Users Product Trial Report
ユーザ製品体験レポート

協同組合 土木設計センター/株式会社栄コンサルタント
代表取締役社長 大脇 清司

使用製品 RC断面計算(旧基準) Ver.8斜面の安定計算 Ver.13FRAMEマネージャ Ver.6

竹割り型構造物掘削工法において、UC-1設計シリーズの複数製品を組み合わせて活用する方法について紹介。リングビームの変形に対する検討ではFRAMEマネージャとRC断面計算で照査を実施し、補強後の安定計算では内的安定性について斜面の安定計算を使用しています。本レポートは前半と後半に分けて、前編はUp&Coming7/1発行号に掲載しています。

地盤分野における設計・解析・VRソフトの活用について 後編

協同組合 土木設計センター/株式会社栄コンサルタント
代表取締役社長 大脇 清司(おおわき・きよし)

昭和55年大学卒業後に土木設計会社入社。
短期間道路公団、コンサルに出向し平成5年9月独立。

変位を抑制する事を目的としたリングビームの設計

竹割り型構造物掘削において、掘削時に吹付けコンクリート壁上部の変位(前倒れ)を抑制する目的でリングビームを設置する。リングビームの設計は骨組み構造計算により求めるものとし、リングビームに作用する荷重は、リングの片側変位(δ)がリング側部でδ=6mmとなる等分布荷重とする。なお、リングビームの断面は、これまでの施工実績とFEM解析結果から幅1.0m×高さ0.6mとしている。

リングビームの変形に対する検討は、リングビームを楕円モデルに置き換え、FORUM8 FRAMEマネージャおよびRC断面計算を使用して照査を行っている。

リングビームの断面

リングビームの設計モデル

解析手順

  • FRAMEマネージャに入力できる様にCAD上で作成したリングビームの中心線を分割(図では36分割)し座標を振り分ける。
  • 解析に用いられるコンクリートのヤング係数はE=2.2×10⁴N/mm²(σck=18N/mm²)とする。
  • リングビームの断面は幅1.0m×高さ0.6mを標準とする。
  • 1~3の手順をFRAMEマネージャに入力。
  • 仮の等分布荷重(図では10kN/m)を入力してリング側部変位(δ)を算出する。
  • δ=6mm/(5.リング側部変位δ)の比率から側部変位が6mmとなる断面力を算出する。FORUM8 RC断面計算を使用
  • 6で算出された断面力を用いてリングビーム幅1.0m×高さ0.6mの応力度照査を行う。
  • 使用する鉄筋は施工性(地山へのなじみを考慮)よりD13,D16とする。
  • 許容応力度以上となる場合は、鉄筋を束ね鉄筋とする、鉄筋径としてD19,D22を使用する場合はコンクリート設計基準強度をσck=24N/mm²に変更等が考えられる。

FRAMEマネージャ

RC断面計算

斜面安定性の検討

補強後の安定計算は、内的安定性と外的安定性について所要の計画安全率を確保するものとする。内的安定性は、円弧すべり法による安定計算により検討を行い、外的安定性については、補強領域の滑動について検討を行うものとする。但し、本工法は基本的に地下水がある場合、適用しないことや適切な排水処理を行う事を前提としているため、水圧の影響は考慮していない。

内的安定性に関しては、FORUM8斜面の安定計算を使用し、外的安定性はExcel数式によって照査を行っている。ここでは計算ソフトを使用している内的安定性についての設計手順を示す。

安定計算を行う領域

解析手順

  • 斜面の安定計算に入力できる様にCAD上で作成した地盤及び地層線に座標を振り分ける。(図では地盤が変化している点)
  • 安定計算を行う領域は、最大掘削高さの1/2の領域とする。
  • 本工法の設計に用いる土質定数
    単位体積重量γ
    粘着力C
    内部摩擦角φ
    を土質調査等より決定する。
  • 1~3の手順を斜面の安定計算に入力。
  • 円弧すべり法による無補強時の安定計算を行い、安定性を満たしているか照査を行う。
  • 無補強時で安定性を満たしていれば補強材は最小を配置して完了となるが、満たしていない場合は補強材を配置して安全率を確保する。
  • 上記のデータに補強材を配置して安全性を満たしているか照査を行う。
    補強材の種類 SD345(異形棒鋼)
    補強材径 D19,D22,D25
    補強材間隔 1.2mを標準(鉛直間隔)
    最大打設密度1.6m²当り1本
    補強材最小長 CL級 3m
    土砂部 4m
    削孔径 φ65mm
  • 補強材を配置しても安全性を満たさない場合には、削孔や補強材径を大きくする、土質定数を変更等が考えられる。但し、発注者との事前の打ち合わせが必要。

斜面の安定計算上での入力

内的安定計算

対策工の入力

おわりに

竹割り型構造物の設計は、右図に示す項目を繰り返し計算し収束させて計算を完了します。

今後一貫して設計ができるソフトとして開発していただけることが望みですが、組み合わせて完成できるソフトが充実していることが大変ありがたく思います。

吹付け壁展開図

協同組合土木設計センターとしての意見

フォーラムエイトのソフトを使い始めて30年ほどになります。その間道路橋示方書、各種基準の改定が幾度もありその都度素早い対応で改訂版を出していただきありがとうございます。

使用者目線で長年、建設コンサルタントの協力会社として設計実務に携わってきた全国の土木設計事務所が今までのネットワークをより強固なものとして、『協同組合土木設計センター』として組織した技術者集団の担当者の意見をまとめてみました。

前回(上部工、下部工、仮設工、基礎工)に引き続き、今回は解析ソフトについての利便性、改善してほしい点を掲載します。

組合内アンケート協力会社:有限会社 シンユ-テクノ、(株)アーンパイオニア設計、日興コンサルタント(株)、(株)和幸設計、(株)栄コンサルタント(まとめ役)全6社

利便性





解析ES等 FRAME3D⇒土木構造物の設計で使用する材料物性値がある程度網羅されているため、
自身で手入力する必要がぼぼない。
Engineer's Studio®で動的解析などの解析を行う際の計算スピードが速い。
また橋軸方向、直角方向などファイルを分けて同時に計算を流すことができる。
複雑な形状でもモデル作成ができ、任意の節点、部材で照査ができる。
UC-1シリーズの設計プログラム一部から構造物の骨組みモデルを取り込めるため、
より精度の高い解析が必要な場合の移行がしやすい。
汎用性があるため工種を選ばない。
FRAMEマネージャ 荷重入力時に荷重合計が表示される為、入力チェックが手軽にできる。
任意形骨組計算。入力が容易である。
重入力に対して画面で作用方向、荷重値が確認できる

改善してほしい点





解析ES等 FRAME3D⇒解析結果を報告書に整理したいとき、PPFファイルをエクセルに変換するなど工夫する必要があり、
手間と時間がかかる。
FRAME3D⇒FRAME3DのファイルはEngineer’s Studio®で読み込むことが出来るが、逆は出来ない。
Engineer's Studio®で1からモデルを作成する時の入力が細かく設定が多いので分かりにくく時間がかかる。
支承のマルチスプリングモデル化の機能を追加、任意で作成の場合は結果確認を容易にしてほしい。
レポートを出力する際に入力部分が確認しずらくチェックしにくい。
レポートで特に断面力や計算結果の項目など全体のページ数が1000枚以上超える事が多い。
(同断面の場合省略できるとよい)
荷重の印刷番号順序がおかしくなることがあるため、簡単に修正できるようにしてほしい。
ファイルのデータ量が大きくPCを圧迫しやすい。
RC断面計算 許容値入力時は、常時と異常時それぞれ別項目で表記して欲しい。
許容応力度法の許容値(特にせん断)を河川基準(樋門や水門)としたいときに、工夫する必要があり手間。
入力の操作性の向上を。入力欄に切れ目があるので、別で作成して貼付けがしにくい。
入力画面がいくつもあってわかりづらい。
画面上の結果一覧を見やすく出来ないか?横方向が広すぎる。
オプションが多い。
FRAMEマネージャ 荷重や組合せの途中追加・順番の移動が困難、安易に出来る様にして欲しい。
ファイルデータ保存の画面設計がわかりにくい。改善してほしい。
その他 年々、ランニングコストが上がっている。割引などあるとよいと考えます。(以前あった多年契約など)
プログラムのアップデートを確認できる無償のプログラムをお願いしたい。
(インストールしないと新機能、修正事項の確認ができない)
クラウドを介して自動的にバージョンを上げるなどできないか。
バージョンアップが頻繁に行われており、各自で即対応ができない。改善してほしい。

(Up&Coming '22 秋の号掲載)



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