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Vol.
06
※3Dコンテンツニュースでは3Dの静止画、3Dの動画両方を含めて3D映像と呼んでいます。
前回は、「機械を使う裸眼立体視」、つまり「裸眼3D ディスプレイ」について解説しました。今回は2D デジカメによる3D 映像の制作方法について具体的に紹介しましょう。
■執筆者 町田 聡(まちだ さとし)氏 プロフィール
アンビエントメディア代表 コンテンツサービスプロデューサー。プロジェクションマッピング、デジタルサイネージ、AR、3D メディアのコンサルタントURCF アドバイザー、(財)プロジェクションマッピング協会 アドバイザー。著書に「3D 技術が一番わかる」技術評論社、「3D マーケティングがビジネスを変える」翔泳社 などがある。弊社3D コンテンツ関連アドバイザー。
Twitter:
http://twitter.com/machida_3ds
facebook:
http://facebook.com/machida.3DS
3D映像の仕組み(3) 〜2Dデジカメでの3D映像の制作〜
3D映像の制作方法を知っておけば、自分で何かを3Dで撮影したり、作成した3D 映像が楽しめるようになります。
この楽しさがわかると、3D 映像が身近になるだけでなく、仕事での活用アイディアが出てきたり、3D 映像を効果的に取り入れた製品の開発にも役立ちます。
なにより、楽しむことで、良いものを作るモチベーションが高まることが期待されます。
また、3D映像制作には完成した映像を見ることも含まれるので、見るための機器によってどのような制作方法があるかなど、3D映像についての総合的な知識が必要となってきます。
そのためには前回までの立体視に関する仕組みが役立ちます。
さあ、それでは、3D映像制作にチャレンジしてみましょう。
2Dデジカメで作れる3D映像
「3D映像制作には3Dカメラが必要」と思っている方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
むしろ、2Dカメラの方が本格的な3D映像をつくることができるのです。
下の写真はステレオカードというフォーマットで作られた関東大震災前の横浜の写真と言われています。
▲「横浜ばつまち」のステレオカード
このように、左右の目に相当する2枚の映像を撮影すればよいことになります。
一般的に、この方法では2台のカメラが必要となります。
そう、確かに動いているものを撮影する場合は2台で同時に撮影する必要があります。
しかし、被写体が止まっている場合であれば、必ずしも2台のカメラが必要というわけではありません。
1台のカメラをずらして撮影すれば、3D写真の撮影ができるのです。
この方法は「スライド撮影」と呼ばれています。
ミクロからマクロまで対応可能
スライド撮影の原理をマスターすると、通常の3D専用カメラでもできないようなスケールの撮影も可能になります。
つまり、カメラの移動距離を小さくすれば小さなものの撮影が行え、逆に、数十メートルなど大きくすれば遠景でも3D撮影ができるのです。
移動距離が小さい時は視差が少なく、大きい時は視差も大きくなることを示しています。
つまり、自分がミクロなサイズになったり巨大化したりしたのと同等な効果が得られるのです。
最近のデジカメ(2D用)にはこのスライド撮影を支援する機能がついているものがあります。
最初の1枚を撮影するとその画像が薄く残っており、そこに重ねて視差を確認しながら2枚目を撮影し、撮影後は2枚の画像を指定の3Dフォーマットにしてくれるものもあるようです。
自分の持っているデジカメの機能を確認してみるのも良いかもしれません。
また、スマートフォンではステレオ撮影用のアプリも多く出ていますので、それらでも同様なことが行えると思います。
▲デジカメでのスライド撮影の原理
視差の付け方
1. まず動かない被写体を用意します。
撮影スペースのことを考えると、花や小物など比較的小さなものからスタートするのがよいでしょう。
2. 表示サイズを検討します。
ここが2Dの撮影とは違うところと言えます。通常はそう大きな表示をしないかもしれませんが、完成品が手札の写真サイズなのか、60インチのテレビで見るのかなど、表示サイズが極端に違うようであればあらかじめ出力デバイスのサイズを考慮して視差を決める必要があります。
この場合表示面での奥行視差量が、人の目の間隔である約55mm 以上にならないことが重要です。
このズレ量(視差量)が人の目幅を超えると、その分目が外側に開く状態となりその状態が続くと、目が疲れたり人によっては斜位や斜視になることもあるので、最も注意しなければいけない点です。
▲ディスプレイサイズの違いによる奥行視差の見え方の違い
3. 次に被写体までの距離を設定します。
レンズを2つ持つ3Dカメラの場合はレンズ間の距離が固定であるため、被写体との距離もある程度決まってしまいます。
しかし2Dカメラでスライド撮影する場合は、レンズ間の距離が変更できるので、色々試すことができます。
移動は被写体に対して水平に移動させます。
一般的にはレンズ間の距離の30倍が適正と言われており(目安として覚えておきましょう)、計算で求める場合は以下の公式があります。
SB = k ×(Lmax × Lmin) ÷(Lmax − Lmin) ÷ f
(単位:
mm
)
Sb
:左右のレンズの間隔
Lmin
:最も近い被写体までの距離
Lmax
:最も遠い被写体までの距離
f
:撮影レンズの焦点距離
k
:撮像素子上での視差
これで求められた距離のところに被写体の中心を持ってくるように考えます。
実際には1つの画面には中心となる被写体の他に、その後ろや手前にものがある方が立体的に見えるので、その配置を考慮して撮影します。これらのことを考慮しながら、いろいろな組み合わせを撮影していくなかで3D映像での表現の面白さがわかってくるでしょう。
4. 避けなければいけない表現
視差とは別に3D映像を撮影する場合にはフレームと被写体との関係について注意する点がいくつかあります。
・フレームにものがかからないようにする
これはウインドウバイオレーションと呼ばれる避けなければいけない状態です。
撮影時にはカメラのフレームで見えているものを切り取るわけですが、その時にフレームに被写体がかからないようにするということです。
フレームに被写体がかかる場合でも下記のように飛びださないように奥行で表現するようにします。
▲ウインドウバイオレーション
5. 見る方法
撮影した2枚の写真は画面上に横に並べて見えるよにしてみましょう。
この時、右の映像を右側に、左の映像を左側に置くと平行法でみることができ、右の画像を左に、左の画像を右に置くと交差法(より目)でみることができます。
▲左:平行法 右:交差法
次回はもう少し詳しく、スクリーンと視差の関係を見ていきます。
※社名・製品名は一般的に各社の登録商標または商標です。
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(Up&Coming '13 夏の号掲載)
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