Q3−5−1. |
補強設計において、柱巻立補強後、梁付け根(柱上端部)が塑性ヒンジとなっていないかの検討はどのようにすればよいのか? |
A3−5−1. |
はり下が塑性ヒンジ(終局状態)となるかどうかの検討はサポートしておりませんので、以下のような追加検討を行っていただく必要があります。
- [既設時の検討で基部損傷となる場合]
- 「既設時のはり下の終局時水平力」と、「補強時の柱基部の水平力」を比較を行なってください。
- 「既設時のはり下の終局時水平力」≦「補強時の柱基部の水平力」となる時は、はり下が終局状態となりますので、はり部分についても補強が必要です。
- [既設時の検討で段落とし部損傷となる場合]
- この場合は、「既設道路橋の耐震補強に関する参考資料(緑本)」p.3-10に従い、「損傷が躯体基部先行の曲げ破壊型に移行した」と仮定して、設計計算上柱全体に基部と同じ配筋がなされているものとして計算しますので、実際の「既設時のはり下の終局時水平力」が求まりません。
- そこで、既設時のモデルを新設として計算させ、求めたはり下の終局時水平力と、補強時の柱基部の水平力との比較を行なってください。
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Q3−5−2. |
中間部断面―塑性ヒンジ領域内と設定した際、計算はどのように行なわれているのか? |
A3−5−2. |
「塑性ヒンジ領域内」と指定した場合は、「道示X p.134 9.5せん断耐力」に従い、せん断耐力の算出時に、CcについてタイプTの地震動に対しては0.6、タイプUの地震動に対しては0.8として計算しております。
「塑性ヒンジ領域より上」と指定した場合は、Ccの値を1.0としてせん断耐力を算出します(この扱いは、「既設道路橋の耐震補強に関する参考資料
H.9.8」p.3-24の記述に準じております)。 |
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Q3−5−3. |
保耐法照査時に、「Mc My Muの順番が逆転しています。」とのメッセージがでたときの結果はどう扱うべきか? |
A3−5−3. |
計算結果を確認すると、ひび割れモーメント<初降伏モーメント<終局モーメントの関係が成立していない(どこかが逆転している)状況になっているはずです。
本プログラムでは耐震設計編 p.128 (解9.3.7)により初降伏変位を求めていますが、「Mc、My、Muの順番が逆転している」場合、どのφを用いるべきかわからないため(プログラムでは最初に見つかったφを用いています)、「この結果については保証外」とし、結果を有効とするか無効とするかは設計者の判断に委ねております。
一般に形状、鉄筋量を見直すことで、逆転を解消することが可能です。
なお、メッセージが複数回表示されることがありますが、これはタイプI、IIや既設時、補強時などで複数の検討箇所で逆転が発生しているときにこのようになります。 |
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Q3−5−4. |
掛け違い橋脚で保有耐力法の検討をするには? |
A3−5−4. |
下図のようなモデルのとき、
- [基本条件]ダイアログ
- [共通|上部工死荷重反力]にR1+R2を設定する。
- R1、R2の反力差および柱中心からの支承位置の差により、死荷重反力によるモーメントが発生するときは、[保有耐力法|橋軸方向|偏心モーメント]に当該モーメント分を考慮する。
- 上部工分担重量[保有耐力法(検討方向別)|上部工重量WU]についても反力と同様に設定する(それぞれの上部工分を考慮する/しないは支承条件等から判断してください)。
- [共通|上部工水平力の作用位置]は考慮した上部工分担重量の重心を考慮する。
- [はり・柱形状]ダイアログ
- 掛け違い段差部分を考慮しない形状を設定します。
- [その他鉛直荷重]ダイアログ
- はり天端の掛け違い段差分の重量(赤色部分)を考慮するには、[集中荷重|はり]または[分布荷重|はり]として設定する。
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Q3−5−5. |
補正係数Ccについて、道示X耐震設計編ではタイプTが0.6、タイプUが0.8となっているが、1.0を採用しているのはなぜか? |
A3−5−5. |
せん断耐力算出用データにおいて「中間部断面の仮定」が「塑性ヒンジ領域より上」と指定された場合は、中間部のccは1.0としています。
これは、「既設道路橋の耐震補強に関する参考資料」p.3-24にある「(非塑性ヒンジ領域として考慮し、cc=1.0)」という記述を、「非塑性ヒンジ領域ではcc=1.0を用いる」と解釈しています。 |
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Q3−5−6. |
RC橋脚保耐で偏心モーメントでは、梁部の左右張り出し長が異なる場合の自重の偏心はプログラム内部で計算されるのか?偏心モーメントの入力項目で入力するのか? |
A3−5−6. |
自重による偏心モーメントはプログラム内部で計算しています。
「偏心モーメント」は上部工死荷重反力によって、はり天端面はり中心に生じる、偏心モーメントの値を設定してください。 |
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Q3−5−7. |
降伏剛性時の断面2二次モーメントは、どのように算定しているのか? |
A3−5−7. |
[基本条件]の[はり部のモデル化]の設定により、下記のどちらかで求めます。
1)[はり部のモデル化]を[直下の柱断面と同等]に設定
水平力と変位の関係:δy=Py・h3/(3・EIy):片持ちばりの公式
降伏剛性時の断面2次モーメント:
Iy=(Py/δy)・h3/(3・E)=K・h3/(3・E)
ここに Iy:「はり・柱」部の断面2次モーメント
2)[はり部のモデル化]を[剛体]に設定
水平力と変位の関係:δy=Py・(h3−hu3)/(3・E)
上式は、はり部を剛体とした場合の水平力と変位の関係で、「弾性荷重法」を用いて算出した式です(「弾性荷重法」については、構造解析の参考図書をご参照ください)。
降伏剛性時の断面2次モーメント:
Iy=K・(h3−hu3)/(3・E)
ここに、Iy:「柱」部の断面2次モーメント(はり部は剛体)
ここに
h:橋脚基部から上部工慣性力作用位置までの高さ
hu:梁下から上部工慣性力作用位置までの高さ
Py:降伏時の水平力
δy:降伏時の水平変位
K:降伏剛性=Py/δy
E:コンクリートのヤング係数 |
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Q3−5−8. |
許容応力度の検討における柱のひび割れモーメントMc(およびMcを求めるときの断面2次モーメント、断面係数等)はどのように求めているか? |
A3−5−8. |
道示IV p.149(解4.4.1)に従い、コンクリート断面のみを考慮しています。 |
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Q3−5−9. |
保有耐力法の検討におけるひび割れモーメントMc(およびMcを求めるときの断面2次モーメント、断面係数等)はどのように求めているか? |
A3−5−9. |
道示V p.127(解9.3.1)の式解9.3.1の各値を下記のように求めています。
Mc=Wi(10σbt+Ni/Ai) 式解9.3.1
Ai:軸方向鉄筋を考慮した断面積 Ai=Ac+n・As
Ac:コンクリートの面積
n :鉄筋とコンクリートのヤング係数比 Es/Ec
As:鉄筋面積
Wi:軸方向鉄筋を考慮した橋脚の断面係数 Wi=Ii/yi
yi:図心から部材縁端までの距離
Ii:軸方向鉄筋を考慮した橋脚の断面2次モーメント Ii=Ic+n・Is
Ic:コンクリートの断面2次モーメント
矩形 Ic=B・H3/12
円 Ic=π・D4/64
小判橋軸 Ic=Cb・D3/12+π・D4/64
小判直角 Ic=D・Cb3/12+π・D4/64+Cb・D3/6 +π・(Cb・D)2/16
B :矩形の部材幅
H :矩形の部材高さ
D :円・小判の直径
Cb:小判の直線部長さ
Is:鉄筋の断面2次モーメント
・鉄筋を1本づつ考慮の場合
Is=Σ(Asj・yj2)
Asj:鉄筋1本の面積
yj :鉄筋の図心からの距離
・鉄筋を帯状に換算する場合
Is=∫(As/b・y2)dy
As:鉄筋面積
b :鉄筋分布長
y :鉄筋の図心からの距離 |