Academy Users Report
アカデミーユーザー紹介/第28回
東京工業大学
Tokyo Tech ANNEX

海外パートナーと連携し教育・広報・研究活動を
戦略的に推進
「Tokyo Tech ANNEX 3D仮想空間ウェブページ」
制作に当社VR技術導入

東京工業大学 Tokyo Tech ANNEX
URL https://www.titech.ac.jp/globalization/
   overseas/
所在地 バンコク(タイ)、アーヘン(ドイツ)
事業内容:海外の大学・研究機関・企業等と連携
した国際的な教育、広報、研究活動の戦略的推進

「日本は何だかんだと言って、情報通信技術(ICT)の活用が(実は)後れている、というようなことがよく言われています」

例えば、タイのパートナーなどと一緒に仕事をしていると、コロナ禍の問題が起こる以前からスマホでのこまめな調べ物や、LINEを用いた情報共有などが日頃ごく普通に行われてきている、と東京工業大学 東工大アネックス(Tokyo Tech ANNEX)バンコクとアーヘンの水越達也ディレクターは、自らの体験を交えてこう指摘。それ故、本当にもっとICTを使いこなしていけば、日本はまだまだ発展の余地があるのでは、との観点を示します。

一方、通常の会議やイベントでZoomなどのWeb会議サービスを頻繁に利用。同氏はこの1年間ほどで、それらが非常に身近なツールになってきた実情に言及。ただ、今後のことを考えると、それらをコロナ禍での特化した活用に終わらせるのではなく、従来以上の効率向上にどう繋げていくかが課題になる、と位置づけます。それは、この間の海外共同研究担当としての経験を通じた、「既にコネクションやルートがあるところとはオンラインでも(話を)深めていくことが出来るのに対し、新たな開拓となるとなかなか難しい面もある」との実感がベースにあります。その意味でも、今回取り組んできた「3D仮想空間ウェブページ」への期待は大きい、と説きます。

同アネックスでは現在、バンコク(タイ)とアーヘン(ドイツ)に拠点を設置。各国の大学や研究機関、企業などと連携して教育、広報および研究活動を実施しています。その中で昨年、新型コロナ禍により海外パートナーとの往来が出来なくなるなどの制約に直面。それを機に、同アネックスの従来Webサイトと、3DリアルタイムVR「UC-win/Road」をはじめとするフォーラムエイトのVR関連技術でサポートするバーチャルキャンパスを融合。一層高度かつ多様な活用可能性の実現を目指す取り組みが進行中です。



日本で初めて学部と大学院を統一

東京工業大学は、1881年に東京職工学校として設立され、今年創立140年を迎えます。同大は、広く理工学分野における研究者、教育者、技術者あるいは経営者として指導的役割を果たせる、世界に通用する人材の育成を自らの使命に掲示。まさにこれまで、各界で活躍する数多くの人材を輩出し、日本最高峰の理工系総合大学としての評価を築いてきました。さらに、理工系大学の役割への期待が高まる中、科学技術による地球規模の課題解決など社会貢献を通じ、「世界最高の理工系総合大学」実現を目指す長期目標を描きます。

そうした一環で同大は2016年4月、日本の大学としては初めて学部と大学院を統一し、「学院」を創設。これにより、学士課程と修士課程、修士課程と博士後期課程の教育カリキュラムが継ぎ目なく、学修しやすい教育体系の提供を可能にしています。

現在は理学院、工学院、物質理工学院、情報理工学院、生命理工学院および環境・社会理工学院の6学院から構成。学士課程2年目から学生は学院内の「系」に所属し、修士課程以降に進む場合は「コース」を選択し、専門性を深めていく流れとなります。また、専門知識を提供する学院に対し、教養を提供するリベラルアーツ研究教育院、新たな研究領域の創出などを担う科学技術創成研究院も配備。大岡山、すずかけ台および田町の3キャンパスに学士課程・大学院課程合わせて約10,500名の学生(そのうち海外からの留学生約1,700名)、教員約1,100名および職員約600名が展開しています。

東京工業大学
東工大ANNEXバンコク、アーヘン
水越達也ディレクター


Tokyo Tech ANNEXの設置と取り組み、水越氏の役割

東工大において独創的な基礎研究の推進や産学連携を通じた次世代の基礎研究分野創出を担う、研究・産学連携本部。そこでは理事・副学長(研究担当)を本部長とし、教職員や産学連携コーディネーター、ユニバーシティ・リサーチ・アドミニストレーター(URA)が相互に協力する体制が構築されています。その中で水越ディレクターは、産学連携部門のURAとして海外共同研究を担当。国際部とともにアネックス事業を運営しています。

「各大学には海外拠点があり、留学生向けの広報を主な業務としています。本学にも海外拠点はありましたが、『アネックス』という新たな発想を展開しようと、ここ2年間進めてきています。」

Tokyo Tech ANNEXは、海外の大学、研究機関および企業など戦略的パートナーとの協働により設置する海外拠点であり、同大の国際的認知度向上に資する戦略的国際展開の拠点と位置付けられます。そこでは、1)ANNEX-E(優秀な学生の獲得・交流、海外の大学・研究機関との連携)、2)ANNEX-I(情報収集、同大の活動に関する情報発信)、3)ANNEX-R(国際的な産学連携、国際的な共同研究の推進)― という3つを活動の柱として設定。これまでにバンコクおよびアーヘンにそれぞれ拠点を構築。2021年中には米国内に3ヵ所目のアネックスを開設すべく準備が進められています。

もともと同大は2002年、初の海外オフィスをタイ国立科学技術開発庁(NSTDA)内に設置。2007年からはNSTDAやタイのトップ大学と連携し、TAIST-Tokyo Techという国際連携大学院を運営してきています。そのような経緯もあり、2018年3月にTokyo Tech ANNEXBangkokをNSTDA内に開設。以来、これをベースに前述の3つの柱に基づく活動をスタート。併せて、同大の最先端の研究について発信するため「リサーチ・ショーケース」の第1回を2019年1月にタイで、第2回(2020年9月)と第3回(2021年3月)は新型コロナ禍の影響によりそれぞれオンラインで実施しています。

一方、東工大は2007年にアーヘン工科大学と全学協定を締結し、研究者や学生の交流、イベントの共同開催などをしてきました。そうした関係の下、2019年3月には初の欧州拠点としてTokyo Tech ANNEX Aachenをアーヘン工科大学内に開設。相互の関心が高いテーマを設定した「ジョイントワークショップ」の定期開催と、そこから発展させた共同研究を実施することとしており、ジョイントワークショップの第1回を2019年5月に共催。第2回は新型コロナ禍を受け、テーマを6つに分けて2020年11月から順次オンラインで開催しています。

水越氏が現職に就いたのは2018年4月。それまでは昭和電工ヨーロッパの社長を務めるなどビジネスやアカデミアの世界で豊富な海外経験を蓄積。海外担当のURAとして東工大アネックスをリードする氏は、バンコクに関してはアネックスを立ち上げた前任者を引き継ぎ、アーヘンではその立ち上げ準備から、国際部のメンバーと共に事業を運営。各国パートナーと協力し、テーマ探索やファンド確保など共同研究の機会創出に努めています。



アネックスの機能強化に3D VR技術の導入へ

コロナ禍で互いに行き来できない中、海外現地での活動とのギャップをどう埋めていくかという時、バーチャルな空間を使ってあたかも来たような感覚になってもらい、東工大に興味を持っていただくことが一つ。もう一つは、アネックスの情報発信に当たり、従来型のWebサイトやパンフレットを補足。こちらから見せたい情報をバーチャル空間に組み込むことで、見に来た人がイメージしやすくなるのでは ― 。水越ディレクターは今回、VR技術を駆使した新しい発想を体現するアネックスのWebサイトへの展開を着想した狙いをこう語ります。

実は、タイのある組織でバーチャル空間を使ったイベントがあり、自身が参加。「ここをクリックしたらどんな部屋へ行くのだろう、どんな情報を得られるのだろう」と、気づけばワクワクしながら没頭していた体験が背景にあるといいます。

そこで、コロナ禍の実際の状況やそのもたらす影響が次第に明らかになってきた昨秋、当面の移動制限継続も視野に、今後のアネックスの活動を維持していく上でこうしたツールを活用できないか、と検討に着手。11月に「海外における認知度向上」「共同研究機会の創出を図るための情報発信機能の強化・改善」に資する「Tokyo Tech ANNEX 3D仮想空間ウェブページ」制作の公募を実施。複数社から応募がある中で、3D VRやCG、WEB/クラウドなどのソフトウェアやサービスを保有し、関連技術を蓄積するフォーラムエイトが選ばれています。

東工大アネックスのメンバーでバーチャルキャンパス「Tokyo Tech ANNEX 3D仮想空間ウェブページ」を運用


3D仮想空間ウェブページ制作の具体化、今後の展開


昨年12月後半に契約を交わした後、キャンパス入り口から各建物へのアプローチ、当面必要な6学院それぞれの部屋数や会議室、イベントホールといった3D仮想空間の構成、各建物の内外の移動シーンやイベントごとに異なる展示の見せ方など、水越ディレクターらが描く「Tokyo Tech ANNEX 3D仮想空間ウェブページ」の全体像と詳細な希望について当社担当者と打合せ。本格的な制作作業は年明け後に始まりました。

2月中旬にβ版が完成。それについて同氏は、全体像としてはほぼイメージ通りと語り、個々の建物やキャンパス環境などの再現性を「雰囲気的にも本学の良いところをうまく表現してもらっている」と評価。併せて、細部の修正要望が示され、それを受けた詰めの作業が続きました。

前述の、Tokyo Tech ANNEX BangkokとNSTDAの共催により3月8日にオンラインで実施された第3回「Tokyo Tech ResearchShowcase」が、実質的に同3D仮想空間ウェブページのお披露目となりました。リサーチ・ショーケースのテーマは毎回、主催者同士で議論して決めており、今回はタイが現在国を挙げて取り組む経済戦略に沿って、「Agriculture and Livestock Industry(農業と畜産)」が設定されています。

今回リサーチ・ショーケースでは、参加者に同3D仮想空間ウェブページのURLを通知。参加者はバーチャルキャンパスの学内を散策しながら所定の会議室へ行き、ドアを開けるとZoomの会議に参加。また別の空間内には同会議や他の東工大に関連する資料を得られる仕組みが施されました。

水越ディレクターは、今後行われるリサーチ・ショーケースやジョイントワークショップなどのイベントで3D仮想空間ウェブページの活用を広げていく考えに言及。さらに、東工大への留学を紹介するイベントなどでもその雰囲気を分かってもらう有効なツールとして活用できるのでは、と期待を示します。

大岡山キャンパスの本館が「Tokyo Tech ANNEX 3D仮想空間ウェブページ」の
開始画面に
ロビーから研究室へ進み、コンテンツを体験
2021年3月8日にTokyo Tech ANNEX BangkokとNSTDAの共催により実施された第3回「Tokyo Tech Research Showcase」では、
F8VPSによる「Tokyo Tech ANNEX 3D仮想空間ウェブページ」を通して、参加者が入室しイベントとキャンパス案内を行った
執筆:池野隆
(Up&Coming '21 春の号掲載)



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