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ユーザー紹介/第133回
有限会社 シンユーテクノ
有限会社 シンユーテクノ
URL http://www.sinyu-tec.co.jp/
所在地 名古屋市東区
事業内容 :
鋼橋を中心とする上部工、各種下部工、
補強および補修・補強の設計、橋梁点検

業界に先駆け鋼橋設計のコンピュータ化導入、その普及にも尽力
橋梁の上部工・下部工の設計、FEM解析など多数の当社ソフトを早くから利用


「業務の中で学ぶことは多いのですが、その時にどれだけ広い『引き出し』を作ることが出来るかと(いうことを意識しながら)幅広く情報の収集に努めています」

関連法案の施行により2019年4月から動き始めた「働き方改革」。最初に大手の建設コンサルタントや橋梁メーカーなど元請け会社などでそれへの対応が求められ、次第にその裾野は拡大。中小企業への要求もシビアになってくるとともに、その影響が下請け業界内で様々な変化をもたらしている、と有限会社シンユーテクノの三井真代表取締役社長は述べます。

「(長時間労働の是正ということで言うと)今までは、私たちの業界は青天井で、(必要とあれば)残業や徹夜でこなすことも普通だったのですけれど、それがなくなりました」。また、元請け各社で対応できないような業務がそこから中小の下請け業者のところへ下りてくる構図のため、計画段階からの準備や検討に関わる作業が年々増大するなど業務内容も変化。加えて、下請け業務を支える技術者らは確実に高年齢化していく一方で、大手の元請け各社では新入社員が次々と入ってきて、いつしか自身らが彼らの先生役をも務めるような繋がりを醸成。そのような中で、日ごろ積極的に収集・蓄積してきた情報の「引き出し」から状況に最適なものを提供できるよう努力している、といいます。

有限会社シンユーテクノ
代表取締役社長 三井 真 氏
執行役員 設計第1グループ
中島 智 氏



 創業40年、「次に繋がる仕事」を追求

有限会社シンユーテクノの起源となる、「設計室 信裕(しんゆう)」(名古屋市北区)が現・三井信之代表取締役会長により設立されたのは、1980年。その翌年に「有限会社設計室 信裕」として法人登記され、以来今年で40周年を迎えています。その間、1995年に現在の社名に改称。また、着実な業容拡大などに合わせてオフィスの移転を重ね、2020年から現オフィス(同市東区)を拠点としています。

同会長が橋梁メーカーの出身ということもあり、同社は創業時から鋼上部工と下部工のトータル的な設計の下請け業務を展開。現在は鋼道路橋をメインとする上部工、RCおよび鋼製の下部工を主な対象とし、新設橋梁や耐震補強、補修・補強の設計、橋梁点検といった業務を大手建設コンサルタントや橋梁メーカーから受託しています。

「お客さんの満足のためにも、自分たちのためにも、次に繋がる仕事をしたい」(三井 真社長)とのポリシーを標榜。そこには、その都度、顧客と緊密に連携するとともに、絶えず「これで良いのか」と自問自答しながら課題に対応してきた結果、元請け企業との長年に及ぶ信頼関係を形成してきた、という自負があります。

現在、同社には12名の社員が在籍。「男性6:女性4」と、建設業界としては異例に女性のウェートが高いのに加え、働き方改革にも率先して取り組んできています。

業務実績は、8割以上を占める中部地方をはじめ、後述する「協同組合 土木設計センター」のサポート体制を通じ、国内全域をカバー。また、顧客の業種は8割超を建設コンサルタント、2割近くを橋梁メーカーが占めます。

三井社長が入社したのは、1992年。それまで株式会社横河技術情報(YTI)で9年間、各種鋼橋の設計業務などに従事。移籍後は同社で鋼上部工の設計を担い、2011年に社長就任後は会社経営と兼務しつつ上部工の設計スタッフをリードしています。

「今年度は新設橋梁の設計が比較的多かったのですが、近年は橋梁の補修・補強や点検業務が増え、現場に出向くことが多くなっています」



 1990年から下部工や土工関連の各種当社ソフトを導入

シンユーテクノで下部工の設計を主導するのが、執行役員設計第1グループの中島智氏です。1986年(「設計室 信裕」時代)に3人目の技術者として入社。当時は限られたメンバーということもあり、各自が鋼橋の上部工から下部工まで様々な設計業務を担当。当初は専ら手描きで図面作成をしていました。実は、当時も開発されたばかりの初期の他社製設計プログラムが配備されていたものの、設計作業に時間を要する上、出力がスムーズでないなど使い勝手が悪く、自身はほとんど利用していなかったといいます。

1990年、同社は初めて、当時フォーラムエイトが扱っていた「Mighty Bridge」(開発:八重洲工業)を導入。それによる利用メリットが実感されたのを受け、まだ大手の元請け企業にすらそれほど普及していなかった時代にもかかわらず、UC-1シリーズの下部工や土工に関係する各種ソフトウェアも一括して採用。同社が手描きからコンピュータ利用へと大きく舵を切る契機となりました。

その際、中島氏と三井会長(当時は社長)が下部工の、他の2名が上部工の、それぞれ専門に設計を担当するチーム体制がスタート。以来、段階的に人員拡充が進む中、実質的に中島氏がフォーラムエイトの各種ソフトウェアを中心となって使用する形となっています。

「細かな要望事項はありますが、ここまで使っているので、最高のプログラムと言えると思います」。中島氏はそのような評価の一端として、自身らがそれぞれのソフトウェアを使っている過程で不明な点や気になる点に直面するたび、頻繁に問い合わせてきたと述懐。それに対し、期待以上に細やかな回答を早々に得られ、救われてきたと振り返ります。

また、3D積層プレート・ケーブルの動的非線形解析「Engineer's Studio®」は、先代の「UC-win/FRAME(3D)」をリリース間もない2000年頃に導入して以来、継続して採用。下部工の補修・補強設計を中心に現在も多用されています。

これについて三井社長は、動的解析ソフトに大きく依存する現状に言及。大きな地震が起きる毎にルールが変わるのに対し、ソフト側がその都度迅速に対応していることの意義を説きます。


 土木設計センターを通じたパートナーとの連携も重視

CADをはじめ鋼橋の設計に関わる、当社製のみならず多様なソフトウェアを、元請け・下請けを含め業界内でも先取的に活用してきたシンユーテクノ。まだ利用数が少なかった時代に、同社は「YTI・CADセンター」、フォーラムエイトなど複数のソフトウェア会社がパッケージソフトウェアの普及を目指して活動した「シビルフォーラム会」などの場を通じて情報収集を行い、早くからIT活用にも積極的に取り組んでいました。

そこでは、ソフトウェア会社同士の競合というよりも、むしろ互いに協力し合うことによる、全体としてのソフトウェア利用底上げへの貢献が図られ、また、下請けとして設計業務を行う様々な事業者のユーザーが重要な役割を果たしていました。これはシンユーテクノとフォーラムエイトとの関わりの発端ともなり、その後、FORUM8設立周年記念イベントやSPU(スーパープレミアムユーザ)などにも毎回参加いただいています。

三井信之会長が一時、会長も務めたこのYTI・CADセンターの活動に区切りが付いたのを受け、同センターの一部関係者が2004年、新たに「協同組合 土木設計センター」(大阪市北区)を結成。同社もその主要メンバーの一つとして参加しています。

土木設計センターは、建設コンサルタントの協力会社として長年設計実務に携わってきた知見とネットワークを活かし、インフラ整備を通じた社会貢献をその目的に位置づけます。同組合では、大型プロジェクトに対する共同受注、設備の共同利用、共同による技術開発や教育を活動の柱として設定。それぞれ異なる得意分野を有する11社が現在名を連ねており、各社を結んだ業務エリアは国内全域に及びます。



 3Dへのアプローチ、設計者への思い

「もう3Dの世界になっていくのだな、それに新たにチャレンジしていかなければいけないな、という思いはあります。ただ、鋼橋の分野ではなかなか難しいところもあります」

鋼橋、特に上部工の設計では、2次元に展開できて当たり前で、構造をより簡略に設計することが求められる、と三井社長は位置づけ。そこで3D活用が求められるとすれば配筋の干渉チェックが想定されるものの、まだ具体化への道筋は描かれていないのが実情。とは言え、RC構造物を多く扱う下部工では、今後の3D図面作成への対応について顧客側からの問い合わせも散見されます。そのため当面は、3D技術の道具としての活用可能性について勉強を重ね、最新動向に追随しつつ、自社としての取り組みをどうするか模索していく考えといいます。

また長年にわたり、鋼橋の設計に携わってきた経験を踏まえ、三井社長は「道具はどんどん進化していきます」とした上で、ソフトウェア利用に際しての留意点にも言及します。例えば、設計ソフトでボタン操作していくと、何らかの答えは得られます。それは正解かも知れないし、設計者は自ら望む方向に導くことが可能なこともあり、そもそも正解がないのかも知れない。そのような観点に立てば、絶えず「本当にこれで良いのか」と自問自答しながら進めていくことが重要になる、と説きます。

「(その意味で、設計者には)一人で作業を進めて欲しくないのです。いろいろな人の『引き出し』から、いろいろな情報を得て設計に挑んでいただきたいと思います」


FORUM8設立16周年記念イベント(2003年)での現・三井信之会長(写真右)。この他の周年記念イベントやSPUにも毎回参加されている
執筆:池野隆
(Up&Coming '21 春の号掲載)



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