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さらに、同社の経営理念のキャッチフレーズを冠した持株会社「人・夢・技術グループ株式会社」の下には、国内6社・海外7社のグループ会社も有しています。 そのような同社において、大阪支社を拠点とする社会基盤事業本部第2設計保全事業部の第2道路部は4課より構成。今回はそのうち、大阪とその周辺地域を中心に各種道路の計画や設計、その説明会資料の作成などに取り組む第2課の皆さんにお話を伺いました。
15年ほど前のUC-win/Roadの 利用再開からVRが一気に身近に 石塚氏が初めてUC-win/Roadに触れたのは15年ほど前に遡ります。同部では当時、それ以前に導入した同ソフトとDSがあまり使われていない状況にあり、測量技術を持つ自身であればそれらを有効利用できるのでは、と独自にトライすることを着想。実際に触ってみると、感覚的に操作する中でVRが思いのほか容易に作成可能なことを実感。そうした折、道路計画に際してドライバーが前方の交差点に設置される信号を定められた距離から見通せる「視距」の確認をVRで出来ないか、というニーズに遭遇。UC-win/Roadを使い再現した、交差点や信号機を含む道路環境のVRをDSでシミュレーションし、課題の解決に至っています。 これを受け、技術提案書にVR適用を含めるケースも加わり、比較的シンプルなVRを同氏が自ら作成する機会が増大。それとともに、当初は単体だった交差点が複数になり、道路延長も次第に大規模化。発注者との情報共有だけでなく、地元説明会の資料としてなど活用分野も広がってきました。 その後、10年くらい前には新設道路の計画にあたり、発注者への説明や地元説明会用に大規模なVR作成業務を受注し、フォーラムエイトのサポートも得て対応。そのほか、日照なども考慮した標識の視認性検討、橋梁などの構造物や植樹帯を含む景観検討などVRの活用は多様な展開を見せていきます。 以前は難しかった「立体にして見せる」ということが手軽に出来たことで、VRが一気に身近になった、と石塚氏は述懐します。「その手軽さが後々の、数多く作ったVRに繋がったのではと思います」
近年の主要なUC-win/Road 活用例、体制強化にも力 関西圏の地方自治体で都市計画道路を整備。そのための設計が行われ、「施工前の地元説明会等において計画を3D VRで表現し、視点場を変えて伝えた方が分かりやすい」との要望が発注者からもたらされました。2021年7月、同社はその道路環境検討業務を受注。途中、VRの住宅モデルを詳細に作って欲しいという追加の依頼があり、それも反映した成果を2022年3月に納品。翌2022年度にも当該プロジェクトに関係する同様な業務を受託。今年度も秋頃に地元説明会が予定されており、機会が得られればVRを活用して対応していきたい、と交差点や構造物を含む道路の計画・設計を主に担当する同部の恩賀係長は説明します。 一連の道路環境検討資料の作成では石塚氏の指導の下、それまで標識の配置計画などに主に取り組んできた同部の濵村俊旗氏がUC-win/Roadの使用に初めて挑戦。当社とも協力しながら、まず地形データや道路データのほか、橋梁詳細設計業務の各図を基に延長約1㎞にわたる区間のVRデータを作成。地元の要望を受けた住宅モデルの作成に当たっては、実際に現地を訪れて交差点付近の対象となる複数家屋の概ねの高さを計測するなどし、住民目線で体感できるよう意図されました。 また当該プロジェクトでは、地元の要望などを受け、複数の交差点付近に遮光壁や遮音壁が設置されています。そのほか、取り付け道路の設置により既存の公園に及ぼす影響、植樹帯の有無による構造物の見え方の違いなどを事前に住民目線や俯瞰で体感してもらうため、それらのVRシミュレーションも可能な構成になっています。 もう一つ、2020年度には今後益々交通量の増大が見込まれる、高速道路の出入口を増設する計画の説明会用VRを作成しています。そこでは、プロジェクト自体の規模の大きさに加え、様々な要素が複雑に絡み合う特性から、現況および新設の道路、関係する構造物、車道および交差点の路面標示、周辺建物、料金所モデルなどをVRで表現。説明会では模型展示とともにVR走行動画を提示し、効果的に体感してもらえるよう工夫している、と辻澤氏は語ります。
UC-win/Roadのメリット、BIM/CIM対応で増すニーズ 「説明書を一つひとつ確認していたらきりがない。とりあえず触ってみると、求めるものが素直に返ってきます」。測量や道路に関する基本的な知識は要するものの、感覚的で使いやすく、表現しやすいため習得も早い。また、自由な視点で動画が取れるため、発注者からの細かな要望にも柔軟に応えられる、と石塚氏はUC-win/Roadを評価。しかも、点群データなども取り込め、そのスペック次第ではより臨場感のある(VR表現も可能。併せて、BIM/CIM対応になったことでそのニーズは今後格段に増えるのでは、と位置づけます。 同氏のサポートでUC-win/Roadの操作を担う濵村氏も、時に説明書で確認することはあるものの、概ね感覚的に触る中で習得できてきた、と振り返ります。 また、恩賀係長は発注者との協議の場などでUC-win/Roadの詳細かつリアルな表現への評価を実感。特に、自由に視点を変えて見られるそのメリットに注目します。 一方、3D CADソフトなどでBIM/CIM系の作業をすることが多いという辻澤氏。設計に特化した別のソフトでも3Dモデルや走行シミュレーションの作成が可能とは言え、精度などに制約もあり、説明資料として用いるにはUC-win/Roadで作成するVRの見せ方には及ばないと指摘。ただ、設計ソフトでも3Dモデルを作れ、発注者との構造確認などには使えることから、それをそのままUC-win/Roadに取り込み、そこで自由に編集するといった使い方が出来れば一層の作業効率向上に繋がるはず、と期待。その意味で、ソフトを使う自身らとソフト開発者が相互に協力してより良いものを創出していくというスタンスが重要になる、との見方を説きます。 現在、WebVRプラットフォームF8VPSで、メタバースに点群を直接読み込んで活用できる機能への対応なども進んでいることから、同社では今後、UC-win/Roadに加えて、よりコミュニケーションツールとしての機能が強化されたWebVRの活用も視野に入れているといいます。
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執筆:池野隆 (Up&Coming '23 盛夏号掲載) |
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