壺屋やむちん通り
やちむんとは焼き物のこと。1682年、琉球王府が、それまで美里村(現・沖縄市)の知花焼、首里の宝口窯、那覇の湧田窯にあった3ヶ所の窯場を那覇市壺屋に統合したことがはじまりである。
「南窯」という名前のカフェを抜けて野外に出ると本物の南ヌ窯(ふぇーぬかま)に出た【図5】。この窯は、主に、酒甕、水甕、厨子などを焼く、荒焼専用の登り窯。壺屋に現存する唯一のもので、琉球王府が与えたものだそう。窯は長さ20m、幅3mもあり、国際通りからも近い街なかの施設としては存在感がある。窯を覆う赤瓦の屋根は耐火性を考慮して琉球石灰岩の柱で支えてある。窯周辺はガジュマルが群生しており、その足下では毛細血管のような根っこと焼き物が絡み合っており、神聖な雰囲気であった【図6】。
やちむん通りのメインストリートは琉球石灰岩の石畳で景観整備されているがこの舗装が素晴らしく自然である。景観整備と聞くと、これ見よがしに頑張ってしまった残念な事例が少なくないが、やちむん通りに華やかさはない。車道、路肩、歩道は石灰岩の形で意匠が異なっており見分けがつく。住民の生活が感じられる街路としても、来訪者が求める沖縄らしい街路としても成立している。このインフラに面して、昔ながらの焼き物の店、新たなアトリエギャラリー、そして窯元が軒を並べている【図7】。
焼き物は、抱瓶、厨子、シーサーなど、沖縄らしい独特の姿形を眺めるだけでも楽しい。抱瓶とは、沖縄地方で用いられる携帯用の酒瓶であり、腰につけやすいように胴の横断面が三日月形をしている。焼き物に描かれるデザインは、伝統的な柄、水玉や唐草模様が中心であるが、伝統的な表現を守ったものもあれば、現代風にアレンジしたもの、かわいさを追求したもののある。扱う焼き物は、陶器だけでなく、琉球ガラスもある。
メインストリートから一歩入れば、古い石積みやツタが続く路地(すーじぐゎー)にも出会える。こちらは、より本物の生活空間である。
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【図7】壺屋やむちん通り |
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