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戦後、ヨーロッパから導入されたPC橋は、我が国において道路橋や鉄道橋にて多用され、現在では実績と技術力において世界をリードしている。なかでも、片持ち張出し架設(cantilever system)は、高度なテクノロジーを必要とする一方で、華やかな橋梁架設技術であり、ここに紹介したい。 先ずは、徳之山八徳橋(岐阜県)の事例をみて貰いたい。[Photo1]が張出し架設工法による建設中の画像で、移動作業車ワーゲン(ドイツ語由来)が橋脚上部から左右にバランスを取りながら橋桁を伸ばしている。やがて支間中央にて橋桁が閉合し、橋面工を経て完成となる[Photo2]。このため、’やじろべえ工法’の愛称で呼ばれ、期間限定のインスタ映えスポットともなる。
個人的には、’近代橋の空中戦工法’と呼んでいる。ただし、その設計と施工に際しては、高度な技術力と経験値が要求されるが、日本のエキスパートたちはアジアを中心に海外の橋梁工事を主導している。 ここに紹介した2橋の橋梁形式は異なりともに、今世紀にて開花した最先端橋梁工学の“申し子”でもあることを付記したい。約2年に渡る空中戦法を制し竣工した花形橋梁は、既に1年365日24時間怠りなく、粛々とその役目を果たしている。これから100年に渡る供用がミッションとして課せられている。
【画像提供】 オリエンタル白石 http://www.orsc.co.jp/res/con13.html |
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先ずは、[Photo1]の‘マス目’と[Photo2]の‘埋立’をご覧ください。これは何でしょうか、答えは後ほどにて。 海上に建設される巨大空港は、土木工学の既往技術と先端技術が結集されているが、直上から大きく俯瞰するとその威容を満喫できる。ここでは、高分解能衛星(IKONOS/GeoEye-1衛星)によって撮影された東京国際空港(Tokyo International Airport、通称:羽田空港)を紹介したい。[Photo3]は、羽田空港の全容を撮影したもので、当時稼働中のA、B、C滑走路、および建設中のD滑走路を確認されたい(2009年撮影)。
このD滑走路は、桟橋部と埋立部から構成されるハイブリッド構造が採用され、計画時より大きな注目を集めた。これまでの海上空港は埋立方式が主流であったが、D滑走路の場合、多摩川の流下を妨げないように桟橋構造が併用された。折しも工事最盛期であるため、連絡橋も含めてそのハイブリッド構造の特徴をはっきりと識別することができる。 さて、本文冒頭の問いの答えは「施工中の桟橋部と埋立部」である。上空681kmの太陽同期準極軌道から撮影された高分解能衛星画像から、整然と同時進行する海上工事の活気が伝わってくる。作業船や重機が動き出すのではないかと錯覚するほど、そのダイナミズムを醸し出す衛星画像である。 さて、2010年の供用開始から数年経過した頃、家族旅行の帰路のことであった。A滑走路にて着陸する際、右側席からたまたまD滑走路を見つけ、あわててシャッターを切った。そして、滑走路端部のジャケット構造(桟橋部)がはっきりと見え、“滑走路面が海面から浮き上がっている”のが目視できたのだ[Photo4]。“これがあの桟橋構造なのだ!”と、ひとり勝手に感激涙した次第である。
【画像提供】 日本スペースイメージング https://www.jsicorp.jp/gallery.html |
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満天の星と邂逅する橋たちに、ショパンのノクターン(夜想曲)を聞かせたい。1年365日毎日24時間稼働する土木施設への返礼でもある。 ここに紹介する選りすぐりの3橋([Photo1] 秩父ハープ橋、[Photo2]外津橋、[Photo3]生月大橋)は社会インフラとして貢献する一方、地域の道標(ランドマーク)として鎮座する。 これはまた、星グル写真なるカメラテクニックが、100年の供用を使命とする橋梁たちの存在感を醸し出しているとも言える。あって当たり前のミッションをこなす橋たちには、感謝の意を表したい。 さて、Episode7では言葉少なくして、太陽系第3惑星の天体運動と一体になった橋梁の叙事詩を堪能あれ。写真家お二人のそれぞれの感性とテクニックから撮られた写真“星降る橋”たちの一時の安らぎをご覧下さい。 ☆追伸:
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揚水式発電所(pumping-up hydraulic power generation)の原理はシンプルで、水の位置エネルギーを利用した蓄電施設である。揚水式発電の目的は、「深夜の余剰電力を使って上池に揚水して、日中の需要ピーク時に発電し、負荷調整の効率化を図る」もので、我が国では80年以上の歴史がある。例えば、茹だるような暑さの盛夏をイメージして貰いたい。 全国どの電力会社もピーク時の安定供給に躍起となるが、このような時、電力の平準化として効果を発揮する。 ここに紹介する京極発電所(北海道電力)は、満を持して建造された最新の純揚水式発電所である(平成26年度土木学会技術賞)。揚水式発電所の3つの画像(高地より順に、[Photo1] 上部調整池、[Photo2] 地下発電所、[Photo3] 下部調整池)を見て頂きたい。この3施設は水管にて連結され、3つの[Photo]がちょうど発電の順序にもなっている。 一方、余剰電力による夜間の揚水はこの逆となる(下部調整池から上部調整池に汲み上げ、位置エネルギーを貯める)。因みに、余剰電力による揚水⇒需要時の発電による効率は70%程度と言われている。整理すると[Photo4]にて、全体像というか仕組みを理解する事ができるのでは。
【資料提供】 北海道電力 http://www.hepco.co.jp/energy/water_power/kyogoku_ps.html |
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(Up&Coming '20 秋の号掲載) |
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