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大阪大学大学院准教授 福田 知弘 | |||||||||
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くるくるエコプロジェクトくるくるエコプロジェクトは、大町に適した自然エネルギーを掘り起こすべく、農業用水路の落差工を活用して、10kW未満のミニ水力発電所を整備し、観光や学習の場として利用しようと2003年に立ち上げたものである。 その中の一つ、駒沢ミニ水力発電所は、ベトナム製の縦型水力発電機を使用。8万円という廉価な装置で最大出力0.7kW。見学した際、「こんな装置で発電できるの?」と失礼ながら思ってしまった。山際にあって枯れ枝や落ち葉などの流入物が多く連続運転はなされていないが、必要量を蓄電して獣害防止柵に利用している。手慣れた傘木さんだからか、FRP製の導水路と水車を5分ほどでセットアップし、電気を付けてくれた【図2】。
一方、川上ミニ水力発電所は、川上さんが自宅前の水路にミニ水力発電所を整備して、自宅用電源として利用。最大出力は0.3kW程度であるが、24時間蓄電していると冬季は約3割、その他の季節は約5割の電気をまかなうことができ、省エネに貢献している。らせん型水車と変電設備は全て自前であることには驚いた。特にブロック塀で造られた変電設備室は扉を開けてビックリ【図3】。 実際にこれらを見ると、水力発電の原理が直感的によくわかる。子供だけでなく大人も十分学べる環境学習施設。 一方、発電所を整備する際、利用する水路や河川は公共のものであり、勝手に私物化することはできない。そのため、河川法に基づき水利権を取得している。しかしながら、この許認可が中々苦労されているとのことを伺った。
菜の花エコプロジェクト大町でも市内の旅館・ホテル・飲食店などから食廃油を回収し、BDFとして精製している他、廃止されたスキー場を開墾して菜の花を蕎麦と混作。取れる菜種を、菜の花農業生産組合が手作業で搾りヴァージンオイルとして販売中。このオイルは、オレイン酸が豊富な上、ビタミンEやα-リノレン酸も含まれている。私も購入してみたのだが、オリーブオイルとはまた違った感じ。 見学した3月、菜の花の芽たちは雪の下で頑張っていた【図4】。頑張った甲斐あって、そろそろ満開のシーズンを迎える頃ですね!
黒部ルート大町とNPOに関連した話題を。2008年夏、もうひとつの旅クラブメンバーらと黒部ルート見学会へ。 黒部ルートとは、黒部峡谷鉄道本線・欅平駅から黒部川第四発電所(黒四発電所)を経て黒部ダムに至る輸送設備。通常このルートは、関西電力(関電)の発電施設の保守・工事用として使用されているが、一般の人々にも水力発電事業を体感してもらおうと、関電主催による「黒部ルート見学会」が実施されている。筆者らは、大町市扇沢から関電トンネルをくぐり黒部ダムへ。そして黒部ダムから黒四発電所を経て欅平へと向かった。 関電トンネルは、黒部ダムを建設するための資材を運搬するルートとして掘削され、現在は、立山黒部アルペンルートの一部にもなっている。トンネル建設工事の際には、フォッサマグナに当たる箇所・破砕帯と重なり頻繁に出水、黒部ダム本工事以上に大変な難工事だったといわれる。 この、破砕帯難工事の模様は、「黒部の太陽」(製作・主演/三船敏郎・石原裕次郎)として1968年に映画化された。観客動員 733万人、興収16億円の大ヒットとなった前代未聞の超大作映画であり、事業者・関西電力や施工者・熊谷組は実名で登場している。石原氏が「この映画は大型スクリーンで観て欲しい」と望んだことから、テレビ放映やDVD化は長らくなされてこなかった。 黒部ダムはアーチ式ドーム型ダムといわれ、高さは186mと我が国では最も高い【図5】。1963年に完成した。ダムから勢いよく放水されている水で発電していると思われがちだが、これは観光用の放水。実際はダムの脇にある導水管に水を通し、下流にある黒四発電所で水力発電を行う。
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(Up&Coming '10 新緑の号掲載) |
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