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大阪大学大学院准教授 福田 知弘 | |||||||||
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女木島女木島は、高松市の沖合い4kmにある島。フェリー「めおん」に乗って20分。女木港に近づくと、「オーテ」で囲まれた集落が目に入る。オーテは冬の強い潮風から家を守るために築かれた石垣。 女木島は、釣りバカ日誌の第1回ロケ地、そして、女木島が桃太郎鬼ヶ島伝説の島と呼ばれるようになった大洞窟が有名。鬼は、洞窟の中に限らず、島のあちこちにいるゾ【図2】。2010年に開催された瀬戸芸(第1回)では、人口200人の女木島に約10万人が訪れ、その後も島を訪れる若者や移住希望者が増えているそうだ。 旅クラブ一行は、女木島で一泊。宿は龍宮。大将の川井さんは、女木島の観光振興にご尽力されている。翌朝、川井さんとアートめぐり【図3】。丁度、女木島の住民さんが天ぷらバザーを企画されていた。休校中の小学校でおばさん達が揚げた天ぷらを、おじさん達がバザー会場へ運んでくる【図4】。女木島特産の南京豆の揚げたて天ぷらは最高! さあ、次はフェリーに乗って男木島へ!とフェリーの到着を待っていたら、女木島に到着したフェリーからお笑いタレントが降りてきた。テレビの取材だそう。サプライズな人めぐりツアーはまだまだ続きそう。
男木島男木島は、女木島の隣に位置する。男木島灯台は総御影石造りであり、土木学会で選奨土木遺産に登録されている。島は、坂道や石段が多く階段状に集落が発達している【図5】。 細い坂道を上り休校中の男木小中学校へ。学校内部には数々のアート。中でも、肉体塾と題された教室には無数に張り巡らされたヒモの中央に卓球台が【図6】。こんな卓球は生まれてこのかた初めて。学校を出ると、路地沿いのアートやカフェを覗きながら、オンバ・ファクトリー&カフェへ【図7】。オンバ・ファクトリー&カフェでは、おしゃれなオンバを作り地域に提供されているとのこと。オンバとは、おばあちゃんが買い物や日常生活で使う手押し車【図8】。「おばあちゃんのベンツ」とかいわれるものかな。カフェからは眼下に集落の家並み、そして瀬戸内海が。心地よいひと時。
くねくねと折れ曲がる細い路地、石積みの風景、店の入り口から眼下に海を眺める風景、時折現れるネコたち、、、男木島を歩くと、なんだかサントリーニ島のようにも思えてきた。 さあ、次はフェリーに乗って高松経由で小豆島へ!と船着き場へ行ったが、フェリーが来ない。どうやら、時刻表を見間違えていたようだ。これは、ちょっとしたハプニング。小豆島に辿りつけるのか?メンバーで模索した結果、水上タクシーで小豆島へ行くことに。 どんな水上タクシーがやってくるのだろう?実は、ひなびた漁船をイメージしていたが、やってきたのはカッコいいクルーザー。風もなく、当初考えていた高松港経由の航路よりも短時間で、気持ち良い40分ほどのクルージング【図9】。おススメです!
小豆島20数年ぶりに訪問した小豆島(しょうどしま)は、その素敵な変化にただただ感嘆。小豆島では、醤油ソムリエールのケリーちゃんこと黒島さんに案内して頂いた。題して、小豆島人めぐりツアー。 馬木地区。真光寺下の空き地では、ウマキキャンプの上棟式がはじまっていた【図10】。企画・設計は、dot architectsの皆さん。夏に完成予定の建物には、小豆島の住人も来島者も自由に使用することができるキッチンやスタジオなどがはいるそう。ここで、ウマキキャンプに参加されている構造家・満田さんと偶然の再会。 醤の郷(ひしおのさと)。文字通り、醤油を作る工場や蔵が点在する地区【図11】。日本三大そうめんのひとつ、小豆島そうめんを食した後、ヤマロク醤油さんの醤油蔵を見学【図12】。そこで、五代目・山本さんに熱い話を伺った。蔵の中には、直径2m30cm、高さ2mほどの木桶が数多く置かれ、蔵の中の樽・壁・柱が菌で何層にも覆われている。醤油をはじめとする美味しい発酵調味料を造る微生物たちは、タンクにはほとんどおらず、このような木桶には多く住みつくことができるそうだ。つまり「木桶は最高の醸造容器」。しかし、木桶による醸造は既にかなり少なくなっており、さらに木桶を作れる桶屋さんは国内で一社のみ。本物の醤油を未来の世代に残すべく、山本さんは精力的に活動されている。
立花さん経営のデリカフェ・こまめ食堂でしぼりたて八朔ジュースを頂く【図13】。そして、棚田を下りて台湾・王文志さん作「小豆島の光」へ【図14】。中に入ると、竹で編まれた空間の頂部は、ローマ・パンテオンのようにぽっこり穴が開いている。思い思いに寝転がって、天空から光が射し込む様子を楽しんだ。 いよいよ島を離れる。小豆島・坂手港からフェリーで神戸港へ。夕焼けが本当に綺麗だ【図15】。♪瀬戸は日暮れて 夕波小波~と、思わず口ずさんでしまう。夕日はそのうち水平線へ沈み、フェリーは明石海峡大橋をくぐって神戸港へ向かう。船内は瀬戸芸の観光客・関係者で一杯。あちこちでガヤガヤと反省会。神戸港到着間近のアナウンスが流れたので、甲板に出てみると、六甲の山並みを背景として100万都市のビル群が迫ってくる。船上から港町を眺めると、ああ、関西に帰ってきたな~、という気分。ただ、醤油の感動が消えることはなく、お豆腐を購入して帰宅。冷奴に鶴醤で頂いた。
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(Up&Coming '13 夏の号掲載) |
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