深圳へ
CSAJ(一社 コンピュータソフトウェア協会)アジアビジネス研究会の視察ツアーで深圳を訪問した。香港国際空港からバスに乗り込み深圳へ向かう【図1】。道中、スーツケース共々バスを降りて入国審査を受けてから中国へ入る。車線は左側通行から右側通行へ変わり、使用する貨幣も変わる。
深圳に着くと2本の尖塔が特徴的な信興広場が見えてくる【図2】。このビルの高さは381mであり、1996年の完成当時、中国で最も高い超高層ビルだったが、2019年には16番目となった。15年ほど前、深圳に訪問した際は懐かしい風景にまだ出会えたが【図3】、今回はどうか。
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3 15年ほど前の深圳で見かけた風景 |
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1 香港汲水門大橋より香港島方面 |
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2 信興広場(中央:2本の尖塔があるビル) |
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小さな漁村からイノベーション都市へ
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深圳市は1979年に誕生した。中国が改革開放政策に転換し、他都市に先駆けて経済特区に指定された町。小さな漁村から世界の工場へ、さらに、イノベーション(中国語:創新)都市へと変容しつつある。史上最速で発展した都市といわれる理由は例えば、
- 常住人口は、1979年時点で31万人だったが、2018年には1300万人を超えている。40年足らずで、東京都のような大都市になった。
- GDPは、1979年時点で1億9500万元だったが、2018年には2兆4200億元を超えた。この年、隣接する国際金融都市・香港のGDPを初めて抜いた。
イノベーション都市としては、
- 代表的な企業は、中国平安保険、招商銀行、万科(Vanke)、中興通訊(ZTE)、華為技術(ファーウェイ)、騰訊(テンセント)、比亜迪(BYD)、深圳邁瑞生物医療電子(マインドレイ)、DJIなど。近年、ハイテク、IT、イノベーションなどをキーワードに、ハイテクパーク、ベンチャー・スタットアップが多数新設されている。
- 今回の視察とは関係ないが、昨夏、ハルビン工業大学・深圳校の教員・学生約20名が大阪にやってきて国際デザインワークショップを10日間開催した。中国の最北端・黒龍省の省都・ハルビンに創設されたハルビン工業大学であるが、近年では、青島に近い威海市(山東半島)、そして深圳にそれぞれ、2つ目、3つ目となるキャンパスを整備している。深圳キャンパスには、中国トップクラスの清華大学、北京大学、ハルビン工業大学の3大学が隣同士でキャンパスを構えており、優秀な若者が深圳に集まってくる。
深圳へは、最先端のゲーム企業【図4】、ロボット企業、レーザー企業【図5】などを訪問した。いずれの企業においても従業員の年齢層が若いこと、快適なオフィス空間づくりを心がけていることは、印象的であった。それでは、ロボット企業を紹介しよう。 |
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4 G-bits |
5 Han’s Laser |
ロボット企業
UBTECHは、深圳市南山区の南山智園に本社を構えるロボット企業である。従業員は1600名を数えるが、そのうち技術者は1000名(但し、工場、子会社は含んでいない)。平均年齢は30歳手前と若く、トップレベルのロボット・AI技術を有している。2008年に創業者がサーボモーターの開発を始め、2012年にUBTECHを創業した。2016年の春節(中国の正月)には、540台のロボットを使ったイベントを成功させて一躍脚光を浴びることになった。
訪問したUBTECH本社では、様々なロボットのデモを視察した。まず、車輪付きのロボット「Cruzr」が入り口で我々を出迎えてくれた【図6】。キャタピラ付きのロボット「ATRIS」は危険な場所でのパトロールを想定している。「Alpha Mini」は悟空の愛称で親しまれるロボットで絵本を読んでいた【図7】。2019年4月の新作・アイアンマンは、ディズニーとのコラボで開発した。
UBTECHが成長する強みは、ロボットの核心技術であるサーボモーターを当初から研究開発していること。現在では、人工知能やモーションコントロールのためのアルゴリズムなどソフトウェアも研究開発している。
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6 Cruzr |
7 Alpha Mini |
灯光秀
深圳には個性的なフォルムのビルが建ち並ぶ【図8】。新しい地下鉄の入り口の上部は緑化されており、都市景観への配慮が窺える【図9】。夜になると、メディアファサードは有名である。メディアファサードという言葉について、メディアは情報を伝達する媒体を、ファサードは建築物の正面(立面)部分を、それぞれ指す。つまりメディアファサードは、建物の立面(壁やガラス)にLEDなどの光源を設置して、デジタル技術により映像を動的に表示する照明演出といえる。
建物の照明演出は、直接投光照明方式(対象となるファサードの外側から投光。ライトアップなど)、自発光照明方式(建物自身に点状・線状の発光体を設置。イルミネーションなど)、透過光照明方式(屋内照明を外観上も美しく見せる)などの方式により取り組まれてきたが、光源(照明器具)は長らく単色であり、さらに、光源同士がネットワークで接続された事例は少なかった。
LEDはフルカラーの表示が可能であり、光の強さや色を変化させることで動きを表現することができる。それぞれのLED光源はネットワーク化もできる。この技術を使えば、ひとつのビルのファサードの一部や全体をLEDディスプレイ化させて、映像を表現することができる。広告映像を流せば、デジタルサイネージ(電子看板)になる。例えば、深圳2番目の超高層ビル・KK100(高さ441m)はシンボリックな青いメディアファサードとなっており、遠くからもよく見える。 |
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9 地下鉄の入り口 |
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深圳では、灯光秀と呼ばれる、都市スケールでのメディアファサードも出現している。いくつかの地区で実現されているが、例えば、深圳都心部の市民中心広場とそれを囲むビル群が、一体的にメディアファサード化されている。規模は、およそ東西1km×南北2kmという巨大さ【図10】。先の尖った深圳最高峰(中国2位)の平安国際金融中心もこの地区に含まれており、高さ598m(あべのハルカスの2倍)でメディアファサード化されている【図11】。
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10 市民中心広場 |
11 平安国際金融中心 |
訪問時、灯光秀のイベントは、予定時間になっても始まらず、空振り気味であった。市民も大勢集まっており、残念そうであった。一方、空間スケールの大きさを体感できたことは収穫である。季節ごとにコンテンツを変えながら、週末を中心に実施されているそうである。
101%×365日×N年×人口が生み出すエネルギー
中国に行く時の最近の心配はと言えば、キャッシュレス化のスピードである。訪問当時、我々外国人はWeChatペイやアリペイは使えなかったから、お店でサービスを受ける前に、その店での支払い方法をまず確認しておく必要があった。今回、キャッシュはまだ使えた印象であった。
学生などの若い方々をエンカレッジするために「毎日100%の力で取り組むのではなく、101%の力で取り組むことを考えよう。101%と99%では一日の差はわずか0.02だが、1年が終わると(101/100*365日と、99/10*365日)「37.8:0.03」と大きな差となる。N年ともなると、非常に大きな差となってくる。」と声をかけたりする。思えば、深圳に集まってくる若者の多くは、101%の力で取り組もうとするタイプではないか。このような人々が集まってくるだけで、間違いなく巨大なエネルギーとなる。そのような深圳の魅力を体感した旅となった。
【参考文献】
[1] 景観材料推進協議会: 景観照明 -景観に配慮した照明の使い方-,1997.
[2] Media Façade Limited: Shenzhen media facade project https://youtu.be/b1n-aFwkGqc (2019年12月4日参照)
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3Dデジタルシティ・深圳 by UC-win/Road
「深圳」の3Dデジタルシティ・モデリングにチャレンジ |
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今回は、中華人民共和国広東省南部の経済特区、深圳市を作成しました。中国「一線都市」の中でも、北京市、上海市、広州市と共に4大都市と称されるだけに、そのスケール感を表現すべく、市民中心広場を中央にして、市民市役所、平安国際金融中心ビル(超高層ビル)、展示貿易センターなど、周辺のビル群も含めた街なみを再現しました。市民中心広場の階段やエスカレーターは、パラメトリックモデルで作成し、広場を行き交う人々は歩行者ネットワークで表現しています。有名な夜間のメディアファサードは、ビデオウォール機能により、再現しています。 |
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GinTian Roadから見た平安国際金融中心などのビル群 |
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パラメトリックモデルで作成した、階段とエスカレーター |
ビデオウォールでメディアファサードを表現。 画像は360度レンダリング機能を使用し作成 |
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CGレンダリングサービス |
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UC-win/Road CGサービス」では、UC-win/Roadデータを3D-CGモデルに変換して作成した高精細なCG画像ファイルを提供します。今回の3Dデジタルシティのレンダリングでは「Shade3D」を使用しました。深圳市役所。Ver.20から対応したPBRマテりアルを使用することにより、物理法則に基づいた計算で高品質な画像を生成しています。
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