Users Product Trial Report
ユーザ製品体験レポート

株式会社大翔 技術部
技術部長 末吉智宏

使用製品 土留め工の設計・3DCAD

土留め本体工、鋼製支保工、アンカー支保工、控え杭タイロッド式土留めの設計及び図面作成を行うプログラム。慣用法弾塑性法(解析法Ⅰ、Ⅱ)の同時計算が行え、自立時、掘削時、支持力検討などの影響を考慮した設計が可能。

土留め工の設計・3DCADを使用した仮設構造物設計について

株式会社大翔 技術部 技術部長
末吉 智宏(すえよし・ともひろ)

取得資格:測量士/技術士 建設部門(道路、鋼構造及びコンクリート)、コンクリート診断士

主な業務内容:道路詳細設計、橋梁詳細設計、構造物補修設計

はじめに

我々の暮らしを守るインフラには様々なものがある。
地上にある橋、道路、擁壁をはじめ、地下にあるトンネル、水道、下水道など暮らしを支える重要なものである。また最近では災害に強いまちづくりを目指し、上空にあった電線まで地中に建設されている。

地域住民や一般の方、若手技術者などは、出来上がったものを見る機会があるが、施工段階は、なかなか見る機会はない。そのため、これら地中に建設される構造物の必要工種である仮設工については、重要性が理解しがたいと考えている。

そこで今回、一般の人から見ると見落とされがちな仮設構造物にスポットを当てて、今後の設計、施工のお役に立てばと思い、筆を執った。以下に仮設構造物の概要について述べる。

仮設構造物の概要

仮設構造物には、任意仮設と指定仮設がある。またその中でも、土構造である工事用道路、鋼材を使用した仮橋、仮設構台、土のうを使用した締切工など多岐にわたる。

任意架設は施工時の施工計画において施工方法の方針を示すものであり、実際の施工時にはその形を変えるものも多い。一方、指定仮設は重要な仮設構造物であり、施工中の安全と品質の確保を図るうえで必要不可欠なものとなる。設計時からその仮設構造物の安全性、施工性、品質について設計者が責任をもって計画しなければならない。

特に床掘、山切り時における土留め工は作業員の安全と、構築する構造物の品質に大きく寄与するため、本投稿では土留め工に絞って実際に使用した例を交えながら説明したいと思う。

土留め工の設計使用例

矢板工法には様々な種類がある。
フォーラムエイトの土留め工設計概要を見ると以下のような表が出てくる。

図1 土留め工の設計-プログラムの機能と特長(壁体種類/対応形状)より引用

フォーラムエイトの土留め工設計では、この中でそのすべてに対応し、設計、計算、図面までシームレスに作業できる。

例1 土留め工と河川締切工を併用した例

これは河川護岸の構築において、床掘時の土留め工と河川締切工を併用した例となる。
また今回バージョンアップした機能により、コの字型の土留め工設計を行った事例となる。

図2 土留め工の設計 3D確認画面よりコの字型土留め工

この例は、河川工事において、護岸工事の施工計画を行った例である。当初設計で透水試験を実施していなかったために施工不能となり、仮設計画を弊社で実施した例となる。

本工事では、当初大型土のう締切による計画をされていた。しかし、施工時に河床材の透水係数が高かったために水が止まらず、床掘面が不安定となり、現場がストップしていた。そこで施工業者から弊社に施工方法の変更について相談を受けて、自立式鋼矢板工法で実施した設計である。

当初設計時に考慮していた水位は、非出水期で河床+1.3m程度であった。また、護岸を据え付けるための掘削深さは2.5m程度の現場である。出水期までに施工を完了しなければならないという時間的制約と、河川締切工と土留め工を併用できる仮設工とすることが絶対条件であった。

一見難しく思える条件であるが、フォーラムエイトの土留め工設計においてはこのような条件においても処理が早く、トライアル計算が時間をかけずにできるため、対応が可能となる。また、3Dで表示できることで施工者、発注者にも視覚的に説明ができるため、設計変更がスムーズにできた例である。

例2 電線共同溝の土留め工設計例

この現場は地質調査の結果石灰岩が確認された現場で、地下水位がなかったため親杭横矢板工法で計画した事例となる。

石灰岩のN値が高く、鋼矢板では工事費の増大が懸念されるが、発注者に理解してもらうため、フォーラムエイトの土留め工設計で、鋼矢板工法と親杭横矢板工法両方で設計を行い、親杭横矢板を採用した例となる。(ここで一言-なんと積算連携データも保存できるのだ)

少しわかりにくいがよく絵を見ていただくと、長手方向の腹起しが大きくなっているのがお分かりいただけると思う。これは、有限長の上載荷重の項において施工時の重機荷重を考慮した結果、多段腹起しと親杭間隔縮小、親杭使用鋼材変更をトライアル計算し、経済比較により多段腹起しを採用した。ここでも積算データが役立つ。

このように計算がNGとなった場合でも、多段腹起し、2段腹起しについて入力画面に戻って簡単に追加ができるため、仮設構造物計算に時間がかからなくなった。

また、CAD出力機能があるため、成果品である構造図までの作成が、熟練技術者でなくても行えるようになったことは生産性が非常に向上したといえる。

図3 土留め工の設計 親杭横矢板工法(多段腹起し)

おわりに

つたない文章ではあったが、日ごろ仮設構造物設計をされていない技術者にもわかりやすく、例を交えながら文章化してみた。少しとっつきにくい仮設構造物-土留め工の設計ではあるかもしれないが、フォーラムエイトの土留め工設計はわかりやすく、初心者でも設計しやすい。(少し触れば直感的にできるはず)

通常、仮設構造物を設計するには基準書をたくさん読んで勉強する必要があるが、このソフトでは基準の一覧が印刷できることも仮設構造物を設計することのハードルを下げてくれいていると思う。

本投稿を見て、少しでも興味を持っていただき、ぜひ土留め工の設計を触っていただきたいと考えている。

触るひとが多くなれば、ソフトももっと発展してくと思う。

施工者の安全、建設されるインフラの品質のためにも、間違いない設計を土留め工の設計でしていただきたいと思う。

図4 フォーラムエイトの土留め工設計 初期画面

フォーラムエイトの土留め工設計の良い点

  • ヘルプが充実してきており、設計に悩むことがない。
  • 掘削深さが変更となった際に慣用法と弾塑性法の切り替えがスイッチ一つで切り替えられる。
  • 入力しながら形状が画面上で確認できる。
  • 段階施工の確認が容易である。
  • 引き抜き時の影響範囲検討ができる。

フォーラムエイトの土留め工設計の改善してほしい点

  • 壁体天端工をマイナス側にも対応してもらいたい。(覆工版設置時など)
    現段階では安全側であるため特に気にしてはいないが、発注者に説明する際の3D画面が説明と相違してしまう。
  • 壁体前面、背面水位を入力できるようにしてもらいたい。

(Up&Coming '23 春の号掲載)



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