連続合成桁の設計とフォーラムエイトの対応について |
最近、省力化橋と合成構造への積極的な取り組みを反映して、連続合成桁の合理性を見直す気運が高まってきている。道路公団では既に第二東名や北海道でのPC床版を有する2主桁の連続非合成桁と連続合成桁の設計が実施されており、橋梁建設協会では連続合成桁ワーキンググループを設置し、「PC床版を有すプレストレスしない連続合成桁設計要領(案)」(平成8年3月31日)を作成している。
また、性能照査型への移行に伴い連続合成桁の性能照査法を確立することにより、これまで避けられてきた連続合成桁をもう一度復活させようとする動きが業界全体に出てきているようである。
フォーラムエイトでは、この流れへの対応を検討することとしているが、現時点でのユーザの利便性に鑑み、紹介プログラムを販売し、当面の設計への対応に利用していただくこととした。
なお、フォーラムエイトでは、Mighty Bridgeでの対応が適当であると判断しているが、現在Windows版の品質向上、改良を優先課題としているため、現在のところ、調査を継続することとし、作業着手時期は、未定としている。本資料は、Mighty
Bridge等で対応を検討するための前準備として上記設計要領(以下WG設計要領)の考え方について理解を深めるために下記のとおり、まとめることとした。
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§1.橋軸方向のプレストレスの導入 |
1−1.プレストレス導入の効果
単純合成桁は合成前死荷重、合成後死荷重、合成後活荷重作用時に常に下側引張の状態にあり、コンクリート床版が常に圧縮状態にある。このため合成後においては床版は主桁と共同してこれらの作用力やクリープ、乾燥収縮、温度差によって生じる作用力に抵抗する。
一方連続合成桁とした場合は中間支点付近において、後死荷重(床版の施工順序によっては一部の前死荷重)および活荷重により上引張となり、床版が引張の状態となる。床版に生ずる引張応力度が引張強度を超えると床版にはひび割れが生じ、コンクリート断面が有効でなくなる。このことばかりでなくひび割れから雨水が浸透しこれによって床版の疲労強度が極端に低下するため、これを防止する意味からも以前はプレストレスを導入することが考えられ、種々の工法が発案された。
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1−2.プレストレスの導入方法
プレストレスの導入方法として考えられたのは主に下記の二つの方法である。
1)PC鋼材を用いてプレストレスを導入する方法 |
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PC鋼材を用いて中間支点付近の床版にプレストレスを導入する方法で、床版の下側に突起部を設け定着するのが一般的である。この工法で架橋された実例は多い。 |
2)中間支点のジャッキアップ、ダウンにより導入する方法 |
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床版打設時に中間支点をジャッキアップしておきコンクリートが硬化するのを待ってジャッキダウンする方法である。中間支点をジャッキダウンするということは両端の支点で単純支持された桁に中間支点位置におけるジャッキダウンに見合う下向きの変位を与えると等価な集中荷重を作用させることと同様であり、これにより下側引張モーメントが導入されることになる。 |
上記の二つの方法は併用して用いられることもあった。
これらの他に水荷重法(?)と言う工法も考案され、河川に架かる橋梁に採用されたことがある。
この工法は床版打設前に袋に詰めた水をぶら下げ、コンクリート効果後にこの水をこぼすもので水荷重の除荷により後死荷重と逆向きの荷重を作用させるものである。型枠の除去と同じ効果を与える。
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1−3.プレストレスの評価
現在ではコンクリートのひび割れ幅を制御することと防水工を施すことで、有害な雨水の浸透を防止しできることが明らになり、ヨーロッパではプレストレスの導入は図られていないようである。
このことを受けて日本でもプレストレスを導入しない連続合成桁を合理的に設計施工する方向に進んでいるようである。ただし、支点のジャッキアップ・ダウンによるプレストレスの導入について、道路公団では積極的に評価し効率的な導入を考えているようである。
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§2.WG設計要領の基本的な考え方 |
2−1.プレストレスの導入
WG設計要領ではプレストレスを導入しない連続合成桁を対象としている。本要領を読む限りにおい
ては上述した如何なる方法でもプレストレスを導入しないようである。
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2−2.不静定力の算出
合成桁においてはクリープ、乾燥収縮、温度差によって主桁が変形する。この現象は誤解を恐れずに言えばプレストレスのようなものが導入されたものと考えて良い。単純桁においてはこの分のみを考慮すればいいが、連続桁においてはこの変形が中間支点において拘束されるので、両端支点が単純支持された桁の中間支点の位置に集中荷重が作用した場合のようなモーメントが生じる。これを不静定力という。この不静定力を求めるには変形を生じさせようとする力(モーメント分布荷重)と桁の剛性が必要である。これらが明らかであれば面外骨組みを解析することで、不静定力を求めることができる。
不静定力を求める際の上記の荷重の範囲と桁の剛性の関係をまとめると以下のようである。
荷重の種類 |
荷重の範囲 |
ヤング係数比 |
床版の取り扱い |
クリープ |
後死荷重による曲げが正の区間 |
14 |
引張となる場合も有効 |
温度差 |
橋梁全区間 |
7 |
引張となる場合も有効 |
乾燥収縮 |
中間支点付近0.15Lの区間を除く |
21 |
引張となる場合も有効 |
床版コンクリートと鋼桁のヤング係数比および床版の取り扱いは道路橋示方書鋼橋編の考え方にしたがっている。
1)クリープについて |
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クリープは床版が圧縮の持続荷重を受ける場合にのみ進行するものと考え、したがって不静定力を求める際のクリープによる曲げモーメント荷重の載荷範囲は後死荷重による曲げモーメントが正の範囲としている。 |
2)温度差について |
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温度差による床版の鋼桁に対する相対的な伸縮は床版の圧縮区間、引張区間の別なく橋梁全体に亘って同様に生じるものと考えている。 |
3)乾燥収縮について |
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乾燥収縮により床版は縮もうとするが鋼桁によって妨げれる。このため床版は引張力を受けるが、中間支点付近においてはひび割れが更に進行することとなりこの部分の乾燥収縮が鋼桁により妨げられることはない。このことから荷重の範囲をひび割れが発生すると予測される中間支点0.15Lを除く区間としている。 |
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2−3.応力度の算定
応力度を算定するに当たっては、床版をどのように取り扱うかが重要である。本要領はプレストレスを導入しないので、合成後の曲げモーメントが正の場合は床版を有効とし、逆に負の場合は床版を無効として応力度を算出する。
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§3.主桁設計用断面力種類と応力度の算定 |
3−1.主桁設計用断面力の種類とその一般的な算出方法
ここでは、クリープ等によって床版が収縮するのを鋼桁が拘束することによって生じる断面力を「クリープ等による断面力」、不静定構造であることにより二次的に発生する不静定力を単に「二次力」と称することとする。
1)合成前死荷重による断面力 |
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荷重:鋼桁自重、床版およびハンチ重量、型枠重量
剛性:鋼桁のみを考慮した剛性
算出:格子計算による |
2)合成後死荷重による断面力 |
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荷重:地覆、高欄、舗装、添架物、除去型枠重量など
剛性:支間部は合成断面(n=7)、中間支点付近(0.15L)は鉄筋を考慮した鋼断面の剛性
算出:格子計算による |
3)合成後活荷重による断面力 |
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荷重:自動車荷重
剛性:支間部は合成断面(n=7)、中間支点付近(0.15L)は鉄筋を考慮した鋼断面の剛性
算出:格子計算による |
4)クリープによる断面力および二次力 |
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a)クリープによる断面力
算出:クリープによる床版の収縮が鋼桁に拘束されて生じる断面力で道路橋示方書に示されている考え方で算出する。 |
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b)クリープによる二次力
荷重:上記で求められるモーメント荷重、載荷範囲はMvdが正の範囲
剛性:橋梁全体にわたり合成断面(n=14)
算出:格子計算による |
5)温度差による断面力および二次力 |
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a)温度差による断面力
算出:温度差による床版の相対的な伸縮が鋼桁で拘束されて生じる断面力で、道路橋示方書に示されている考え方で算出する。 |
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b)温度差による二次力
荷重:上記で求められるモーメント荷重、載荷範囲は橋梁全長
剛性:橋梁全体にわたり合成断面(n=7)
算出:格子計算による |
6)乾燥収縮による断面力および二次力 |
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a)乾燥収縮による断面力
算出:乾燥収縮による床版の収縮が鋼桁に拘束されて生じる断面力で道路橋示方書に示されている考え方で算出する。 |
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b)乾燥収縮による二次力
荷重:上記で求められるモーメント荷重、載荷範囲は中間支点付近(0.15L)を除く
剛性:橋梁全体にわたり合成断面(n=21)
算出:格子計算による |
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3−2.応力度の算出
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§4.MBで対応すべきこと |
MBで当面対応すべき点を挙げると以下のようである。
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4−1.設計断面力
1) 設計断面力のフォーマットの変更
連続合成桁ではクリープ、温度差、乾燥収縮による二次力を設計断面力として追加する必要がある。
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4−2.断面計算
1) 断面計算のフォーマットの変更
応力度が交番する箇所では合成断面での照査と鋼断面での照査が必要となるので、フォーマットの変更は避けられない。
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4−3.作画
テーパーフランジへの対応
連続合成桁については、以下の問題点をクリアしなければならないが、当面上記の点に対応すれば、MBを用いて少主桁の連続合成桁の大部分の設計が可能となる。
・ジャッキアップ・ダウンによるプレストレス導入の評価
・床版打設の順序を考慮した断面力の算定の要否
・橋軸直角方向の設計
・横桁の作画
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§5.任意形格子桁で対応すべきこと |
連続合成桁対応版としてクリープ、温度差、乾燥収縮によるモーメント分布荷重(プレストレス扱い)
を載荷できるように改良し、これらの結果をMBで読み込めるように出力する。
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5−1.断面力の算定
(略)
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横桁の設計 |
§1.中間横桁の設計 |
1−1.中間横桁の役割
中間横桁には以下の機能が要求される。
・少主桁の連続桁、連続合成桁においては下横構を省略するため水平力を分担する。
・架設時および完成時における圧縮フランジの横倒れ座屈の固定点として評価できる剛性を有する。
・支保工式で型枠を設置する場合は主桁間の支保工重量、型枠重量、床版重量等を支持する。
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△ △
△
(略) |
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