Academy Users Report
アカデミーユーザー紹介/第33回
学校法人三友学園
専門学校岡山情報ビジネス学院
情報スペシャリスト学科/
情報システム学科

Okayama Information College

Society 5.0に対応する人材育成へ、人間性の育成を基軸に、資格取得と実務能力開発を目指す
Shade3Dによる3Dモデル作成に注目、Webベースの3DVR空間構築も視野

学校法人三友学園 専門学校岡山情報ビジネス学院
情報スペシャリスト学科/情報システム学科
URL https://www.oic-ok.ac.jp
所在地 岡山市北区
教育内容:(情報スペシャリスト学科)プログラミング、ネットワーク、セキュリティなど、(情報システム学科)システム開発、モバイルアプリ、およびコンピュータ制御

情報スペシャリスト学科、情報システム学科
学科長 伊藤宏一郎先生
「(自身がけん引する2つの)学科の中ではICT(情報通信技術)の活用にあたり、学生たちがより実践力を高めるための取り組みとして、『チーム開発』(のアプローチ)を多く取り入れています」

もともと地元岡山でシステムエンジニア(SE)として実績を積み、現在は専門学校岡山情報ビジネス学院において情報スペシャリスト学科および情報システム学科の双方で学科長を務める、伊藤宏一郎先生。そのような背景から、自ら「システム開発に携わる実際の現場では、チームワークが欠かせない」との確信を醸成。そこで、両学科の様々な授業にわたって、学生は4~5名から成るチームを組んで学習。併せて、チーム内で個々の学生がそれぞれに課される役割を明確化。各々が主体的に取り組むことで、チームとして対峙する共通の課題を学生自身が解決していく力を身に付けられるよう意図してきた、といいます。プログラムや、様々な最新技術は課題解決のための手段であり、本来の目的を明確にし、どうすれば達成できるのか、を考えるように指導してきた。そうしたプロセスを通じ、学生一人ひとりがしっかりと自分の力で考え、課題を解決し、自立した人生を切り開く、との方針が貫かれています。

伊藤先生はまた、前述の各学科で直接学生らを指導する傍ら、教務課長補佐として学院内の情報系を中心とする多様な学科を統括。当該学科のカリキュラム編成をはじめ、学生の募集や就職支援など学院の運営面にも広く関わってきています。

そのような中、2020年冬にフォーラムエイトの先進の各種VR関連ソリューションに触れ、自らが担当する2学科はもちろん、学内の様々な学科におけるその活用の可能性を実感。2021年初め、手始めとして当社の統合型3DCGソフトウェア「Shade3D」の導入を決定。2021年度の情報スペシャリスト学科3年生向け前期授業(4~7月)として、Shade3DとWebGLの利用をベースとする授業「VR開発」を実施。またその前段として春休み期間の2021年2~3月、情報スペシャリスト学科の新3年生と情報システム学科の新2年生を対象にShade3Dの利用体験を目的とする「特別講義」を開講。翌2022年2~3月にも、前年度と同様な構成で同講義を行っています。


岡山情報ビジネス学院 学校案内


専門領域とともに人間性教育に力

専門学校岡山情報ビジネス学院(OIC)は1985年、日本カバヤ・オハヨーホールディングス株式会社(本社岡山市)を核とするグループ企業の一つ、学校法人三友学園により設立。翌1986年に「私塾 岡山情報ビジネス学院」として開校し、同年に岡山県より専門学校として認可されたのを受け、現行名に改称しています。

OICは、先行き不透明な時代を生き抜くために、専門知識や技術だけではなく、それを活かすための「人間力」の両方を養うことで、卒業後、社会に居場所を持ち自立して人生を歩んでいける社会人へと成長することを目指しています。

開校以来、専門学校として“学生の幸せ”を第一に考え、教育と誠実に向き合ってきました。卒業生の総数は12,000名を超え、幅広い分野の最前線で活躍しており、多くの事業所様から高い評価をいただいています。同学院は現在、1)医療福祉事務学科、2)診療情報管理士学科、3)ホテル・ブライダル学科、4)経営アシスト学科、5)公務員学科、6)公務員速習学科、7)保育学科、8)情報スペシャリスト学科、9)情報システム学科、10)ゲームクリエイター学科、11)ゲームプログラマー学科、12)データマーケター学科、13)ネット・動画クリエイター学科、14)CGデザイン学科 ― の14学科、および留学生を対象とする15)国際ITシステム学科から構成。岡山駅に隣接する校舎(2006年完成)には、全学科合わせて約1,100名に及ぶ学生が在籍しています。


Shade3Dを採用した情報系2学科

冒頭でも触れたように、OICのカリキュラムにおけるShade3D採用を具体化してきた伊藤先生は、学院運営の側面から複数学科の支援に関わるとともに、学科長として2つの学科を主導しています。

その一つ「情報スペシャリスト学科」は、3年課程でIT(情報技術)の基礎からAI(人工知能)、VR、クラウドなどSociety 5.0を見据えた高度な専門技術を学習。そこでは単に知識のみならず実務能力を養う狙いから、1)基本情報技術者試験や応用情報技術者試験をはじめとする資格取得に加え、2)アプリケーションの開発に欠かせないフロントエンド、サーバサイド、インフラなどの技術を広く、深く学習、3)プロジェクト型学習(PBL)により実社会や学校内における業務上の課題に対し学生が課題解決方法を考え実践 ― という3つを柱にカリキュラムを構成しています。

一方、「情報システム学科」は2年課程の限られた期間で即戦力となる人材を養成するため、まずITの基礎を学習。その上で、1)システム開発や国家資格の取得を目指す「システム開発専攻」、2)自らのアイディアを形にするためモバイル系の言語でアプリを開発する「モバイルアプリ専攻」、3)実際に工場で動く機械やロボットを制御するためのプログラミングを学習する「コンピュータ制御専攻」 ― の3つの専攻に分かれ、それぞれに特化した専門知識の修得を目指します。

両学科に共通するのが、学生の主体性を活かした学びを実現することです。確かなIT技術に立脚し、自ら考える力を身に付けて実践する力を身に付けることで即戦力となるエンジニアを育成する狙い、といいます。

現在、情報スペシャリスト学科1年生は約50名、情報システム学科1年生は約80名の学生が在籍。それぞれ4名の常勤講師に加え、VRなど最先端の授業では随時非常勤の講師を招聘する体制が取られています。



当社のVRソリューションに注目、Shade3D利用の特別講義・授業の設置へ

2020年冬、一般社団法人全国専門学校教育研究会(全専研)の加盟校で催されたフォーラムエイトの講演を当時のOICの常務理事と教務課長が聴講。そこで、VRをゲーム的な要素としてではなく、職業教育や実習などの業務分野で活用している側面に注目し、そのような当社の各種VRソリューションを学院の授業に取り入れてはどうか、という話が伊藤先生にもたらされます。

伊藤先生は改めて、業務上で使用されるVRに新たな可能性を感じ、様々な製品ラインナップの中から検討。フロントエンド分野のカリキュラムとして学習しているJavaScriptを発展させ、JavaScriptのフレームワークbabylon.jsを用いて、ブラウザ上に3Dシーンを作成し、Shade3Dで作成した3Dモデルを動かす経験が出来るよう意図されました。

そのためにはまずShade3Dを体験してみようということで、春休み期間中の2021年2~3月、企業連携授業として、情報スペシャリスト学科の新3年生(約40名)と情報システム学科の新2年生(約60名)を対象とした「VR開発特別講義」(総期間は2週間)を実施。新型コロナ対策として、本来対面での授業を行う所を、フォーラムエイト協力のもと複数スタッフがリモートで講師を務め、学生はリモートで繋がった分散教室にて実習を行った。前半はVRの最新概況やShade3Dの操作方法などをレクチャーし、基本的なVRに対する動作を学んだ後、後半は「岡山の観光業を盛り上げる」というテーマで、コンセプトを発案し、自分たちの考えたアイデアをもとにShade3Dを使って3Dモデルを作成しました。その際、総勢約100名の学生は4~5名のチーム毎に3Dモデルの作成からプレゼンテーションまで行い、予選会を経て選考された代表チームの成果は全参加学生に公表されました。
VR開発特別講義では、Shade3Dを使ったモデルをWebGLで動作させる実習を行った

この特別講義を受け、2021年度の通常カリキュラムの中にVRの授業を取り入れることとし、情報スペシャリスト学科3年生(約40名)向け前期授業(4~7月)として「VR開発」を設置。講師のフォーラムエイト・スタッフと学生は皆、オンラインで参加する形が取られました。授業では最初の3カ月間にShade3Dの基本的な使い方やモデリングの方法、JavaScriptを用いたモデルの操作方法などの技術演習を実施。最後の1カ月間はチーム開発の手法により設定したテーマに沿った作品作りからプレゼンテーションまでを行いました。

これらの実績を背景に、「VRの体験を学生たちに引き続きさせたい」との思いがあり、2022年2~3月も前年度と同じような構成で特別講義を実施。情報スペシャリスト学科の新3年生(約50名)と情報システム学科の新2年生(約60名)が参加しています。

学生にとって初めて使うモデリングツールだったにもかかわらず、短期間のレクチャーを受けただけでスピード感や操作性の良さが窺われた、と伊藤先生はShade3Dの印象を述べます。



VRの可能性を視野、手段としての技術の活用へ

昨今、メタバースをはじめVRのエンターテインメント的な利用の側面が主に脚光を浴びる傾向が窺われるとしつつ、伊藤先生はその、担当学科がターゲットとする顧客の業務上の課題解決や新しい価値提供の手段としての可能性に言及します。

伊藤先生はもともと、フォーラムエイトの各種VRソリューションの中で、特に3DVRで構築された空間にアバターなどのコミュニケーションツールを用い、Webベースでバーチャルショールームや作業訓練、テレワークなど様々な適用が可能な「F8VPS」に注目。例えば、自身ら情報系学科で3DVRのプラットフォームを構築し、それをホテル・ブライダル学科の接客訓練など学院内の他学科に利用してもらうような形でコラボレーション。それにより情報系学生らの研究開発力の向上はもちろん、学内に幅広く相乗効果をもたらし得るのでは、との構想が描かれました。Shade3Dはいわば、バーチャルプラットフォームを作る際の基盤的なツールとして学生が早期に使えるようにしておくことが重要になる、との観点から導入された経緯があります。

「学生に対して日頃から言っているのは、手段としての技術をどう活かすかということです」

VRをはじめとする新しい技術が近年急速に発展・普及してくる中で、「その技術を使う目的は何か」「誰のために使うのか」を学生が意識し、利用者の目線に立って物事を考える力を養って欲しい。今回、Shade3Dを用いた授業の中で学生はアイディアを形にするプロセスを体験したことから、「それを見た顧客がどう感じるか」「これが顧客の課題解決に繋がっているか」をきちんと考え、それを実現する手段としていろいろな「引き出し」を持てるエンジニアに育てていきたい。その意味では、今回の授業や特別講義を通じ、学生たちの知識や問題解決への対応の幅は確かに広がってきているはず、と伊藤先生は述べます。

「(こうしたことを踏まえ)学生には好奇心を持って、これからの新しい技術に積極的に取り組んでいって欲しいと思います」

岡山情報ビジネス学院の先生方
執筆:池野隆
(Up&Coming '22 盛夏号掲載)



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