客さんの満足のためにも、自分たちのためにも、次に繋がる仕事をしたい」(三井 真社長)とのポリシーを標榜。そこには、その都度、顧客と緊密に連携するとともに、絶えず「これで良いのか」と自問自答しながら課題に対応してきた結果、元請け企業との長年に及ぶ信頼関係を形成してきた、という自負があります。
現在、同社には12名の社員が在籍。「男性6:女性4」と、建設業界としては異例に女性のウェートが高いのに加え、働き方改革にも率先して取り組んできています。
業務実績は、8割以上を占める中部地方をはじめ、後述する「協同組合 土木設計センター」のサポート体制を通じ、国内全域をカバー。また、顧客の業種は8割超を建設コンサルタント、2割近くを橋梁メーカーが占めます。
三井社長が入社したのは、1992年。それまで株式会社横河技術情報(YTI)で9年間、各種鋼橋の設計業務などに従事。移籍後は同社で鋼上部工の設計を担い、2011年に社長就任後は会社経営と兼務しつつ上部工の設計スタッフをリードしています。
「今年度は新設橋梁の設計が比較的多かったのですが、近年は橋梁の補修・補強や点検業務が増え、現場に出向くことが多くなっています」
1990年から下部工や土工関連の各種当社ソフトを導入
シンユーテクノで下部工の設計を主導するのが、執行役員設計第1グループの中島智氏です。1986年(「設計室 信裕」時代)に3人目の技術者として入社。当時は限られたメンバーということもあり、各自が鋼橋の上部工から下部工まで様々な設計業務を担当。当初は専ら手描きで図面作成をしていました。実は、当時も開発されたばかりの初期の他社製設計プログラムが配備されていたものの、設計作業に時間を要する上、出力がスムーズでないなど使い勝手が悪く、自身はほとんど利用していなかったといいます。
1990年、同社は初めて、当時フォーラムエイトが扱っていた「Mighty Bridge」(開発:八重洲工業)を導入。それによる利用メリットが実感されたのを受け、まだ大手の元請け企業にすらそれほど普及していなかった時代にもかかわらず、UC-1シリーズの下部工や土工に関係する各種ソフトウェアも一括して採用。同社が手描きからコンピュータ利用へと大きく舵を切る契機となりました。
その際、中島氏と三井会長(当時は社長)が下部工の、他の2名が上部工の、それぞれ専門に設計を担当するチーム体制がスタート。以来、段階的に人員拡充が進む中、実質的に中島氏がフォーラムエイトの各種ソフトウェアを中心となって使用する形となっています。
「細かな要望事項はありますが、ここまで使っているので、最高のプログラムと言えると思います」。中島氏はそのような評価の一端として、自身らがそれぞれのソフトウェアを使っている過程で不明な点や気になる点に直面するたび、頻繁に問い合わせてきたと述懐。それに対し、期待以上に細やかな回答を早々に得られ、救われてきたと振り返ります。
また、3D積層プレート・ケーブルの動的非線形解析「Engineer's Studio®」は、先代の「UC-win/FRAME(3D)」をリリース間もない2000年頃に導入して以来、継続して採用。下部工の補修・補強設計を中心に現在も多用されています。
これについて三井社長は、動的解析ソフトに大きく依存する現状に言及。大きな地震が起きる毎にルールが変わるのに対し、ソフト側がその都度迅速に対応していることの意義を説きます。
|