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液化天然ガスLNGは、環境特性に優れたクリーンエネルギー。大気汚染の原因となるSOx(硫黄酸化物)が発生せず、NOx(窒素酸化物)やCO2(二酸化炭素)の排出量も少ない。その用途は、都市ガスまたは火力発電所の燃料として使われ、近年さらなる需要が見込まれるが、多くは海外からの輸入に頼らざるを得ない。今回のEpisode25では、大容量の液化天然ガスを貯槽するLNGタンクをテーマとして、その秘密を解き明かしたい。 LNG タンクは、液化基地でのLNG製造と船出しまでの間、および LNG 受入基地における荷揚げ/再ガス化/出荷までの貯蔵、の2地点にて必要となる。LNG輸入大国日本では、後者の受入基地が多数建設/稼働していて、世界最大の消費国である。極低温液体の貯蔵運搬には高度なテクノロジーと経験値を必要とし、加えて、耐震性や火災安全性が重視される。LNG貯蔵施設はいくつかの形式があるが、ここでは、地上式タンクと地下式タンクを紹介する。 地上式LNGタンク(Ground LNG Tank):大阪ガス泉北製造所第一工場に建設されたPCLNGタンク[Photo1]は、23万klの貯蔵容量を有し、地上式LNGタンクとしては世界最大規模(一般家庭の約33万戸分の年間使用量に相当する)。これは、外径約90m高さ約60mの円筒形構造(+ドーム式屋根)で、大阪城天守閣が土台の石垣ごと2つすっぽりと入るほどの大空間。このような地上式タンクの場合、液化ガスを貯槽する鋼製タンク(1次容器)、保冷材(断熱材)、および漏液防止のためのPC防液堤(2次容器)にて構成され、多数の基礎杭にて支持される[Photo2]。
地下式LNGタンク(LNG Underground Tank):東京ガスLNG袖ケ浦工場[Photo3]は、千葉県袖ケ浦市の臨海部に建設された世界最大級のLNG基地(東京電力との共同基地として、多数のタンクが計画的に配置されている)。1973年、国内初のLNG専用工場として稼働し、現在は、主としてブルネイ、オーストラリア、マレーシア、インドネシアより輸入され、都市ガスおよび発電用燃料ガスを製造・供給している。
地下式タンクの場合、周辺地盤の水圧と土圧を受ける鉄筋コンクリート製躯体を構築し、内面に断熱材と液密性を保持するステンレス製メンブレンを設置する[Photo4]。タンク底部と側部には、地盤凍結を制御するためヒーターが設置される。
■大阪ガス 公式サイト https://www.osakagas.co.jp/company/enterprise_future/article2/ |
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理系学生でも苦手な幾何学(Geometry)が、道路施設であるジャンクションJCTやインターチェンジICの道路線形の設計に役立っている。道路線形に用いられるクロソイド曲線(Clothoid Curve緩和曲線)をご存知だろうか。これは、快適かつ安全なハンドル操作のための道路線形として広く活用され、かつてドイツの高速道路Autobahnにて導入された言われている。直線⇒クロソイド曲線(緩和曲線)⇒単曲線を組合せた連続的な幾何学形状は、また優美なアートを醸し出す。 かつて華麗優美なジャンクションは近代都市の近未来図であったが、全国に高速道路網が行きわたった21世紀には日常の原風景ともなっている。[Photo1]~[Photo3]にて、国内でも良く知られている3つの道路施設を紹介したい。 [Photo1a], [Photo1b]東大阪ジャンクション(大阪府東大阪市):阪神高速13号東大阪線と近畿自動車道の交差分岐。都市型JCTの中では類例の少ない対称形をなす。近隣に恰好の撮影スポットがあり、土木ファン達がJCTのダイナミズムを写し出してくれる。
[Photo2a], [Photo2b]横浜青葉ジャンクション(横浜市青葉区):東西の大動脈東名高速に設置され、南北に1.5kmほど伸びる大規模なY型JCTを形成している。周辺の首都高横浜北西線、国道246号線、第3京浜への接続により、その利便性は格段に向上している。
[Photo3] 首都高速道路 箱崎ジャンクション(東京都中央区):首都高6号向島線と9号深川線の合流地点箱崎JCTは、仲間内ではよく知られた”ジャンクション萌え”スポット。下から見上げたその様は”ヤマタノオロチ”の異名をとる。夜の帳が降りる頃、辺りの喧騒は消え、首都高速道路の毛細血管が集約した構造美が際立つ。
これらの道路施設は、20世紀後半に竣工/供用されていることを付記したい。国土交通省、高速道路会社、道路公社 etc.の主導による道路技術の開花が、更なるモータリゼーション(これも古くなってしまったか)を加速している。地理的条件や用地取得の制約を受け、教科書通りの理想的な幾何形状を描けないことも日本特有の事情だ。(大仰な言い様ではあるが)天が与えし試練を先進の道路エンジニアリングが克服したとしか言い様がない。 【参照/出典サイト】 |
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最終回Episode27では、土木工学の老舗ともいうべき、水工学(Hydraulic Engineering)と河川構造物(River Structures)に焦点を当てた。 [Photo1]模式図による河川構造物の説明:最初に、河川工学に関する基本用語について復習しよう。本川、支川、派川、遊水地、調整池などが基本用語。右岸(下流に向かって右側)と左岸についても確認されたい。構造物では、先ず堤防や護岸、水制工が基本であり、築造構造物としては樋門(ひもん)、樋管(ひかん)、水門、閘門(こうもん)、排水機場などが挙げられる。加えて、霞堤、輪中堤、越流堤もよく知られているが、その意義と工法は、江戸時代(あるいはそれより以前)に遡り、いわゆる河川工学の起源とも言える。
そして、紹介する河川施設の実構造物だが、迷いに迷って3件を採り上げたが、なんと いってもそのフォルムが頼もしくそして美しい。 [Photo2]百間川河口水門(中国地方整備局 岡山河川事務所):流域内の治水安全性向上のため河口東側(左岸側)に増設された平成水門。耐震性/経済性/景観性を考慮して、ライジングセクターゲート(純径間33.4m×有効高6.9m)を採用。 [Photo3]荒川放水路 新旧岩淵水門(東京都北区):旧水門(赤水門)は、隅田川の氾濫を防止するため、大正13年(1924年)荒川放水路と隅田川の分派点に建設された。その役目は、昭和57年(1982年)岩淵水門(青水門)に引き継がれた。新旧合わせて100年間、東京東部低地の洪水を制御している。
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(Up&Coming '22 新年号掲載) |
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