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大阪大学大学院准教授 福田 知弘 | |||||||||||
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極東の島国から中東の島国へ2009年5月、ASCAAD2009国際会議参加のためバーレーンへ。中東地域のCAAD学会であり、テーマは「Digitizing Architecture --Formalization & Content --」。デザイン教育、デザイン手法、デジタルデザインツール、デジタル手法、デジタルヘリテージ、ジェネレーティブシステム、VRアプリケーションなどをテーマとして、35の論文が掲載された。 今回、実行委員長を務めたワエル・アブデルハミード先生(バーレーン大学・当時)は、World16のメンバーでもある。一方、リーマンショック影響による経済不況等により、残念ながら参加を見合わせた研究者・学生も多く、参加者は100名弱であった。 学会では、バーレーン国の国務大臣の開会式への参加や、中東らしい民族衣装をまとった聴衆が大勢いる中での論文発表など、学会は独特の雰囲気であり、筆者にとっては新鮮な経験であった【図1】。 大阪旅めがね・大正エリアクルーで大正を案内してから、深夜便で関西空港を発ち、カタール・ドーハ経由でバーレーンまで15時間。2日間の学会参加のため、機中泊2泊、現地2泊の計4泊と中々タイトな弾丸出張である。 経由地となるドーハは、朝6時の時点で30度を超えており、さらに蒸し暑い【図2】。 ドーハと聞けば、日本のゼネコンが新ドーハ国際空港を建設するなど関わりをみせているが、やはり「ドーハの悲劇」を先に思い出す。1994 FIFAワールドカップのアジア地区最終予選、ドーハで行われたイラクとの最終戦で後半ロスタイムに同点にされてしまい、日本が悲願の本大会初出場を逃した出来事である。
バーレーンバーレーンは33の島から構成される中東の島国であり、面積は淡路島ほど。そこに約80万人が住む。人口密度は、1,019人/k㎡と日本の約3倍。アラブ人が7割を占めるが、アジア人も多い。バーレーンに着いて驚いた事を3つ。 ビルの下層階は最先端のブランドショップが入るモール街となっているが、上層階は一般オフィスとなっているため、一般客がアクセスできるエリアはモール街のみ。これはちょっと残念。
では、首都マナーマの様子を。 バーレーン・ワールドトレードセンターASCAAD2009が開催されたホテルのすぐ隣に、バーレーンの新しいランドマーク、バーレーン・ワールドトレードセンター(BWTC)が建つ【図3】。設計はATKINS。BTWCは、高さ240mのツインタワー。そして中央に発電用の風力タービン(直径29メートル)が3基。目の前に広がる海からの風を利用しようと、世界ではじめて大型の風力発電をビル自身に取り入れた。このビルが必要とする電力の11~15%を風力発電でまかなえるという。目標稼働率は50%。 ビルの下層階は最先端のブランドショップが入るモール街となっているが、上層階は一般オフィスとなっているため、一般客がアクセスできるエリアはモール街のみ。これはちょっと残念。
バーレーン国立博物館バーレーンは数多くの古墳や遺跡があるため、博物館が幾つも点在している。 バーレーン国立博物館は、1988年にオープン。1階と2階に計6つの展示室があり、バーレーンの古墳、歴史、人々の暮らしぶりなどが紹介されている。イスラム化以前の古代文明、紀元前2200年から前1600年頃に黄金時代を迎えたという、ディルムン文明の展示、並びに、天然真珠採取業に関する展示は特に興味深かった【図7】。
バーレーン・フォート博物館バーレーン・フォートの傍には、2009年にオープンしたバーレーン・フォート博物館が建つ。設計はWohlert Arkitekter(デンマーク)。見学料は約140円(500Fils)。入口で開館を待っていると、社会見学のためか小学生たちがやってきた【図11】。展示は3000年前からの都市の歴史が地層や遺物と共に紹介される。内部空間は、2層吹き抜けとなっており、地層を現す巨大な壁が印象的。高低差を活かした展示方法も見やすく工夫されている【図12】。中庭やカフェも気持ちがいい。 尚、この近辺にあるサール(Saar)古墳群近くでは、紀元前3000年に栄えたディムルン文明の史料を展示する「バーレーン遺跡博物館」が計画中だと聞いた。
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(Up&Coming '10 盛夏の号掲載) |
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