ピルビスワーク実践講座
連載 第13回
動けるからだを造るピルビスワーク
「心身の活力低下[フレイル]を予防する運動習慣」
一般社団法人 日本ピルビスワーク協会
立花 みどり
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立花みどり
深刻化する「フレイル」
長年、「動けるからだ造り」をテーマに幅広い運動プログラムを実践する中、近年では高齢者や低体力者の運動機能の低下が深刻である事が気になります。
2014年に日本老年医学会が「年齢に伴って筋力や心身の活力が低下した病態」を「フレイル」と提唱して以来、介護予防のキーワードとして「フレイル」は注目を集めていますが、現在は働き盛りの若年層にも「フレイル」が起こっていると専門家は警告し始めています。
運動が長続きしない理由
コロナの時代以降、リモートワークが定着し、生活活動が低下する上に、異常とも思えるこの夏の暑さで、私たちの外出を避けて室内に籠る生活は、“動けない”“動かない”からだを造り、それはこころにまで影響して、労働意欲を低下させ、その結果、他者や社会に無関心な人が増えている傾向を感じます。
そのような現実から未来を危惧して、フレイルを予防し、「いくつになっても動けるからだ」を造るために、短期間で運動機能の回復を可能にする運動を考えるに至りました。
専門家がまず提案する運動機能回復の運動は「スクワット」です。
中高年の動けない原因は、「筋力低下」と考えられたからだと思いますが、私は運動する時に、筋力より大事なのは「動かす感覚」なのかと思っています。
スクワットを毎日の習慣にするのが大変なのは、筋力が弱いからよりも、正しく動けているのか否かがわからない感覚不足なのかと思います。
私たちが動けなくなるのは「感覚神経」の衰え
老化や運動不足で「動かない」「動いている感じがわからない」と言う方は、まず感覚神経が鈍くなっている事を疑ってみてください。
体は、姿勢を保ち足を動かす時も腕を動かす時も、先ず背中が動きます。体が動くと感覚神経から脳に「体が動いている」情報の伝達が届き、脳はその情報を目や耳などの他からの情報と合わせた情報処理を経て、判断された動きが体性神経や運動神経から体に伝えられ、この過程を繰り返すことで、実感のある動きとなり上達して行きます。
この「確かに運動している実感」が運動を楽しいものに感じさせ、継続する意欲や成果や目標へと誘う意欲になります。
私は運動機能の低下を予防し、上達させるのは、「感覚神経」を衰えさせない運動方法やマッサージなどのボディケアだと考えています。
過去2回に渡り、骨に起きる振動が体の土台である骨の代謝を維持して、運動機能が向上することをお伝えしていますが、骨の振動刺激は同時に感覚神経を刺激するので、フレイルの心配がある方に特におすすめします。
さらに今回は、低下してしまった筋肉と感覚神経を補助して、筋肉に力を入れる感覚を取り戻すために有効な「空気圧を活用する」ボディボルスターを使用した筋力回復方法をご紹介します。
楽に筋力が発揮できるボディボルスター
ゴムと空気の粘性抵抗を利用できるボールやボディボルスターを使用した運動は、運動中の筋力や骨の硬さを補い、ひとりではできない運動を可能にし、さらに滑らかな運動への上達が可能になります。
ボディボルスターとは、簡単にボルスター内の空気圧を変えられる構造の運動補助具で、運動中に様々な負荷強度に変える事ができるので様々な運動が楽になります。
これらの優れた特徴は高齢者・障害者など低体力者のトレーニングやリハビリテーションにのみならず、アスリートや運動の習慣のある方々にも、安全な運動負荷補助具として使用して成果を上げています。
動画では、近年増えている「膝」と「股関節」の動きの不具合を予防するためにボールの空気圧を利用した簡単なエクササイズ方法をご紹介します。
さらに、腹筋の力の弱い方は腰や背骨側からボルスターの空気圧でサポートすると、背骨が湾曲(屈曲)する感覚が高まり、腹筋が収縮する力が発揮しやすくなります。
筋力の低下で運動に消極的な方は空気圧を活用したエクササイズで動く感覚を取り戻してフレイルを予防しましょう!
※空気とゴムの弾性体
空気は圧縮されると元に戻ろうとするバネ的な性質を持ち、これを「弾性体」と言いますが、ゴムの弾性も外部から加えられた力で変形したゴムの内部はすぐに原形に戻ろうとする性質を意味します。
詳しくは上記YouTube動画で紹介していますのでぜひご覧ください。
(Up&Coming '24 秋の号掲載)
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