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第7回
「利用状態を反映し、現実と計画との
インタラクションを考慮 ― 今後のBIM/CIM展開」

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 池田靖史教授
はじめに
「専門家集団という、社会の中のコミュニケーションとして少し閉じざるを得なかったところから、もう少し社会に対してオープンにすることで、その良さを引き出せる可能性があるのでは」。
建築分野におけるBIM(Building Information Modeling)への造詣が深い慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の池田靖史教授(株式会社IKDS代表)は、CIM(Construction Information Modeling(/ Management))によってもたらされるメリットの一端をこう表現。併せて、「白紙から計画する時点だけではなく、(従来はさほど意識されてこなかった)つくってから起きてしまうことやつくる前にあるモノ、計画以外の時間軸みたいなことを含んだコントロールをしようという発想に変わるのでは」と、CIMを契機とする新たな検討アプローチ創出への期待を述べます。

 建築分野でのBIMの普及を背景に、その手法をわが国の社会資本整備のプロセスに応用しようというCIM。BIMに関わるアカデミックな探究や実務的な運用を重ねてきた経験を踏まえ、同教授は関係者間の合意形成を支援するとともに、「現実と計画とのインタラクション(相互作用)」について検討できるツールとしてのCIMの機能に注目します。

 本連載はCIMの理解浸透と普及拡大を目指し2014年初めにスタート。CIMの利活用、関連技術の開発や研究などに先進的に取り組まれている各界のキーパーソンに順次取材。CIMの可能性や課題、進むべき展開方向などについての考え方を紹介してきました

 連載クロージングとなる第7弾では、早くから建築デザインにコンピュータ利用を採り入れてきた一環としてBIMに着目、5年前の発足以来「Virtual Design World Cup(VDWC:学生BIM&VRデザインコンテスト オンクラウド)」の実行委員長を務める傍ら、進行中のフォーラムエイト社員寮建設計画におけるIM&VR(Information Modeling & Virtual Reality)ソリューション活用にも協力している慶應義塾大学の池田靖史教授にお話しを伺いました。
教育、研究、実務を通じ建築・都市デザインへのICT活用を模索

 もともと学生時代から建築とは別に、コンピュータを使うことを半分趣味でやっていた、という池田教授。その結果、「(実務における)設計活動でも大学教員としての研究活動でも、社会的な建築デザインあるいは都市デザインの位置づけの中で新しい情報通信技術(ICT)を使って応えていくということはどういうことなのか、模索してきた」自らの今日に至るスタンスに繋がっている、と振り返ります。

 同教授は慶應義塾大学において建築や都市、環境の設計、そこでのICT活用に関わる多様な教育・研究に従事。その中で、デザインのプロセスでコンピュータの可能性を駆使する「コンピュテーショナルデザイン」、あるいは近年では建築学的な問題にICTを活用して取り組む「アーキインフォマティクス(建築情報学)」などの観点からICTと建築・都市デザインが関わる広範な課題について探索。BIMあるいはCIMというのは、その中の大きな動きの一つと位置づけます。つまり、「BIMという言葉ありき」でその考え方を採り入れてきたというのではなく、「コンピュータあるいはICTが社会の問題をデザインで解決していくのに役立つことには幅広く取り組む」一環として、そのもたらす意義に注目してきたといいます。

▲慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 池田靖史教授
(株式会社IKDS代表)

 併せて同教授は、國分昭子氏とともに共同代表を務める「IKDS」を通じ、設計実務にも携わっています。そこでは顧客のニーズと調整しながら、自身らの理想とするICT活用が効果を発揮するところを実務の中で探りつつ役立てることが意図されてきました。同社は1995年に設立。以来、各種住宅や施設の建築に関する計画・設計・工事監理、建築を中心とする地域計画・都市デザイン、建築の企画に関するコンサルティング、サイン・グラフィックス計画などを展開しています。その事業活動は国内のみならず、中国をはじめ海外にも及び、その際のコミュニケーション・ツールとして3次元(3D)モデルの活用が試みられてきました。同教授は「本当は完全にBIM(やCIM)で行うのが理想」と言及。それを通じお互いの異なるアイディアや要求をやり取りする先に、従来難しかったコラボレーションや文化を越えた作品づくりが可能となりウィンウィンの成果に繋がる、との見方を描きます。


VDWC運営や当社社員寮建設計画にも協力

 BIMやCIMへの高まる関心を背景に、フォーラムエイトは2011年から前述の「Virtual Design World Cup(VDWC)」をスタートしています。これは学生を対象とし、BIM/CIMおよびVRの活用により建築や都市などの先進的なデザインを競う国際コンペ。参加者はフォーラムエイトの提供する各種関連ソフトウェアを駆使して計画、設計、シミュレーションなどを行い、そのデザイン性、アイディアの先進性やユニークさなどで評価されます。池田教授はVDWC発足以来、その実行委員長も務めています。

 同教授はそこに込められた、1)仕事の効率化を図るために導入するというイメージが強いBIM/CIMに対し、未来を担う学生による何か新しい価値を生むような使い道の開拓、2)BIM本来の3D情報によるコミュニケーション・ツールとしての利用を通じ、異なる立場の学生同士が一つのプラットフォーム上で互いのアイディアを議論しつつ協働で作業する仕組みの形成、3)国内外の学生の参加はもちろん、国境を越えた学生同士が協力する取り組みへの展開 ― といった狙いを挙げます。第5回目となる今年度のVDWCは「台湾基隆駅前再開発」をテーマに設定。想定敷地を初めて日本国外に置いたほか、審査委員会メンバーも拡充。同教授は、グローバルに通用するアイディアを求めているということを明確に打ち出した意図を説明。その効果はエントリー状況にも表れているといいます。

 また、フォーラムエイトでは自社社員寮(港区高輪地区)の建設計画が進行中です。ここでも池田教授が協力し、計画検討から設計、建設に至るプロセスへの当社IM&VRソリューションの有効活用が図られています。

 同教授はこれに関連し、企業活動に役立つという施設の社会的使命に向け、コミュニケーション・ツールとしてコンピュテーションを利用する考え方を明示。実際に施設を使う可能性のある人々がVRクラウドを介して設計データを基に仮想体験し、それに対する個々のコメントをVR空間内の任意の場所にポストイットを貼る感覚で書き込みフィードバックする、といった仕組みを採用。今回は比較的小規模な事例であるものの、大規模な案件への応用の可能性は大いに見込まれる、と語ります。


CIMで注目される2つの側面

「関わる人が多いと、とくにパブリックなプロジェクトでは合意形成がとても大事になります」
とはいえ、図面を読んだり、2Dの資料から3D空間の出来上がりを理解したり、あるいは過去の経験から技術的に可能か否かを理解したりすることは、能力的な問題もあって難しいのが実情です。そのため「専門家がきちんと判断すれば、素人が考えるより確実である」ということにせざるを得ない側面がありました。そうした制約を乗り越えるツールとしてCIMの一つの役割がある、と池田教授は説きます。

 つまり、CIMによりバーチャルに体験すれば仮に図面を読めなくても完成後、3D的にどう見えるかが分かるようになる。加えて、それが光、あるいは風や音、コストといった目に見えないものにどのような影響を与えるかもシミュレーションできる。また、VRで体験した人にインターネットを介してコメントを送ってもらったり、投票してもらったりして多くの人々に参加してもらうことも技術的には可能です。そうすると、従来専門家しか理解し得なかった部分を一般の人に少し開かれた情報に出来るようになることが期待されます。

 自身がかねてから着目する、BIMとネットワーク技術をリンクし情報共有や意思決定を支援する「デザイン・レビュー・クラウド」の考え方はそうした具体的なアプローチの一つ、と位置づけます。

 一方、自らが専門とする建築向けのBIMでは概して、設計図のように設計者が考えたことを専ら入力しているイメージがあります。これに対し、CIMはこれからつくられるモノのみならず、土地の形状や既存の道路などデザインする側の主体性とは関係なく既に存在するモノ、あるいは公共がつくる道路の周辺で民間が自律的につくる建物、人の利用や自然現象によってもたらされるモノなど当該プロジェクトで計画してつくっているとは限らないのに出来てしまったモノも一緒にデータ化して行こうというところにポイントがある、と池田教授は述べます。

 その背景には、現実の世界は計画してつくられたモノと、人間がそれを使うことによって生まれるモノとのインタラクションで形成されており、CIMの特徴の一つはそのような現実と計画のインタラクションについても検討できることにある、との考えがあります。

「本当はBIMにもそういう(機能を)期待をしても良いと思っているのです」。同教授は既存の建物の改修時におけるそうしたデータの利用可能性、建物内部の配線を施工後にデータ化することの合理性などに触れ、CIM発の検討手法がBIMにフィードバックされて新たな展開に繋がる意義にも注目します。


BIM/CIMをめぐる新しい流れ

 従来は3Dの形状データなど計画的なデータが主体だったのに対し、IoT(モノのインターネット)の普及などもあり、多様なセンシングデータを重ね合わせた現実世界の利用状態のデータが取り込まれ、それをBIM/CIMの世界へ持ってくるという流れが勢いを増すのでは、と池田教授は今後の進展方向を解説します。同氏は、人とコンピュータの相互関係を研究する「ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)」の観点からBIM/CIMを俯瞰。計画時に頭の中にあるデータというより、現実世界で起きていることのデータをうまく利用するためのプラットフォームとしての色彩を徐々に帯びていくものと描きます。

 同教授らは先進の環境制御やエネルギー管理手法を追究し、環境負荷の低減、健康維持・増進、快適性と安全性の確保を使命とする慶応型共進化住宅「コエボハウス」(湘南藤沢キャンパス内)のプロジェクトも進めており、そこではスマートハウスとBIMの一体化を研究テーマの一つに設定。BIM/CIMが時間軸や人間の利用との関係を捉えるプラットフォームになっていくとの発想が反映されています。

 こうして「BIMやCIMの使い方が広がっていく時、自分たちだけで技術的な問題をすべて解決するのは難しい」。また「BIMは何でも出来てしまうツールだけど、多くの人は何でもすることが目的ではない」と同教授は指摘。その意味から、フォーラムエイトの多様かつ柔軟なBIM/CIMソリューションサービスへの期待を述べます。

「(それに対し、現場サイドでは)ソフトウェアありきではなく、業務(に関する社内外)のコミュニケーションを改善するため『こういうものがあれば良い』という自由な発想から『BIM/CIMというツールを使える』と考えれば面白いのではと思います」

▲株式会社IKDSのオフィスにて 池田靖史教授(同社共同代表)


(執筆:池野 隆)
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(Up&Coming '15 秋の号掲載)
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