1.はじめに
育児介護休業法は、平成4年4月に『育児休業等に関する法律』として施行(成立は平成3年5月)、その後、平成7年10月に『育児休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律』へ改正され、平成11年4月に現在の『育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律』(略称「育児介護休業法」)へ改正されました。その後も改正を重ね、今回新たな改正となりました。
2.改正への経緯
男性育児休業取得率の改善と育児と仕事の両立が大きな目的です。令和元年度の実績は7.48%(女性は83%)。政府が目標としている男性育児休業取得率は令和2年度で13%で、さらに令和7年度の目標は30%となっているため、この目標を達成するための後押しとして、また、男性育児休業取得が増えることにより、男女ともに出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、仕事と育児の両立ができるようにするため、育児休業の取得しやすい雇用環境整備等の措置が講じられるような改正となりました。
|
|
|
3.改正のポイント
(1)男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設
子の出生直後の時期に柔軟に育児休業を取得できるようになります。
1.子の出生後8週間以内に4週間まで取得が可能
2.休業の申出期限を原則2週間前までとする(現行:原則1か月前まで)
3.労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で、休業中に就業が可能(現行:原則就業不可)
|
これらは、現行の育児休業とは別に取得ができます。
今までも、8週間以内に男性が育児休業を取得した場合には、再度の育児休業が可能でしたが、さらに柔軟な取得が可能となります。もちろん育児休業のため、雇用保険の育児休業給付金の対象となります。
また、労働者の合意した範囲での就業についての具体的な流れとしては、
(ア)労働者が事業主へ就業の意志と条件を申出
(イ)事業主は、労働者の申出条件の範囲内での就業候補日・時間を提示
(ウ)労働者が同意した範囲で就業
となっており、事前の調整した上での就業が可能となります。ただし、育休中の就業には上限があります。
【施行日:令和4年10月1日】 |
|
|
(2)雇用環境整備、個別の制度周知・休業取得の意向確認の措置が義務化
1.育児休業を取得しやすい雇用環境の整備(現行:規程なし)
2.妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の制度周知・休業取得の意向確認のための措置
(現行:個別周知の努力義務のみ)
|
新制度や現行の育児休業を取得しやすい雇用環境の整備、妊娠・出産の申し出をした労働者(男女とも)に対する個別周知や休業取得の意向確認が義務化されます。
雇用環境の整備や個別周知の方法については、環境整備については研修や相談窓口設置、個別周知については面談や書面通知など、複数の選択肢から措置を講ずることとなります。
また、休業取得意向確認では、事業主が労働者に対して、育児休業取得を控えさせるような形での周知及び意向は認められません。
【施行日:令和4年4月1日】
|
|
|
(3)育児休業の分割取得が可能に!
現行の育児休業について、分割しての取得等ができるようになります。
1.育児休業について、分割して2回まで取得可能(現行:分割不可)
2.1歳以降に育児休業を延長する場合について、育児休業開始日を柔軟化(現行:延長は1歳、1歳半の時点に限定)
|
育児休業が分割して取得できるようになるため、男性で出生後8週間以内の育児休業取得をし、復帰、その後育児休業を再度取得する場合でも分割可能となります。女性でも復帰後、ならし保育などで再度育児休業を取得することができるようになります。
また、育児休業延長する際の開始日を柔軟化することにより、各期間途中でも夫婦交代で育児休業取得ができるようになります。
【施行日:令和4年10月1日】
(4)有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件が緩和
現行の育児休業について、分割しての取得等ができるようになります。
1.1歳6ヶ月までの間に契約が満了することが明らかでない
(現行:左記の要件にプラスし、「引き続き雇用された期間が1年以上」が要件)
|
有期雇用労働者の休業取得要件が緩和となります。ただし、労使協定締結により有期・無期雇用労働者問わず「引き続き雇用された期間が1年未満の労働者」は除外可能です。
|
図1 育児休業の分割により実現できる働き方・休み方 出典:厚生労働省「男性の育児休業取得推進等に関する参考資料」 |
出典
[1]厚生労働省 「男性の育児休業取得推進等に関する参考資料」
https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/000693710.pdf
監修:社会保険労務士 小泉事務所
|