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Vol. 24
今回はVRから少し離れて新しいタイプのプロジェクターについてご紹介します。
3D表示に対応していませんが、屋内用途に特化しているという点では空間と映像が一体化したプロジェクションマッピングの一種と考えることができ、商業施設や住宅、店舗などでの活用に適しています。
■執筆者 町田 聡(まちだ さとし)氏 プロフィール
アンビエントメディア代表 コンテンツサービスプロデューサー。プロジェクションマッピング、デジタルサイネージ、AR、3DメディアのコンサルタントURCFアドバイザー、(財)プロジェクションマッピング協会 アドバイザー。著書に「3D技術が一番わかる」技術評論社、「3D マーケティングがビジネスを変える」翔泳社 などがある。弊社非常勤顧問・(財)最先端表現技術利用推進協会 会長。
  Twitter:http://twitter.com/machida_3ds
  facebook:http://facebook.com/machida.3DS
  HP: www.ambientmedia.jp

照明が映像に変わる日。〜灯体型プロジェクターの使い方〜

このコーナーでは異なる分野の表現と思われている3D立体視、プロジェクションマッピング、VRやARなどの表現技術を取り上げてきました。実はこれらの表現技術は互いにシームレスに関連しており、使いこなそうとすると必然的に関連分野の知識が役立つ分野でもあります。


■照明と映像の融合

照明は空間であり機能的な側面と演出的な側面を持っています。そして、そこに映像が加わることにより「空間」に「情報」という付加価値が加わることになります。照明だけでは抽象的な表現にとどまっていたものが、具体的な映像(情報)を投影することで空間の価値や空間と人とのインターフェースを変えることができる可能性を秘めています。それを実現する表現技術がプロジェクションマッピングといえます。空間や物に映像を投影して付加価値を付けることで人々はその変貌に魅了され、インタラクティブ性が加わることで、空間との新しい関係を構築できると考えられます。

本来プロジェクションマッピングで各人ごとに個別の映像体験を提供できれば、VRやARのようにHMDをつけなくとも同様な体験が可能となります(もちろん明るいところはだめですが)。特にARは現実との融合という点で、屋内においてはHMDをプロジェクターに置き換えることができそうな分野です。複数人に対して同時に個別の情報を提供するには、まだプロジェクターの技術革新が必要ではありますが、1人に対してであればセンサーなど既存の技術を活用することで「おひとりさま情報空間」を提供することが可能となります。

「おひとりさま情報空間」の例としてかなり実用的になりそうなのが、車のヘッドライトといわれています。車のヘッドライトはLEDの配光制御技術の導入によりハイビームのまま対向車への照射を避けたり、交差点ではワイドに照射したりと各種センサーと連動してインテリジェントなライトとなるようですが、映像を投影するプロジェクターが搭載されればナビゲーションや危険回避に利用できるようになるかもしれません。これは運転席からの一人目線でよいので、プロジェクター向きの利用分野ではないかと思います。このような例が屋内空間ではもっと手軽に利用できるようになってきています。


■パナソニックのスポットライト型プロジェクター「スペース プレーヤー」

その先駆けとなるのがパナソニックが商品化しているスポットライト型プロジェクター「スペース プレーヤー」です。このプロジェクターは照明器具と映像装置を融合させた発想から開発された大変ユニークなプロジェクターで、類似のものは他に見当たりません。

写真1にあるような大きさで円形の灯体のような部分がプロジェクターで、手の上にある四角い部分が電源部です。映像は灯体型の丸い部分上部にある四角い部分にレンズがあり、そこから投影されます。まるでスポットライトのようです。
プロジェクターの部分は写真1、2のように様々な方向に向きを変えることができます。

写真1 写真2

■豊富な設置バリエーション

取り付けは写真3にあるように一般的に照明器具の設置に利用されているレール状の「配線ダクト」にそのまま取り付けることができるほか、写真4にあるように通常の電源コードにつないで床置きにすることもできます。また、壁に対して垂直に設置することも可能です。

実は通常のプロジェクターを屋内に取り付けようとすると、それなりに大掛かりな施工が必要となります。写真5は天吊りにする場合の一般的な施工例ですが、天吊り用の金具でプロジェクターを天井に固定します。この場合、設置したい位置の天井裏の状況によっては配線をよけたり、そのために人が入れる点検口があるかなどの課題があります。

写真3 配線ダクトに設置 写真4 電源コードで床に設置 写真5 天井吊り用の金具を使用して設置

その点、「スペース プレーヤー」の場合は、店舗でよくある「配線ダクト」のレールがあれば容易にそこに取り付けることができます。また、配線ダクトの工事が必要であってもダクトの長さ分であれば移動できるメリットもあります。天吊り金具の場合は一旦設置するとプロジェクターを移動することはできません。ただし、映像信号や周辺機器、LANの設置については照明器具の配線とは別に配線工事をする必要があることは「スペース プレーヤー」も変わりません。


■充実した再生機能

「スペース プレーヤー」のもう一つの大きな特長として、高度な映像再生機能を備えているということがあります。通常のプロジェクターにも機種によってはUSBメモリを刺して再生したり、WifiでPCと接続しその映像を投影する機能が搭載されていますが、あくまで投影機としての利便性を上げた程度の機能が大半です。「スペース プレーヤー」の場合は、デジタルサイネージに必要な機能を念頭に、それらの機能が盛り込まれています。これは、通常デジタルサイネージ用の映像再生プレーヤーを内蔵した高機能ディスプレイモニターが有する機能といえます。

  1. 映像再生プレーヤー機能内蔵(HDMI外部入力での投影も可能)
    ・リモコンによりSDカードからの映像再生が可能
    ・SDカードにある映像をスケジュールにより再生可能 (クラウド経由で設定)
  2. 複数台の同時再生が可能
    ・同一LANに接続しておくことで複数台の同時再生が可能
  3. ワイヤレス音声出力機能
    ・Bluetooth対応ワイヤレススピーカーの利用が可能
  4. スポットライト機能
    ・照明装置として丸いスポットライトを映像として表示可能
    (機種により1ヶ所、3ヶ所)


■「スペース プレーヤー」の活用

このように、従来にない照明と映像の融合を目指しているこの製品、空間にどのような付加価値を与えるかは利用者側の課題となりますが、店舗や商業施設での利用事例が増えているということで、パナソニック自身もこの商品の利用事例を多く公開しています。
また、品川には「スペース プレーヤー」専用のラボ(ショールーム)もあり、多くの事例を体験することができます(写真6)。皆さんも空間と映像の融合に是非とも挑戦してみてください。

1000ルーメンタイプ 2000ルーメンタイプ



光源寿命 20,000時間 20,000時間
光束 1,000lm 2,000lm
解像度 WXGA相当
(1280×800)
16:10
XGA相当
(1024×768)
4:3
消費電力 125W 240W
騒音値 36db(ノーマル時) 33db(ノーマル時)
照明連動 なし あり
Bluetooth
音声出力
なし あり



寸法(mm) φ150×220 φ170×278.8
重量 3.0kg 4.8kg
電源入力部 配線ダクト 配線ダクト
(ACインレット)
写真6 スペース プレーヤーラボ
※社名・製品名は一般的に各社の登録商標または商標です。



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(Up&Coming '17 秋の号掲載)

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