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揚水式水力発電所は、中核となる発電施設を地下式とすることが多い。今回は、平成期のビッグプロジェクト、東京電力神流川(かんながわ)発電所の事例を紹介したい。群馬県と長野県に跨る純揚水式神流川発電所の主要施設(2県2水系)は、最も高地に位置する南相木ダム(上部調整池 ロックフィルダム)[Photo1]、中間地点の地下発電所[Photo2, Photo3]、そして最下部の上野ダム(下部調整池 重力式ダム)[Photo4]にて構成される。
このうち、深度500mに構築された地下発電所は、発電/変電施設を収めるため、高さ52m×幅33m×長さ216mの大規模空洞となっている。建設に先立ち、最先端の岩盤力学(rock mechanics)が応用され、それまでの経験値とも併せ、具体的な計画/設計がなされた。特に、非常に高い地圧下において力学的な安定を図るためには空洞の断面形状が重要であるが、従来の“きのこ形”に代わり、“卵形”が採用された([Photo2]を再度見て貰いたい)。 加えて、その施工に際しては、多くの先端技術が育まれたことを強調したい。大断面NATM工法、PCアンカー、ロックボルト、3次元有限要素解析などが長足の進歩を遂げ、情報化施工の先駆けとなったと言われている。 さて話しは変わるが、昭和世代には懐かしいSF人形劇サンダーバード(制作:イギリス)を覚えているだろうか。地下秘密基地から発進する国際救助隊サンダーバートに心踊ったが、この地下基地が群馬県に実現していたのだ。再生エネルギーの利用に寄与するため、電力平準化を遂行するため、与えられたミッションを粛々と遂行している。 【資料・画像出典:東京電力】 |
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先ずは、清州橋と東京スカイツリーを収めた[Photo1]を見て頂きたい。さながら隅田川に鎮座する新旧巨大インフラの競演であり、年の差84歳の豪快なツーショットでもある。先輩格は関東大震災復興事業で建設された自碇式吊橋(昭和3年完成)、かたや新参者は高さ世界一の自立式電波塔(平成24年完成)。
これは、“お江戸日本橋舟めぐり”(国土文化研究所)の体験乗船の折り、船長さんの計らいで絶好のカメラスポットに停船して貰った時のこと。私たち乗船客はこの時とばかりにシャッターを切ったのだ。このほかにも、各種舟運コース沿川には多種多様の見所スポット/インスタ映えスポットがあり、例えば、水位差のある河川網を連結する扇橋閘門[Photo2]、倉庫をリノベーションしたレストラン T.Y.HARBOR[Photo3]など、“川目線”から周辺施設を探訪する舟運の醍醐味は尽きない。
さて、平成20年頃だろうか、水上観光や水上交通手段の促進と定着化を図るため、いわゆる舟運事業について多くの試みがなされた。水辺空間活用(東京都都市整備局)、舟運社会実験(国土交通省)、お江戸日本橋舟めぐり(江戸東京再発見コンソーシアム)など、魅力的なチャレンジが始まったことは記憶に新しい。これはまた、桟橋/船着き場/小型船ターミナルを生かした航路船の利活用(水上バス、シーバス、水上タクシー、歴史クルージングetc.)などに繋がり、臨海部の新たな魅力を引出すことが期待できる。そもそも、江戸時代に栄えた屋形船が舟運事業の先駆けであり大先輩では。
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1950~60年代に欧米で出現したコンピューター解析技術 有限要素法は、今世紀に入り、長足の進歩(高度化/高速化)を遂げ、縦横無尽にその威力を発揮している。いまや、有限要素解析は構造エンジニアにとってなくてはならない相棒。その出力は、時にえも言われぬ荘厳なアートを写し出す。Episode19では、美学(structural aesthetics)の観点から、4つの事例を解説・紹介したい。 [Photo1] 上下2層構造の地下鉄駅(鉄筋コンクリート製ボックスカルバート)およびその周辺地盤をモデル化したもの。上図が通常の状態(自重や土圧が作用)で、下図が地震荷重により、激しく横揺れしている状態。いわゆるラーメン構造(梁柱が剛結構造)の水平抵抗機構を直視することができる。
[Photo2] 鋼鈑桁+鋼製トラスで構成される道路橋。上図はバーチャルリアリティーを併用して谷あいに架橋された様子を再現している。下図は3次元構造図で、種々の過酷な荷重(活荷重、死荷重、地震荷重、風荷重 etc.)を課し、強度/変形等をチェックする。また、景観アセスメントにも利活用され、ICT技術の先兵でもある。
[Photo3] 供用中の道路橋橋脚(高さ12m)の近隣での掘削工事(幅10m 深さ10m)が予定され、その影響を事前解析している。上図は掘削前の状態で、下図は掘削工事後の地盤の応力状態を示している。地盤を除去しただけでも、近隣周辺に悪影響を与えることがある。
[Photo4] 長大鉄筋コンクリートアーチ橋(橋長118m)の解析要素図。種々の設計荷重に対して、設計基準に合致するかどうか、計算機上にて検証される。本例は、102,718個に及ぶ立体6面体要素にてモデル化された壮大かつ精緻な構造設計でもある。
さて、有限要素法(FEM: finite element method)とは、対象構造物を要素分割(離散化)し、荷重・変位・振動・衝撃・温度など外的な作用(action)を与えたときの数値近似解を求める計算手法。現在では多種多様の商用ソフトが開発/販売され、土木/建築/機械/原子力/自動車などの工学分野必須の解析ツールや設計ツール(ソフト技術)となっている。 過酷な荷重に対して、軽微な損傷から崩壊などリアルな非線形解析を何回も試算/設計することができる。加えて、最先端の可視化手法(画像化)により、‘その耐え忍ぶ様子’を観察することができることも大きな魅力。 Episode19では、解析手法や解析結果を吟味/議論するのではなく、出力された荘厳美麗な画像をただただ堪能されたい。次世代を担う若者にお裾分けしたい、次世代に伝えたい土木の美学(art and aesthetics of FEM)である。 |
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明治期に開花した鉄道インフラはやがて全国に及び、現在、鉄道駅舎は9000を超えると言われている。これらの多くは地域の発展とともに歴史を重ね、そのクロニクル(年代譜)を令和の現代に伝えている。Episode20では、伝統と格式を誇る5つの駅舎を、その画像とともに紹介したい。『なぜ、*****駅がないんだ!』のお叱りは収めて頂き、先ずは駅舎のファサードとも言うべき表玄関をとくとご覧あれ。 [Photo1] JR四国琴平駅(香川県)
[Photo2] 旧国鉄大社駅(島根県)【著者撮影】
[Photo3] JR九州嘉例川駅(鹿児島県)【画像:鹿児島県観光連盟】
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フォーラムエイトはfacebook、Twitter、Instagram等の各種SNSで最新の情報をお届けしています。この度、吉川弘道氏執筆による『土木が好きになる27の物語』の連載がFacebookページでスタートいたしました。ここではfacobookで公開されたエピソードを順次ご紹介していきます。
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(Up&Coming '21 盛夏号掲載) |
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