シンガポールへ
シンガポールは赤道直下の都市国家。マレー半島の先端に位置し、淡路島ほどの面積しかない小さな島国。古くから西洋と東洋の文化が融合してきたこの地は、建国後、精力的に国づくりを推進し、国民一人当たりのGDPは日本を凌ぐ。
今年5月、CAADRIA 2013などのため、13年ぶりに訪問したシンガポール【図1】。訪問すると、がらっと変化していたことを実感した。7月に訪問した様子を併せてご紹介しよう。
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【図1】CAADRIA2013集合写真 |
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マリーナベイの開発
シンガポール川の河口に位置する、マリーナベイ。2000年に訪問した頃は確か、埋立地が広がっていた。それ以前は埋立地もなく、青い空と海をバックにマーライオンが白く輝く姿がシンガポールを代表するイメージだった。
現在では、マリーナベイを囲むように高層ビルが立ち並び、正面にはマリーナベイ・サンズ。高さ200m、3棟の高層ビルの最上部を船形のスカイパークが乗っかった象徴的なフォルム。空に浮かぶ展望台からはシンガポールが一望できる。
夜8時からは、マリーナベイ・サンズのビルの頂上部からレーザービームが放たれ、マリーナベイを舞台として、スペクタクル・ショーが行われる【図2】。当日は偶然ながら、本物の稲妻が飛んでおり、背景を演出してくれた(その後、雷雨になり大変だったが)。このように、公共空間(特に、海や川などの水辺)などの都市施設をふんだんに活用してテーマパークさながらのショーが行われることは、確実に増えてきている。
【図3】は、シティホール付近で偶然撮影した風景。工事用クレーンがマリーナベイ・サンズを釣りあげているように見えた。
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【図2】光と水のスペクタクル・ショー |
【図3】クレーンに釣りあげられそうな
マリーナベイ・サンズ |
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ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ
マリーナベイ開発の一環として、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイが2012年にオープン【図4】。この施設は巨大な植物園であり、CAADRIA学会では設計者による基調講演と、計画者による現地ツアーが実施された。現在オープンしている「ベイサウス」地区は、約54ヘクタールの敷地に、2つのドーム型温室、18本の「スーパーツリー」などが完成。
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【図4】マリーナベイ・サンズからガーデンズ・バイ・ザ・ベイとシンガポール海峡 |
ドーム型温室のひとつ「フラワードーム」は、面積1.2ヘクタール、天井高45メートルと、かなり巨大な無柱空間【図5】。温室といっても室内気温は外気より低い、「冷室」。もうひとつのドーム型温室「クラウドフォレスト」は高さ50mほどの高層庭園。建物に入ると巨大な人工滝が迎えてくれる【図6】。また、スーパーツリーをつなぐ「OCBCスカイウェイ」は、吊り構造の空中歩廊。地上22mの位置にあるため、風が吹くと結構ユラユラ【図7】。
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【図5】フラワードーム |
【図6】クラウドフォレストの滝 |
【図7】OCBCスカイウェイ |
シンガポール・リバー・クルーズ
マリーナベイに注ぎ込むシンガポール川は、シンガポールの近代化と関わりが深い。川沿いには、かつて船運が盛んな頃に建設され、その後使われなくなった倉庫群があった。今ではリノベーションされて、川沿いに緑が溢れ散歩道として整備されると共に、ボートキーやクラークキーのような繁華街も見られる。リバー・クルーズの発着場も数多い【図8】。
シンガポール川の川幅は対岸の様子まで見える距離。雁木も整備されている。人々が佇む雁木側の街灯は消されており、暗い遊歩道上から対岸の賑やかなクラークキー・フェスティバル・ビレッジをしっかりと眺めることができる【図9】。対岸では、川べりのカフェやバーで飲食や、バンジージャンプのようなアトラクションも。
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【図8】リバー・クルーズ乗り場(クラークキー) |
【図9】街灯の消された雁木エリア |
学会が終わった後、皆でリバー・クルーズ。「あれ、何か違う?やけに静かだ」と思って船長に聞いてみたら、ボートの動力はエンジンではなく電気モーター。なので、かなり静か。現在はまだソーラー発電ではないそうだが、赤道直下のシンガポールならばソーラー発電も可能に思える。一方、船体のデザインはオールドスタイル。甲板や客船に座ると、川風が心地いい。水面すれすれから陸とは全く異なるアングルでシンガポールの夜景を体感できるゾ【図10,11】。
乗船時に受け取ったマップは、英語の他、日本語、韓国語、中国語、タイ語、ベトナム語で記載。また、乗船料はSGD20。大阪のリバー・クルーズと同じくらいだ。
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【図10】リバークルーズ:クラークキー |
【図11】リバークルーズ:マリーナ・ベイとマーライオン |
シンガポールの都市模型
URA(Urban Redevelopment Authority=都市再開発庁)本社ビルでは、シンガポールのこれまで、そして、これからの都市計画の内容を模型、ビデオ、写真等でわかりやすく展示。例えば、時代の異なる定点撮影写真を見比べることができる展示、VR技術で自分で都市計画シミュレーションが行える展示など。
中でも目玉は、中心市街地の模型。16km2のエリアが1/400の縮尺で精巧に作られている【図12】。既に完成した建物はファサードまで作成されており、計画中の建物はボリュームで表現されている。上階で模型を眺めるために設けられたモニターを覗くと、主要な建物の詳しい情報がAR技術により表示される【図13】。また、別室には模型制作のスペースがあり、専門家によりメンテナンスが小まめになされている様子。
訪問者は、我々のような視察者だけでなく、地元の学校が課外授業を行うスペースとしても利用されていると聞いた。
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【図12】中心市街地の都市模型(縮尺1/400) |
【図13】ARによる都市模型の詳細説明 |
世界のどこかで出会う
【図14】を見ながら。大学時代からの友人が赴任先のインドから帰国の途上、シンガポールでトランジットするよ、という連絡がフェイスブックに書き込まれてきた。さらに詳しく聞くと、大阪への帰国便は私と同じ。という訳で、シンガポールで落ち合うことに。次に、緑色のTシャツの女性とも久しぶり&偶然の出会い。彼女は、台湾の劉教授の卒業生でNext Gene21+プロジェクト(2007-08年)を共に実施した。一時的に国立シンガポール大学の研究員に勤務中とのことでサプライズな出会い。白いTシャツの女性は、私の研究室の博士後期課程の学生で、ドイツ・ハイデルベルグ大学に留学中。沢山の偶然がかみ合っての、マーライオン前での、インターナショナルな出会いとなった。こうして、インド、台湾、ドイツ、日本からひとつの場所に出会えるとは、SNSの力は本当に凄い。
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【図14】マーライオン前でのインターナショナルな出会い |
シンガポールにアクセスしてみてわかったこと。それは、関空から深夜23:30発で発ちシンガポールに朝到着して、シンガポールで用事を済まし、その日の深夜便で帰ってくるという、0泊3日弾丸出張が可能なこと。この行程でも、現地に20時間滞在でき、決して不可能ではなさそう。幸か不幸か、どうしても~という時には是非。
隣国マレーシアのジョホールバルでは、イスカンダル計画が進行中。これは、マレーシアとシンガポールの経済発展を背景に、2026年までに、シンガポールの約3倍の敷地に、新たな都市を創ろうとするもの。既にアウトレットモールやテーマパークがオープンしている。
最後に、来年のCAADRIA2014は、2014年5月14日から17日、京都工芸繊維大学にて。8年ぶりの日本開催となり、仲隆介教授を委員長とする、実行委員会が精力的に準備を進めている。論文(Abstract)〆切は、今年9月7日。是非、論文投稿と参加を宜しくお願いします!
【参考URL】 CAADRIA2014 http://www.caadria.org/conf/caadria2014/
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3Dデジタルシティ・シンガポール by UC-win/Road
「シンガポール」の3Dデジタルシティ・モデリングにチャレンジ |
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今回は赤道直下の都市国家 シンガポールをVRで作成しました。シンガポールの象徴的存在であるマーライオンと、マリーナ湾周辺の近代高層ビル群を再現しています。近年話題の観光地マリーナベイ・サンズでは、地上200mにあるサンズ・スカイパーク(Sands SkyPark)にある屋上プールを作成し、泳いだりテラスで寛ぐ人々の様子をVRでリアルに表現しました。 |
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水を噴き上げるマーライオン |
シンガポールの街並みと交通 |
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総合リゾートホテル マリーナベイ・サンズ |
サンズ・スカイパーク(屋上プール) |
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「UC-win/Road CGレンダリングサービス」では、POV-Rayにより作成した高精細なCG画像ファイルを提供するもので、今回の3Dデジタルシティ・シンガポールのレンダリングにも使用されています。POV-Rayを利用しているため、UC-win/Roadで出力後にスクリプトファイルをエディタ等で修正できます。また、スパコンの利用により高精細な動画ファイルの提供が可能です。
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