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東日本大震災(2011年)を経て再生可能エネルギーへの社会的な関心の高まりを背景に、冒頭で触れたFITが2012年度に運用を開始。これを契機とする太陽光発電の需要の高まりを受け、同社は再生可能エネルギーに関わる商社およびメーカーとしての機能を強化。ソーラーパネルを始め、発電モニタリングや無線伝送、発電制御、蓄電池などに関する各種システム、各種架台(野立て架台、陸屋根用架台およびソーラーカーポート)などの自社商材を市場に提供しています。 創業以降、市場ニーズにしなやかに対応する事業展開と組織再編を重ねてきた同社は現在、本社・商品技術センター(駒ケ根市)および東京本社を中心に大阪、名古屋および福岡の3営業所を設置。それら拠点に約240人の社員を配置しています(数字は2024年6月現在)。
各種自社製架台を製品化、「太陽電池支持物の構造計算」も開発 今回お話を伺った竹山部長は、ゼネコンおよび特許事務所を経て2013に同社へ入社。同社がメガソーラー向けに他社製架台を扱う中、より高機能・低コストな自社製架台の開発に動き出したのを受け、自身の役割も当初の架台営業支援から次第にその開発へと機軸をシフト。現在は太陽光発電システムを構成する各種商品の選定・開発から顧客サポートまでカバーするマーケティング統括部において、架台の開発・設計・施工支援などを主に担う建設開発部をけん引。これまでに、1)FIT案件のメガソーラー対応架台「NEH-TM2」、2)自家消費案件の陸屋根用架台「UNIFIX」、3)自家消費案件用にNEH-TM2を改良し両面発電モジュールを屋根として用いるソーラーカーポート「TM2 Dulight」― それぞれの開発・製品化に繋げています。 自社製架台の構造設計を開始した当時、多くの他社と同様に同社も2次元フレーム解析により架台を設計。次第に3次元フレーム解析による詳細な設計へのニーズが高まってきたこともあり、以前からフレーム解析ソフトの導入を通じ知己を得ていた当社に相談。2015年8月にEngineer’s Studio®(ES)を利用する、3次元フレーム解析による独自の自動架台設計ソフト「太陽電池支持物の構造計算」の制作(フォーラムエイトの受託開発)に着手。そこでは、ESをソルバーとして使い、対話型インターフェースにより必要箇所のみ入力していけば計算できるプリ・ポストを作成。同様に「杭基礎の設計計算」も利用することで、地盤と上物構造の一体解析に対応。また、大きな変形が生じた時の撓み量の算出に当たっては2つの撓みの考え方(接線法と平行線法)を独自に考案するなど工夫。同年に入社した高橋毅氏(現・建設開発部構造設計課主任技師)は当初、架台の構造設計や基礎設計(杭基礎やコンクリート基礎)、経済産業省に提出する設計資料の作成などに従事し、併せて、同社側のソフト開発担当者として打ち合わせや作動検証を重ねるなど、新ソフトの開発・改良プロセスにも大きく関与。2016年9月に初版が納品された後も計算結果の妥当性の検証などを重ね、「太陽電池支持物の構造計算」は同年末頃から実案件に適用されてきています。 特定代理店制度の構想と「ソーラーカーポートの設計計算システム」開発 「太陽電池支持物の構造計算」は以来、同社がメガソーラー向け野立て架台の設計でフルに利用しつつ、ニーズに応じて継続的な高性能化を図る中で一層進化。
また、同社が2020年8月に着手したソーラーカーポート「TM2 Dulight」の開発、2021年2月のTM2 Dulightリリース後の実案件における設計、およびその後継機種の開発でも同ソフトが活用されてきています。 一方、同社はTM2 Dulightの販売拡大策として、自社と同レベルで架台設計を行える特定代理店制度の運用を構想。これを受けて2021年に同ソフトの機能をTM2 Dulight用に限定する「ソーラーカーポートの設計計算システム」もフォーラムエイトが受託開発しています。 自社だけですべて行おうとすると、どうしてもその処理能力にボトルネックのところが生じるのは避けられない。それなら、地盤を含む架台設計の豊富な知見と、その知見を活かしたソフトを供給して、教える側に回れば良いのではないか。とは言え、「太陽電池支持物の構造計算」には同社の野立て架台に関するフルスペックのノウハウが凝縮されていることから、高機能であるが故に煩雑さがあり対象架台に特化した機能のソフト開発が図られた、と竹山部長は解説します。 同社は特定代理店を「同社のソーラーカーポートを商材として取り扱い、同社の指導の下で販売・設計・施工を行うパートナー企業」と定義。対象は「自家消費型太陽光発電EPC事業を完結できる特定建設業者」で、競争力のあるソーラーカーポートを自社製品のように扱え、同社から営業・技術両面のサポートも得られるというもの。また「ソーラーカーポートの設計計算システム」は、同社の設計研修を終えた特定代理店に対してフォーラムエイトから直接販売される、と位置づけています。さらに同社は、既存の住宅向け販売店・施工店専用の製品情報サイトに倣い、特定代理店が製品に関する資料や取扱説明書などをダウンロードできる専用ページの構築も計画中です。同制度は2022年にスタート。これまでに7社が特定代理店契約を完了、2社が契約手続き中といい、目標は30社(竹山部長)と描きます。
基礎を含め3次元で架台を自動設計できるソフトへの評価 「自分たちでフレームを一から組み立ててとなると、すごく時間がかかるのですが、直感的に数値を入れ替えて解析し、すぐに解答を得られるのは助かります」。社内向け架台の構造設計や基礎設計などとともに、特定代理店向け技術サポートも担う高橋氏は、自身が深く関わる両自動架台設計ソフトについてメリットをこう述べます。 また、竹山部長は、「太陽電池支持物の構造計算」の開発過程で、経産省の担当者から指摘がある都度、ソフトのカスタマイズを重ねつつ対応。結果的に「よく出来ている」との評価に繋がった。 「小さな案件でも、ぎりぎりの設計でコストダウンに繋げるには3次元で本当のところまで突き詰めないと、その設計で安全かどうかを表現できていないということが改めて分かりました」、と言及します。 架台ビジネスをやるからには3次元で計算できなければいけない、というところから自動架台設計ソフトの開発をスタート。実際にソフトを作ってみると、ゴルフ場のような起伏に富んだところでコストを最小限に抑えようとすれば、架台をいくつも設計しなければいけないことを実感。地盤や傾斜など設計条件を細かく設定して、例えば40パターンぐらいの設計は標準で、100パターンというケースもある。そのようなニーズに対応するには設計をスピーディにこなし、やり直しも柔軟に出来る自動設計は不可欠。しかもそれを「3次元設計へのニーズが湧き上がってくる」2018年頃までに、基礎まで含めてぎりぎり間に合った。一方、画一的な設計だと思われがちなソーラーカーポートでは、自動で架台を設計できることのメリットが活かされるのか疑問であったが、実際には多様なニーズがあり、むしろ特殊設計の方が多いのが実情。例えば、ベースとなる架台を設計した後で柱間隔や屋根高さ等の様々な変更を求められるケースも少なくない。更には、斜め駐車場への適用を要求されるケースも出てきている。と竹山部長は一連の取り組みの意義を説きます。
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執筆:池野隆 (Up&Coming '25 春の号掲載) |
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