オランダ・デルフトへ
オランダ・デルフトへ。大阪からアムステルダム・スキポール空港まで12時間弱。スキポール空港からデルフトまでは電車で約40分。オランダにまともに降り立つのは初めてであり、スキポール駅に辿りついたものの、オランダ語の理解と地理関係の理解に手間取り、デルフトへ向かう電車の特定が中々できない。到着した電車に乗ろうとするジモティらしき老婦人に、「この電車に乗るとデルフトに辿りつけますか?」と聞くと、どうやら辿りつけないらしく、老婦人は、デルフト行き電車の乗り方を丁寧に教えてくれようとした。老婦人は彼女自身が乗るデン・ハーグ中央駅行きの電車の存在を忘れそうになるほど熱心に説明してくれた。「後は自分で調べますので本当にもう大丈夫ですよ、ありがとう~」とこちらから話を終えなければ電車がいよいよ発車しそうになった。雑誌のコラムで見かけた「オランダ人はケチ、だけど親切」というフレーズにいきなり出会えた感。
オランダの時差は日本より7時間遅れ。サマータイム期間中なのかと首をかしげたくなるほど、日本でいえば11月下旬位の気温でかなり寒い。それにしてもオランダの人たちは男性も女性も背が高い。調べてみると平均身長は世界一だそうで、男性182cm、女性167cm。日本人よりも男女それぞれ10cmほど高い。少しでもオランダ人に近づけないものか、と、滞在中はチーズやニシンをできるだけ食べてみた。帰国して一ヶ月ほどだが、効果が現れたのは身長よりむしろ体重のほうか(笑)。
デルフトの運河
デルフトは、画家・フェルメールが生まれ、暮らした地。不思議なもので、彼の描いた絵画はデルフトに一枚も残っていないそうである。フェルメールの絵画は、「真珠の耳飾りの少女」「絵画芸術」のように室内・女性を対象としたものが多く、風景画は「デルフトの眺望」「小路」という2点のみ残されている。
「デルフトの眺望」にも描かれているように、デルフト市内には古くからの運河が張り巡らされている【図1】。運河沿いの街路樹も美しく、テーマパークのような景観。運河には、水蓮が浮かび、カモ、ハクチョウ、サギ、カイツブリなど日本でもお馴染みの水鳥たちが伸び伸びと暮らしている。カフェから運河を眺めていると、カモたちが運河沿いを歩いてきた【図2】。興味深いのは、運河とすぐ脇の道路との間に、転落防止柵がないこと。柵がないだけで、水面との距離がかなり近く感じられる。個人所有と思われるボートが係留されている運河もある。道路と運河の際には、駐車スペースが設けられているが、縦列駐車も整然となされている【図3】。「これまで運河に落ちた人はいないのか?」と聞いたら「落ちた人は笑われるだけ」との答えに納得。市内には、ボートを一時的に係留できるコイン駐船場も設置されているそうだ【図4】。
運河に沿って街なかを歩いていると、オシャレな果物屋があったので写真を撮ろうとしたら店員の兄ちゃんが飛び出してきた。怒られるのか?と思ったら、、、いきなりナイスポーズ【図5】!街なかで出会う人たちは、ノリのいい、気さくな方が多い。運河沿いを歩いて東門を抜けるとハネ橋がお待ちかね。その脇の運河には、フローティングハウス群。ボートの練習風景も。
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【図1】デルフト市内の運河
【図2】運河沿いを歩くカモ
【図3】運河沿いには柵が無い(東門付近)
【図4】コイン駐船場 |
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ボンエルフ
デルフトは、ボンエルフ発祥の地といわれる。ボンエルフとはコミュニティ道路(歩車共存道路、歩車融合道路)と訳され、住宅街などで人間が対応できる速度以上に車がスピードを出せない道路構造として、歩行者と車との共存を目指す道路。具体的には、路面の一部をかまぼこ状に盛り上げて段差(ハンプ)をつける方法、道路の両側に駐車スペースや植栽帯を設置して車道を蛇行させる方法などがある。
興味深かったこと。一つ目は、ハンプの上端や交差点と歩道とが同じ高さで作られていること。この高さ設計により、歩行者は段差を気にすることなく同じ高さを歩きながら車道を横切ることができる【図6】。歩行者優先の考え方が実現されている。また、路面表示の変化(車道か、歩道か、駐車場か、など)は、安直にアスファルトにペンキ塗りをするのではなく、舗装材やその並べ方を変えることで実現している。
それにしても自転車で通勤・通学する人が物凄く多い【図7】。駅前の自転車駐車場(駐輪場)は常に満杯。興味深いのは有料の駐輪場に自転車修理サービスがあること。駐輪場の管理も兼ねているのであろうスタッフが工具の貸出や部品の販売を行っていた。最近自転車の調子が思わしくなく肝を冷やすことの多い筆者としては、是非とも欲しいサービスだ。
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【図7】自転車で通う人々 |
【図8】デルフト陶器で作ったレンブラント「夜警」
【図9】デルフト陶器の絵付け
【図10】運河を泳ぐデルフト陶器製カモ
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デルフト陶器の工場へ
デルフト工科大学のすぐ傍にある、王立デルフト陶器工房へ。1653年創業。17世紀より続く唯一の工房として知られる。工房では、デルフト陶器の歴史、陶器を作るプロセス、代表的な作品、ものづくりの現場を見せてくれる。オーディオガイドは日本語メニューもあるので安心。見学ルートでは、レンブラントの「夜警」をデルフト陶器でほぼ原寸大で再現したものが展示されている【図8】。また、若いペインターが絵付けをしているコーナーも【図9】。見学者やカメラの視線を気にすることなく、一心不乱。将来はマスターペインターを目指していると後で聞いた。
デルフト陶器に関してちょっと余談。デルフトの滞在には、経済的なホテルを利用したが、部屋のトイレや浴室のタイルにはデルフト陶器が使われていた。トイレの蓋を開けて見るとデルフト模様が現れてびっくり。また、デルフト工科大学にある植物園の小さな運河では、何と、デルフト陶器のカモ群団にも出会えた【図10】!
デルフト工科大学
さて、デルフト工科大学へ。オランダ最古の工科大学【図11】。デルフトの街なかにあり、ホテルから歩いて通えるのが嬉しい。ここで、eCAADe2013国際会議が開かれた。オープニングセレモニーなどが行われるメイン会場は、主催者の建築学部が入る校舎の屋外部分を現代風に改修したオーディトリアム【図12】。オランダのシンボルカラー=オレンジを基調とした配色。興味深いのは、オーディトリアムがオープンな空間であり、eCAADe参加者でない人たちも参加しようと思えば参加できる点。聴衆が座る階段席の下が昼食会場。脇のカフェも公立大学とは思えない、素敵なデザイン。
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【図11】デルフト工科大学・建築学部 |
【図12】eCAADeメイン会場 |
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eCAADe2013学会初日夜のレセプションは、デルフト市庁舎のホールで。こういった場所は一般客としては中々アクセスできないので嬉しい。会場では懐かしい先生方との再会で盛り上がった【図13】。
左下)Tom Maver先生は30年以上前に、このeCA ADe学会を創設された一人。Tom Maver先生がHostをされたStrathclyde (UK)でのeCAADe94学会で、アジアから唯一参加した笹田先生とTom Kvan先生がCAADRIA学会設立に向けた議論を交わされたそう。Tom Maver先生とは、恐らく10年以上ぶりの再会。笹田先生との想い出話を何度もされていた。 |
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中下)Andre Brown先生。I JAC( International Journal of Arch itectural Computing)を創設された方。CAADRIA学会にもよく出席されており来年の京都(CAADRIA2014)も参加するよ、と言ってくれた。楢原太郎先生(左)はニュージャージー工科大学 (US)で教鞭をとられており、World16のメンバー。本年6月には、小生が登壇した兵庫県立加古川東高等学校のアメリカ研修講演会の中で、Skype登壇して頂きアメリカで学んだことや仕事をすることをテーマとして、高校生にお話して頂いた。 |
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右下)ペルーで行われたSIGraDi2005国際会議でご一緒した先生方。マチュピチュの思い出話に花が咲いた(Up and Coming No.95)。 |
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【図13】世界中の研究者との再会 |
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【参考URL】
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3Dデジタルシティ・オランダ by UC-win/Road
「デルフト」の3Dデジタルシティ・モデリングにチャレンジ |
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今回はボンエルフ発祥の地といわれるオランダのデルフトをVRで作成しました。旧市街のマルクト広場には市庁舎(Stadhuis)、新教会(Nieuwe Kerk)といったオランダらしい街並みを再現。ボンエルフでは標識や路面の変化をリアルに再現し、歩車融合型道路による人と車が共存する街を作成しました。他に、東門(Oostpoort)と運河、デルフト工科大学(Faculty of Architecture TU Delft)の建物周辺の景観を表現しました。 |
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デルフトの運河と街並み |
マルクト広場 |
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ボンエルフ(歩車融合型道路) |
デルフト工科大学 |
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「UC-win/Road CGレンダリングサービス」では、POV-Rayにより作成した高精細なCG画像ファイルを提供するもので、今回の3Dデジタルシティ・オランダのレンダリングにも使用されています。POV-Rayを利用しているため、UC-win/Roadで出力後にスクリプトファイルをエディタ等で修正できます。また、スパコンの利用により高精細な動画ファイルの提供が可能です。
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