IT活用による建設産業の成長戦略を追求する「建設ITジャーナリスト」家入 龍太
イエイリ・ラボ体験レポート
Vol.52
レジリエンスデザイン・BIM系解析支援体験セミナー DesignBuilder/Allplan編
【イエイリ・ラボ 家入龍太 プロフィール】
BIM/CIMやi-Construction、AI、ロボットなどの活用で、生産性向上やコロナ禍などの課題を解決し、建設業のデジタル変革(DX)を実現するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。「年中無休・24時間受付」をモットーに建設・IT・経営に関する記事の執筆や講演、コンサルティングなどを行っている。
公式サイトはhttps://Ken-IT.World

建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナーのレポート。新製品をはじめ、各種UC-1技術セミナーについてご紹介します。製品概要・特長、体験内容、事例・活用例、イエイリコメントと提案、製品の今後の展望などをお届けする予定です。

はじめに

建設ITジャーナリストの家入です。ここ数年、地震や洪水などの自然災害が頻発し、年々、激甚化しています。その被害を最小限に食い止めるには、被害が送ってから復旧や復興を行う「事後対策」を繰り返すのではなく、平時から大規模な自然災害を想定して、社会インフラなどのハードや、避難ルールなどのソフト、そして人々の被害防止の意識を高めるマインドの、各面で備えを行っておくことが必要です。

こうした準備を国家レベルで行うのが「国土強靭(じん)化」という取り組みです。どんなことが起こっても、最悪の事態に陥ることを避けることを目的としています。

フォーラムエイトでは、国土強靭化に対応して、社会インフラの効率的な計画・設計や、地域住民に対する計画内容や避難行動などのわかりやすい説明に役立つ、様々な「国土強靭化設計支援ソリューション」を提供しています。


国土強靭化の取り組み

2020年に開催されたフォーラムエイト恒例のイベント「デザイン・フェスティバル」で、内閣官房 国土強靱化推進室 参事官の山本泰司氏は、「国土強靭化に向けた最近の取組」と題して講演しました。今回のセミナーでは、その内容を紹介する形で、日本における国土強靭化の取り組みや効果をわかりやすく解説しました。

国土強靭化は、過去の大災害から得られた教訓をもとに計画されています。1959年に発生した伊勢湾台風では、明治以降最多の死者・行方不明者を出し、防災対策の原点となったほか「災害基本法」制定のきっかけになりました。

1995年に発生した阪神・淡路大震災では、大規模な市街地延焼火災が発生したほか、高速道路の高架橋の倒壊など、多大な人的・物的被害が発生しました。その教訓により、インフラの耐震性強化や、「自助」・「共助」の大切さが認識され「減災」という概念が定着しました。

そして2011年の東日本大震災では、遡上(そじょう)高が40mを超える大津波の発生や、多数の帰宅困難者が発生しました。その教訓から、インフラ整備中心の防災対策だけでは限界があることが認識されました。

国土強靭化による防災効果は、非常に高いものと予測されています。例えば、南海トラフ巨大地震・首都直下地震の発生確率は今後30年以内に70-80%と予測されています。首都直下地震(都心南部直下地震)を想定した場合、平成20年度の東京都の耐震化率を約87%としたときに、建物の倒壊は約17万5000棟、倒壊による死者数は約1万1000人と推定されています。

それが耐震化率を約94%に高めると、倒壊が約9万8000棟、死者が約6100人に減り、さらに耐震化率100%にすることで、倒壊は約2万7000棟、死者は約1500人まで減らせると見込まれています。


▲出典:首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)(平成25年中央防災会議首都直下地震対策検討WG)

実際、平成30年9月に大阪湾を襲った台風21号では、それまで最高だった、昭和36年の第二室戸台風の潮位を36センチメートルも上回ったにもかかわらず、前回は約3100haにも及んだ浸水面積がゼロに、約13万戸あった浸水戸数もゼロと、被害をなくすことができたのです。

海岸や河川堤防などの整備費は約1300億円、昭和40年以降の維持管理費は約200億円だったのに対し、高潮対策が行われなかった場合の被害額は約17兆円と見込まれています。こうした数字からも、国土強靭化の費用対効果が高いことがわかります。


 
▲昭和36年の第二室戸台風と、平成30年の台風21号の浸水面積、浸水戸数の比較   ▲平成30年の台風21号で高潮対策により防げた被害額と整備・維持管理費の比較(2点の資料:国土交通省「河川事業概要2019」

レジリエンス・デザインのアワード

フォーラムエイトは、国土強靭化に対応したソリューションを早くから提供しており、その内容は社会インフラを強化するためのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)による計画・設計から、解析、シミュレーション、そしてVR(仮想現実)による被害の可視化や国土交通省が推進する「i-Construction」まで、幅広く対応しています。

フォーラムエイトでは国土強靭化に取り組む技術者を支援しようと、2014年から「ナショナル・レジリエンス・デザインアワード(略称:NaRDA)」というコンテストを行っています。

フォーラムエイトのBIM/CIMやVR、解析、シミュレーションソフトやクラウドなどを活用して行った、社会インフラの耐震性照査や補強、被害シミュレーションなど「作品」として評価し、毎年秋に開催される「デザインフェスティバル」で表彰するものです。

 
▲2021年11月19日、品川インターシティホールで開催された第8回「ナショナル・レジリエンス・デザインアワード」の表彰式   ▲第8回ナショナル・レジリエンス・デザインアワードの最優秀賞を受けた「既設鋼管アーチ水管橋の耐震検討」(株式会社新日本コンサルタント)

製品概要・特長

「国土強靭化」というのは、自然災害に対してあらかじめ備えを行い、被害を最小限に収めるための取り組みです。フォーラムエイトでは「IM&VR/国土強靭化ソリューション」として、リアルタイムVRシステム「UC-win/Road」や、設計・解析ソリューション「UC-1 Engineer’s Studio」、BIM/CIMソフト「Allplan」シリーズなどをプロジェクトのフェーズ別に提供しています。

そのフェーズ別内容とは(1)設計打ち合わせ、(2)地盤・測量データ確認、(3)一般図(モデル)作成、(4)構造物チェック(配筋干渉)、(5)作図・図化・シミュレーション、(6)設計照査、(7)数量算出・積算・入札、(8)施工・i-Constructionです。

▲目的別に提供されているフォーラムエイトの国土強靭化ソリューション

また工種別にもソリューションを提供しており、その内容は、(1)鋼構造及びコンクリート、道路、(2)都市及び地方計画、港湾及び空港、鉄道、(3)土質及び基礎、河川、砂防及び海岸・海洋、(4)電力土木・トンネル・施工計画・施工設備及び瀬金・建設環境、(5)IT関連、その他、となっています。

これらの「フェーズ別」と「工種別」のソリューションが縦横の糸のように、国土強靭化の縦横をカバーし、ソリューション間で「IFC形式」や「LandXML形式」などによってデータ交換を行い、柔軟な対策を実現できるのが特徴と言えるでしょう。 


体験内容

9月28日の午後1時半から午後4時半まで、Zoomによるオンラインセミナー形式で「レジリエンスデザイン BIM系解析支援体験セミナー」が開催されました。講師を務めたのは、解析支援Groupの柳正吉さん、UC-1開発第1グループの中村淳さん、解析支援Groupの平木大補さん、そして解析支援Groupの川原幸之助さんです。

冒頭の20分間ほどで、国土強靭化の概要説明や、フォーラムエイトのBIM系ソリューションの説明を行い、その後、建物エネルギー解析ソフト「DesignBuilder」、BIM/CIMソフト「Allplan」、3DVRシミュレーションソフト「UC-win/Road」、そして統合型コンテンツ制作ソフト「Shade3D」の操作体験を行いました。

まずは「DesignBuilder」の実習です。ここでは2階建ての建物を3Dモデル化し、エネルギー解析や熱流体(CFD)解析を行いました。
▲「レジリエンスデザイン・BIM系解析支援体験セミナー」
  は、9月28日にオンラインで開催された

洪水などの激甚化の原因となる地球温暖化を防ぐためには、建物のエネルギー効率を高め、CO2排出量の削減につなげるという、国土強靭化の根本的な対策といっても良いでしょう。

建物の外形や窓の大きさ、位置のほか、壁の断熱材の材質や厚さ、床や壁の仕様と、太陽からの日射などを解析して、建物の窓、壁、人の発熱などを集計して熱収支を求めたり、必要な換気量を求めたりすることができます。

CFD解析では、室内に空調吹き出し口を設置して、室内各部の風速や温度分布を3D解析で求めました。その結果は、次のAllplan実習で利用するため、3DDXF形式に書き出しました。

 
▲エネルギーシミュレーションの題材となった2階建ての建物モデル   ▲熱収支の解析結果 ▲CFD解析により室内各部の風速や温度分布を求めた結果

続くAllplanの実習では、Allplanに先ほどの3DDXFデータを読み込んでテクスチャー割り当てなどの編集を行った後、別の建物モデルを使ってファサードなどのBIMモデリングや3D配筋、数量計算を行いました。

 
▲Allplanでテクスチャーを付けて編集   ▲曲面状に鉄筋を配置したところ ▲ファサードのモデリング

その次は、UC-win/Roadの実習です。道路が配置された地形モデルの上に、先ほどAllplanで作成した建物を配置し、ウォークスルーによる景観検討や日影シミュレーション、環境アセスメントプラグインによる日照計算を行いました。

 
▲UC-win/Roadによるウォークスルーによる設計検討   ▲UC-win/Roadで時間設定を変えて、日影シミュレーションを行ったところ

続いて統合形3Dコンテンツ制作ソフト「Shade3D」で、UC-win/Roadのデータを「3DS形式」で読み込み、屋根の材質をよりリアルなデータに設定して高画質なレンダリングを行いました。

最後に「BIM/CIM設計照査ツール」に、IFC形式で橋脚のCIMモデルを読み込み、鉄筋同士の干渉チェックを行い、その結果に基づいて設計段階で干渉回避を行う実習で終わりました。

 
▲Shade3Dで屋根にリアルな材質を設定してレンダリングしたところ   ▲BIM/CIM設計照査ツールによる干渉チェックと干渉回避の実習

イエイリコメントと提案

国土強靭化や、構造物の維持管理における「予防保全」は、被害が発生してから復旧や復興を行う方法に比べて、極めてコストパフォーマンスが非常に高いので、今後、人口が減少の一途をたどる日本では、必要不可欠な取り組み手法になるでしょう。

その半面、目の前に被害が発生していないうちに対策を行うため、一般の人にはその必要性が分かりにくく、「先送り」されがちになるおそれもあります。

そんなとき、フォーラムエイトのUC-win/RoadやF8VPS(バーチャルプラットフォームシステム)などのソリューションは、被害が発生したときの状況をイメージしてもらうのに大変、効果的です。今後、“防災分野のフロントローディング”には、VR関連のシステムは欠かせないソリューションになりそうです。


次号掲載予定
動的解析セミナー(既設・補強編) 2022年1月25日(火)


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(Up&Coming '22 新年号掲載)
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