コロナ禍の下でのオリンピック東京大会に続いて北京冬季大会が閉幕した。と思ったら、ロシアがパラリンピック冬季大会の開幕前に、ウクライナへの軍事侵攻を開始した。
1994年ノルウェーのリレハンメル冬季大会以降、オリンピックの年には国連総会で常に「オリンピック休戦」が決議されている。「休戦」の期間はオリンピック開幕の7日前からパラリンピック閉幕の7日後までとされ、今回の北京大会でも同様の期間で提案され、ロシアも含む満場一致で決議された。そこでIOC(国際オリンピック委員会)とIPC(国際パラリンピック委員会)は、ロシアの「五輪休戦協定違反」を非難する声明を発表した。
とはいえ、IOCの側にも少々首を傾げたくなる事情が存在しているのだ。それは、競技の種目数が大会ごとに増加していることだ。
競技種目数の増加だけなら、オリンピック肥大化の問題にはなっても、「休戦協定」とは無関係と言える。が、増加した種目の種類の性質が少々問題なのだ。
ここで注意したいのは、団体種目(団体競技、団体スポーツ)は、チームプレイとはまったく異なるスポーツだということである。
チームプレイはチームの何人かが同時に競技の場に現れ、互いに影響を及ぼし合って相手チームと闘うスポーツのことで、冬季五輪では、カーリングやスケートのパシュート、それにアイスホッケーなど、夏季五輪ではサッカー、バスケットボールなどの球技や、バトンのパスワークが伴う陸上競技のリレーなどがチームプレイと言える。
一方、団体スポーツは、一人ひとりの選手が個人競技と同様の試技を別々に行い、その成績(タイムや距離)を足し算した合計の成績で争う競技で、北京で新種目となったものやフィギュアスケートの団体はすべてチームプレイではなく団体種目。夏季五輪では体操団体や卓球団体などが、団体種目と言える。
団体種目の場合も選手同士が励まし合ったり応援し合ったりして一つのチームとしてまとまるため、チームプレイと混同される場合が少なくない。とりわけ日本の体育教育では体育祭の入場行進や組体操のように揃って行う行為が多く、運動部の合宿でも全員揃っての散歩やランニングもあり、団体行動がチームプレイと混同されるケースも少なくない。
が、そもそもチームプレイとは各選手が異なる動きを行うことによって一つのチームになることで、団体行動や団体種目は各選手が同じ(ような)動きをすることでまとまること(スポーツ)と言える。
そこで、オリンピックで団体種目が増えたことだが、IOCは「男女平等」を推進する種目として男女混合団体の種目を増やしているようだ。が、「男女平等」なら別に「混合団体」にしなくても男女に同じ種目を取り入れればそれでいいはずで、特に「混合団体」にする必要はないはずだ。しかも「団体」にすると、アスリート個人のスポーツの技術の優劣や見事さよりも、日本が勝った……中国が勝った……と、どの国が勝ったかという結果ばかりに興味が移ってしまう可能性が高くなる。
オリンピックの憲法と言える「オリンピック憲章」の第1条には、オリンピックは《選手間の競争であり国家間の競争ではない》と明記されている。が、団体戦が増やされていると言うことは、IOCが《国家間の競争》に目が向くよう仕向けているとも言える。
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