Vol.
 17

株式会社青山製作所
技術開発本部

URL https://www.asj-fasteners.co.jp

所在地 :愛知県丹羽郡大口町
自動車分野向けを中心に、様々なファスニング製品(ボルトやナットなどの各種締結部品)の開発・製造・販売および技術サービスで豊富な実績を誇る株式会社青山製作所。1950年の設立以来、着実な組織拡充とともに業容を拡大し、国内9工場と4営業所、海外5工場を展開しています。今回、Shade3Dユーザとしてご紹介する「技術開発本部」は、顧客ニーズに即した商品開発を担当。設計図面に基づきモノを単に製造するだけでなく、ボルトやナットを使うにあたっての顧客の困りごとに開発の初期段階から関与。最適な設計を検討・提案し、試作・試験を経て量産まで協働して取り組んでいます。その中で、顧客への製品機能の説明で自社の製品・技術を可視化して分かりやすく説明するためのツールとして、また、社内での教育支援など、様々な目的でShade3Dを活用しています。
 
自動車分野向けを中心に各種ファスナーを顧客ニーズに即して商品開発
情報共有手段としてShade3Dを積極活用、商品説明や教育支援で多様な展開

「3DCGには情報を精査した内容が伝えやすいというメリットがあります。そのためShade3Dは基本的に、社内外の人と情報共有するための手段として使っています」。同社は、社外的には顧客に自社の商品について知ってもらうためのツールとして3DCGの機能性に注目。精査した情報を顧客と共有することで、打合せなど限られた時間を有効活用できるなどのメリットを実感。社内向けの教育や商品開発のアイデアを議論する際の材料としても3DCGを活用しています。

文書だけでは伝えることが難しい動作などの情報も、アニメーションにすることで時間リソースも活用できる、と商品開発グループ商品開発2チームの中野祐一さんは観点を提示。その上で、モデリングやレンダリング、ライティング、動画作成も一つのソフトで可能なShade3Dの特徴に言及。加えて、既存のCADなどと比較し優れたコストパフォーマンスへの評価にも触れます。「会社で最初に導入したのはShade 8.5(2006年)の頃、私がこの部署に来る前から建物や設備に関する社内打合せ用にメインで使っていました」。自身はShade R3(1990年代末)以来のユーザーという中野さん。2022年度から同本部に移籍し、併せてShade3D Ver.22を導入しました。

主なShade3Dの活用事例としてまず挙げるのは、同社独自の斜め入り防止用ボルト「Rナビタイト®」の説明アニメーション。通常のボルトを斜めに入ったまま締めていくと、途中でそれ以上締まっていかない現象(焼き付き)が発生するのに対し、特殊な先端形状のネジ山の採用によりこの問題をクリア。ただ、その過程の動きは見えないところで起きているため、仕組みを説明しようとしてもイメージしづらい課題に直面。そこでShade3Dを使い、斜めに挿入されたRナビタイト®が本来は見えないナット内部で螺旋の動きをしながら重心位置がずれて起き上がり、正しく締まっていく様子を3DCGで可視化。実はそれに先駆け既存の3DCADで作成された動画があり、機能的な制約から必要最低限の動きに留まっていたのが、ここでは開発品の動きをリアルに細かく再現できた(村上さん)といいます。

また、様々な企業が参加した「月面社会を構築する上で何が必要なのか検討する」というイベントがあり、同社が担当した「月面を単体で移動する手段の検討」で考えた内容を参加した企業間で共有するため、検討した4輪駆動のイメージ動画をShade3Dで作成しています。それにより、イメージ(概要)の統一化ができました。

本社ショールームでは電気自動車や航空機など様々な用途の内部部品が紹介されている

同様に、省エネを強化した自社の取り組みに関する社外発表向けに、工場のボルトの熱処理設備をCG化。建物の図面データと設備の映像のみを利用して、自由曲面モデリングや掃引体の機能を駆使し、ライティングや光源設定などには時間をかけるなどして設備のリアルな動きを再現しています。

一方、自社商品「ピアスナット」に関する社内教育用CGも作成。やはり本来は見ることができない、プレスラインの中で板の形が作られるとともにパーツフィーダーからピアスナットが一個ずつ、あるいは二個ずつ送られ取り付けられていく構造を可視化しています。

さらに、同じく社内教育を目的として自社で使われているスカラ(水平多関節)ロボットの動作をCGで再現。製造設備の機能説明を分かりやすくする効果が期待されています。

「ボルトやナットを締める作業というのは万国共通だと思うのです」。一方、同社は複数の海外工場を擁するなどグローバルに展開。国内のみならず世界中の顧客に対し、言葉の違いを越えて「どの国の誰でも同じように説明できる」ためのツールとして、大山さんは3DCGの有用性を説きます。

また「自由度の高さがShade3Dの魅力」という中野さん。社内外へ向けた様々なシーンでの「情報共有の手段(ツールの一つ)」として活用することが期待できると述べます。「使って戴くと、いろいろな使い方や面白い世界が広がってくるのではと思います」。

技術開発本部 商品開発グループ 商品開発2チーム チームマネージャー 村上浩二さん(左)、
技術開発本部 技術サービスグループ 技術サービス2チーム チームマネージャー 大山徹也さん(右)
Shade3Dを活用し本来は見えないナット内部でのボルトの動きをアニメーションで可視化
商品開発グループ 商品開発2チーム 中野祐一さん


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執筆:池野隆
(Up&Coming '23 春の号掲載)
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