Vol.17
UC-1 エンジニア・
スイート
発表セミナー |
IT活用による建設産業の成長戦略を追求する「建設ITジャーナリスト」家入 龍太 |
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建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナー、有償セミナーを体験レポート |
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建設ITジャーナリスト家入龍太氏が参加するFORUM8体験セミナーのレポート。新製品をはじめ、各種UC-1技術セミナーについてご紹介します。製品概要・特長、体験内容、事例・活用例、イエイリコメントと提案、製品の今後の展望などをお届けする予定です。
【プロフィール】
BIMや3次元CAD、情報化施工などの導入により、生産性向上、地球環境保全、国際化といった建設業が抱える経営課題を解決するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。日経BP社の建設サイト「ケンプラッツ」で「イエイリ建設IT戦略」を連載中。「年中無休・24時間受付」をモットーに建設・IT・経営に関する記事の執筆や講演、コンサルティングなどを行っている。
公式ブログはhttp://ieiri-lab.jp |
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●はじめに
建設ITジャーナリストの家入龍太です。
以前のパソコンソフトは、橋脚の設計やラーメン構造の応力計算など、特定の業務や目的のために開発された独立した製品でした。ユーザーはそのソフトを使って設計や解析を行った結果を図面や設計計算書などの紙の成果品にまとめるという使い方が主流でした。
最近は業務のペーパーレス化やデータ共有による業務の進め方が増えてきました。建設業界でもBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)やCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の導入が進みつつあり、図面や計算結果リストなどの紙情報を介すことなく、設計データや解析結果などを電子データのままクラウドサービスで共有したり、ソフトからソフトへと受け継いだりしながら、業務を進めていくスタイルが増えています。
こうしたパソコンソフトの使い方の変化により、ソフトウエアも単体の製品を個別に売るのではなく、同じ分野で使われる複数のソフトウエアを1
つのパッケージにまとめて「スイート製品」として発売するソフトベンダーが増えています。
「スイート」とは甘い(Sweet)という意味ではなく、ホテルのスイート(Suite)ルームのように、「ひとまとまりになっている」という意味です。つまり、1
つの分野に関する複数のソフトやサービスをパッケージにまとめた製品を表します。
フォーラムエイトも例外ではありません。今年4 月から「UC-1 エンジニア・スイート」という製品を今年4月から順次、発売しています。
仮設土工スイート(Advanced/Senior/Ultimate) |
4 月リリース |
建築プラントスイート(Advanced) |
4 月リリース |
構造解析上部工スイート(Advanced/Ultimate) |
5 月リリース |
下部工基礎スイート(Advanced/Senior/Ultimate) |
5 月リリース |
水工スイート(Advanced/Senior/Ultimate) |
6 月リリース |
港湾スイート(Advanced) |
7 月リリース予定 |
CALS/CAD スイート(Advanced/Ultimate |
7 月リリース予定 |
SaaS スイート(Advanced) |
7 月リリース予定 |
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▲ 4月から順次、発売された8 カテゴリーのスイート製品 |
●製品概要・特長
フォーラムエイトは、ウィンドウズが発売される前のDOS 時代から「橋台の設計」、「擁壁の設計」、「BOX
カルバートの設計」といった設計者の実務に密着した様々な設計ソフトを発売し、これらのソフトは現在バージョン12、13
とバージョンアップを続けてきました。
「UC-1 エンジニア・スイート」は、この多数の製品群を、BIM やCIM などの普及に対応して8
つのカテゴリー別に整理し、関連あるソフトウエアをまとめ、リーズナブルな価格で提供するものです。
例えば、「下部工基礎スイート(AdvancedSuite)」は、橋脚や橋台、支承、フーチング、杭基礎、置換基礎などの設計を行う10
本のソフトで構成されており、合計139 万円(税別)となっています。これらのソフトを別々に買うと、合計264
万円(同)ほどかかってしまうので、ほぼ半額で買えることになります。
また、含まれるソフトの種類や本数によって「Advanced」、「Senior」、「Ultimate」といった種類に分かれています。
4 月にまず、「仮設土工スイート」と「建築プラントスイート」が発売された後、「構造解析上部工スイート」、「下部工基礎スイート」などが7
月初旬まで、順次発売されます。
これまで単体だったソフトが、「スイート」になることで、ソフト同士が連携しやすくなるといったメリットがあります。例えば、複数の橋脚と橋台からなる橋の応力照査結果をまとめる時、これまでは各ソフトで計算した結果を切り張りする必要がありました。それがソフト上で複数の計算結果を選択するだけでひとまとまりになった表を作ることができます。
また、橋などの全体モデルで耐震計算などを行った後、支承の反力などを橋脚の設計ソフトに渡して計算し、橋脚耐力の計算結果をバックするなどのソフト間のデータ連携もしやすくなります。
BIM やCIM のような発想であるソフトで作成した3D モデルを使って3D の配筋設計を行ったり、設計データをクラウドにバックアップしたりというこれまでにない効率的な使い方ができるのもメリットです。
フォーラムエイトではBIMソフト「Allplan」やバーチャルリアリティーソフト「UC-win/Road」などを中核として自社製品を連携・統合できるように製品開発を進めています。これだけの数の異なるソフト間でシームレスにデータを活用できるようにする構想は、BIM
やCIM の概念にもあったものと言えそうです。
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▲クレーンの仮設設計(仮設土工スイート) |
▲タンクの応力計算(建築プラントスイート) |
●体験内容
4 月10 日、フォーラムエイトの東京や大阪、宮崎などの会場で「UC-1 エンジニア・スイート発表セミナー」が行われました。私は東京本社の会場で受講しましたが、超満員の盛況ぶりでした。
しかし、講師はこの会場にはいません。製品の概要やクラウド機能、各製品の主な機能の解説や、操作体験の実習までを大阪や宮崎の会場から、テレビ会議システムを使った「リレー講義」で行ったのです。フォーラムエイトのネットワークを駆使した画期的なセミナーでした。
「UC-1 エンジニア・スイート(UC-1Engineer’s Suite)」は8 つのカテゴリーに分けて提供されます。「仮設土工」、「建築プラント」、「構造解析上部工」、「下部工基礎」、「水工」、「港湾シリーズ」、「CALSCAD」、そして「SaaS」の各スイート製品です。
まず、UC-1 エンジニア・スイートに含まれる単独製品とは別に、スイート製品として強化された5
大機能の解説です。その内容は(1)クラウド機能、(2)2DCAD 機能、(3)3D
配筋機能、(4)BIM/CIM 機能、そして(5)サポートチェック機能です。
クラウド機能ではデータファイルをクラウド上に保存することにより、データ共有したりバックアップしたりという機能が搭載されました。2DCAD
機能では単独製品で作成した図面を2 次元汎用CAD「UC-Draw」で編集や出力できるようになりました。
また3D 配筋ビューア機能を備えた製品に対しては、2DCAD 機能のほか3D配筋CAD
機能も用意して配筋データの編集や干渉チェックも可能になりました。
最近のBIM/CIM の普及に対応したのが「IM 機能」です。設計から施工、維持管理までを一貫した1
つのモデルと考えて、2D・3D 図面の作成だけでなく、材料仕様や数量、概算工事費、管理情報などを含めて情報の一元化を図っていく方針です。また、「UC-1
エンジニア・スイート」の初版では、「3D 配筋CAD」に、BIMモデルのデータ交換に使われる国際標準規格「IFC
形式」の出力機能を搭載しました。今後はBIM/CIM 機能やIFC 変換機能の強化を図ります。
サポートチェック機能は、入力順にデータチェックリストを出力するものです。
続いて、強化されたクラウド機能について、さらに詳しい解説が行われました。フォーラムエイトでは「UC-1
for SaaS」というクラウドサービスを既に展開していますが、今回のスイート製品ではその一部である「ファイル共有サービス」と「クラウドバックアップサービス」との連携ができるようになっています。
ファイル共有サービスには(1)Web ストレージサービス、(2)UC-1 スイート製品との連動、(3)ファイル転送先のアドレス帳管理の各機能があります。これはスイート製品の入出力ファイルをクラウド上で読み書きしたり、他のユーザーとファイルを共有したりできるものです。また、ソフトを使用中に定期的にデータをクラウド上にバックアップすることもできます。
送受信はSSL プロトコルによる暗号化通信を用いたセキュアな環境が保たれた状態で行いますので安心です。
この後、8 つのスイート製品について詳しい機能や特徴の解説が行われました。約15
分間の休憩をはさみ、操作実習が行われました。
教材は「仮設土工スイート」に含まれる「擁壁の設計」です。まずはこのソフトを使ってクラウド上のデータの読み込みや保存、ファイルのバックアップなどのクラウド機能を体験しました。続いて2DCAD機能を使って擁壁の図面作成や編集、3D配筋機能による干渉チェックや鉄筋の追加を行い、3D
配筋CAD 用の「rfv」形式のほか、「3DS」、「Allplan」、「IFC」などの各形式にエクスポートする方法を体験しました。
最後にサポートチェック機能により、一連の作業で使った入力データを整理して出力し、報告書にまとめる操作を体験しました。
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▲ 3D 配筋機能 |
▲一連の計算で使われた
入力データをまとめる
サポートチェック機能 |
▲まとまった表として出力 |
●イエイリコメントと提案
これまでのように個々のソフトを必要に応じて買うという方法だと、価格も高いので設計事務所やコンサルタントでも、これだけのソフトをずらりと「全集」のようにそろえるのは難しかったでしょう。それが「UC-1
エンジニア・スイート」の場合は半額程度の値段でそろえられます。
これまで頻度の高い設計は専用ソフト、頻度の低い設計は表計算ソフトや手計算と、使い分けて手作業で報告書などを作ってきた会社は、スイートを導入すればすべてまとめてルーティンワークを処理できるようになります。
フォーラムエイトはこれまで単体製品だった各設計ソフトを、「スイート」としてまとめることで、ソフト同士の連携機能も新たに開発しました。
例えば、複数の橋脚と橋台からなる橋の応力照査結果を報告書にする時、これまでは各ソフトで計算した結果を手作業で切り張りしてまとめる必要がありました。
それがスイート製品では、「橋脚の設計」や「橋台の設計」によって個々の橋脚、橋台について計算した後、ソフト上で複数の計算結果を選択と、ひとまとまりになった表を作ってくれる機能が追加されたのです。
また、橋などの設計の際に、全体モデルで耐震計算などを行って得られた支承の反力などを橋脚の設計ソフトに渡して計算し、橋脚耐力の計算結果をバックするなどのソフト間のデータ連携もスムーズに行えるようになりました。
紙の出力や手入力などを介すことなくデータを様々なソフトで活用することで、効率化が行いやすくなったと言えそうです。
●製品の今後の展望
フォーラムエイトのスイート製品には、クラウドサーバーとの連携機能も設けられました。クラウドサーバーに設計データなどのファイルを保存しておき、各ソフトで読み書きしたり、他のユーザーと共有したりすることができます。また、手元のパソコンで編集中のデータを定期的にクラウドにバックアップすることができるのです。
複数のソフトを使って、1 つの構造物の設計を行う時にソフト間でのデータ連携をスムーズに行うことは、設計業務の効率化に役立ちます。スイート製品がクラウドと連携することで、複数のメンバーや遠隔地の部署とのスムーズな共同作業が可能になります。
データを共有・再利用することによって手作業による再入力を減らせるというわけです。異なるソフトを使うたびに入力データを作る手間が減るほか、ヒューマンエラーによるミスも防ぎやすくなります。
こうしたソフトを連携させた使い方は、1 つの構造物のモデルに属性情報を入力して、様々な設計・施工・維持管理の業務に使い回すことで生産性の向上を図るというBIM
やCIM の考え方に似ています。スイート製品のデータ連携の有効活用は、CIM による業務効率化の第一歩と言えるでしょう。
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▲ 3D 配筋機能 |
▲ 4月から順次、発売された
8カテゴリーのスイート製品 |
▲震度、橋脚、落橋防止の
ソリューション間のデータ連携イメージ |
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(Up&Coming '13 夏の号掲載) |
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