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Tokyo Tech ANNEXの設置と取り組み、水越氏の役割 東工大において独創的な基礎研究の推進や産学連携を通じた次世代の基礎研究分野創出を担う、研究・産学連携本部。そこでは理事・副学長(研究担当)を本部長とし、教職員や産学連携コーディネーター、ユニバーシティ・リサーチ・アドミニストレーター(URA)が相互に協力する体制が構築されています。その中で水越ディレクターは、産学連携部門のURAとして海外共同研究を担当。国際部とともにアネックス事業を運営しています。 「各大学には海外拠点があり、留学生向けの広報を主な業務としています。本学にも海外拠点はありましたが、『アネックス』という新たな発想を展開しようと、ここ2年間進めてきています。」 Tokyo Tech ANNEXは、海外の大学、研究機関および企業など戦略的パートナーとの協働により設置する海外拠点であり、同大の国際的認知度向上に資する戦略的国際展開の拠点と位置付けられます。そこでは、1)ANNEX-E(優秀な学生の獲得・交流、海外の大学・研究機関との連携)、2)ANNEX-I(情報収集、同大の活動に関する情報発信)、3)ANNEX-R(国際的な産学連携、国際的な共同研究の推進)― という3つを活動の柱として設定。これまでにバンコクおよびアーヘンにそれぞれ拠点を構築。2021年中には米国内に3ヵ所目のアネックスを開設すべく準備が進められています。 もともと同大は2002年、初の海外オフィスをタイ国立科学技術開発庁(NSTDA)内に設置。2007年からはNSTDAやタイのトップ大学と連携し、TAIST-Tokyo Techという国際連携大学院を運営してきています。そのような経緯もあり、2018年3月にTokyo Tech ANNEXBangkokをNSTDA内に開設。以来、これをベースに前述の3つの柱に基づく活動をスタート。併せて、同大の最先端の研究について発信するため「リサーチ・ショーケース」の第1回を2019年1月にタイで、第2回(2020年9月)と第3回(2021年3月)は新型コロナ禍の影響によりそれぞれオンラインで実施しています。 一方、東工大は2007年にアーヘン工科大学と全学協定を締結し、研究者や学生の交流、イベントの共同開催などをしてきました。そうした関係の下、2019年3月には初の欧州拠点としてTokyo Tech ANNEX Aachenをアーヘン工科大学内に開設。相互の関心が高いテーマを設定した「ジョイントワークショップ」の定期開催と、そこから発展させた共同研究を実施することとしており、ジョイントワークショップの第1回を2019年5月に共催。第2回は新型コロナ禍を受け、テーマを6つに分けて2020年11月から順次オンラインで開催しています。 水越氏が現職に就いたのは2018年4月。それまでは昭和電工ヨーロッパの社長を務めるなどビジネスやアカデミアの世界で豊富な海外経験を蓄積。海外担当のURAとして東工大アネックスをリードする氏は、バンコクに関してはアネックスを立ち上げた前任者を引き継ぎ、アーヘンではその立ち上げ準備から、国際部のメンバーと共に事業を運営。各国パートナーと協力し、テーマ探索やファンド確保など共同研究の機会創出に努めています。 アネックスの機能強化に3D VR技術の導入へ コロナ禍で互いに行き来できない中、海外現地での活動とのギャップをどう埋めていくかという時、バーチャルな空間を使ってあたかも来たような感覚になってもらい、東工大に興味を持っていただくことが一つ。もう一つは、アネックスの情報発信に当たり、従来型のWebサイトやパンフレットを補足。こちらから見せたい情報をバーチャル空間に組み込むことで、見に来た人がイメージしやすくなるのでは ― 。水越ディレクターは今回、VR技術を駆使した新しい発想を体現するアネックスのWebサイトへの展開を着想した狙いをこう語ります。 実は、タイのある組織でバーチャル空間を使ったイベントがあり、自身が参加。「ここをクリックしたらどんな部屋へ行くのだろう、どんな情報を得られるのだろう」と、気づけばワクワクしながら没頭していた体験が背景にあるといいます。 そこで、コロナ禍の実際の状況やそのもたらす影響が次第に明らかになってきた昨秋、当面の移動制限継続も視野に、今後のアネックスの活動を維持していく上でこうしたツールを活用できないか、と検討に着手。11月に「海外における認知度向上」「共同研究機会の創出を図るための情報発信機能の強化・改善」に資する「Tokyo Tech ANNEX 3D仮想空間ウェブページ」制作の公募を実施。複数社から応募がある中で、3D VRやCG、WEB/クラウドなどのソフトウェアやサービスを保有し、関連技術を蓄積するフォーラムエイトが選ばれています。
3D仮想空間ウェブページ制作の具体化、今後の展開 昨年12月後半に契約を交わした後、キャンパス入り口から各建物へのアプローチ、当面必要な6学院それぞれの部屋数や会議室、イベントホールといった3D仮想空間の構成、各建物の内外の移動シーンやイベントごとに異なる展示の見せ方など、水越ディレクターらが描く「Tokyo Tech ANNEX 3D仮想空間ウェブページ」の全体像と詳細な希望について当社担当者と打合せ。本格的な制作作業は年明け後に始まりました。 2月中旬にβ版が完成。それについて同氏は、全体像としてはほぼイメージ通りと語り、個々の建物やキャンパス環境などの再現性を「雰囲気的にも本学の良いところをうまく表現してもらっている」と評価。併せて、細部の修正要望が示され、それを受けた詰めの作業が続きました。 前述の、Tokyo Tech ANNEX BangkokとNSTDAの共催により3月8日にオンラインで実施された第3回「Tokyo Tech ResearchShowcase」が、実質的に同3D仮想空間ウェブページのお披露目となりました。リサーチ・ショーケースのテーマは毎回、主催者同士で議論して決めており、今回はタイが現在国を挙げて取り組む経済戦略に沿って、「Agriculture and Livestock Industry(農業と畜産)」が設定されています。 今回リサーチ・ショーケースでは、参加者に同3D仮想空間ウェブページのURLを通知。参加者はバーチャルキャンパスの学内を散策しながら所定の会議室へ行き、ドアを開けるとZoomの会議に参加。また別の空間内には同会議や他の東工大に関連する資料を得られる仕組みが施されました。 水越ディレクターは、今後行われるリサーチ・ショーケースやジョイントワークショップなどのイベントで3D仮想空間ウェブページの活用を広げていく考えに言及。さらに、東工大への留学を紹介するイベントなどでもその雰囲気を分かってもらう有効なツールとして活用できるのでは、と期待を示します。
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執筆:池野隆 (Up&Coming '21 春の号掲載) |
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