AIのコモディティ化
生成AI(生成的人工知能:Generative Artifi cial Intelligence)のコモディティ化が進み、誰でも気軽に使えるようになった。自然言語やプログラムコード、画像などの様々なメディアを、ユーザのインプットに応じて生成してくれる。生成AIのひとつ、ChatGPT(チャットジーピーティー:Chat Generative Pre-trained Transformer)は、昨年11月にOpenAIから公開された対話AIであり、公開からわずか5日で100万人ユーザを突破した。
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プログラムコードの生成
ChatGPTで、プログラムコードを生成してみよう。今回はChatGPTにゼロからコードを生成してもらうのではなく、不具合を発見し改善するコードを生成してもらう。
質問:
「不具合があれば教えてください。」という質問とC++コードをChatGPTに入力する(図1)。このコードは、ユーザが入力した整数が「1」であれば、「1が入力されました。1を選択しました。」と画面出力した上で「処理を終了します。」、「1」でなければ単に「処理を終了します。」と出力する。実は、if文の処理に{}ブロックで囲っていないので(図1-10~12行目)、文法的には間違いではないが、「1」を入力した場合に上述のような正しい出力ではなく「1が入力されました。」とだけ出力される。
回答:
ChatGPTは、図2のように、if文の処理にブロックとして囲むようにと、理由を付けて回答した(図2-1~9行目)テキストは順に表示されていくので、まるでAIは考えながら、書いているようである。尚、コードは右上に「Copy code」のボタンが付いており、コピーしてすぐに使えるので便利だ(笑)。しかしながら、解説をよく読むと、図2-2行目「if文の条件が成立した場合」は「if文の条件が成立しなかった場合」、3~4行目「条件が成立した場合」は「条件が成立しなかった場合」がそれぞれ正しい。鵜呑みにはできない。
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自然言語処理
次に、筆者が作成した文章の不具合をChatGPTに尋ねてみた。結論からいうと、正しい回答・ありがたい追加情報が圧倒的に多かったが、間違いが含まれることがある。以下は、その箇所について取り上げる。
質問:
都市と建築のブログ vol.61「木曽:エメラルドグリーン」の文章の校閲をChatGPTに投げかけた。間違いを質問すると共に、追加情報がないか尋ねた(図3)。
回答:
図4の通り。ChatGPTの回答の間違いを指摘すると、図4-4行目、闘龍灘は、「兵庫県豊岡市」ではなく「兵庫県加東市」にある。また、「日本の滝百選」には選ばれていない。図4-6行目 闘龍灘は、「山陰地方」ではなく「近畿地方」にある。また、「天竜川」ではなく「加古川」の上流部にある。そもそも、天竜川は山陰地方ではなく、中部地方にある。
図1 ChatGPTへの質問(プログラムの不具合修正) |
図2 図1に対するChatGPTからの回答(プログラムの不具合修正) |
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画像生成AIで発想
ChatGPTはテキストベースのAIモデルであるが(テキストを入力してテキストを生成する)、テキストを入力して画像を生成するAIモデルもある。「Midjourney(ミッドジャーニー)」、「Stable Diff usion(ステーブルディフュージョン)」が昨年7月、8月にそれぞれリリースされた。それまでにも画像生成AIモデルは存在していたが、人間が描いたものと遜色ない画像を誰でも生成できることで、火が付いた。
昨年夏の終わり頃、台湾・国立陽明交通大学(NYCU)建築研究所が主催する、学内建築デザインコンペの外部審査委員長を務めた。画像生成AIの活用を提案したところ、NYCU側でも前向きに賛同してもらえ、全体テーマを「Architectural Design Startingwith AI Drawings」とした。進取の気性に富むメンバーと仕事ができるのはうれしい。
コンペでは、5名ほどの大学院生がチームを組み、計10チームが10日間かけて、画像生成AIで建築・都市デザインを発想し、実現可能性を検討しながら、具体的な案を作り上げていく。
最終的に、パネル、模型、ビデオ、VR/ARなどで表現された作品は、想像した以上にどのチームも質が高く、とても驚いた。
取り上げたテーマも多彩で、建築スケールや都市スケール、現実的な提案や抽象的な提案、新築やリノベーション。画像生成AIのための質問(プロンプト)は、学生自ら書いたものからSNSのハッシュタグ、小説の文章まで。成果は、 https://sites.google.com/arch.nycu.edu.tw/giadesigncompetition2022
図3 ChatGPTへの質問(都市と建築のブログ Vol.61「木曽:エメラルドグリーン」)
図4 図3に対するChatGPTからの回答 |
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インテリアデザイン
画像とテキストを入力すると、新たな画像を生成してくれる画像生成AI、RoomGPTを試した。
AIにとってノイズになるかもしれないと考え、多少散らかっていたり、収納の引き出しが少しだけ開いている状態で筆者の部屋を撮影した。この写真と以下のメニューを入力として、画像を生成した。
生成AIはあらゆる分野への応用が予見されており、当然ながら懸念も伺える。個人的には、AIをどう使いこなすか、AIが生成する間違いに気付けるかどうか、そのためには自分自身をどう成長させていくかが大切だと考える。
生成AIの進化はものすごく、インターネットを誰でも使えるようになった1990年半ばのようなワクワク感を覚えている。AX(AIトランスフォーメーション)の波は確実に押し寄せている。
図5 RoomGPT |
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