名城大学 理工学部 情報工学科 ヒューマンインタフェース研究室 では、中野倫明教授の指導の下、高齢ドライバを対象とする運転能力に関する研究を行っており、運転能力測定にあたっては、フォーラムエイトのシミュレータを用いて運転環境を構築しています。今回はその研究内容について紹介します。
高齢化社会を迎え、高齢ドライバの交通事故の割合が増加しています。高齢者の交通事故は、運転能力(特に、視覚機能と認知機能)低下と、その自覚不足が主原因となっています。特に交差点付近での事故が多く、複数の対象に同時に注意を払う能力の低下が特徴です。本研究では、高齢ドライバの運転行動から、運転能力を評価する方法とシステムを開発し、運転能力(特に、認知・判断能力)を向上する新規の訓練方法(カーナビの地図表示を用いた運転前の短時間の訓練)の提案、およびその効果の検証を行います。
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UC-win/Roadドライブシミュレータに音声認識マイクとカーナビを想定したタッチパネルを搭載し、実際の運転場面に近い運転模擬状態で運転行動を測定できます。
運転行動の測定により、運転能力(視覚・認知機能)を定量的に評価し、タッチパネル部を利用して訓練を実施します。 |
視覚機能(有効視野)の測定方法
運転模擬映像に視標を提示し、視標の検出率(検出回数/提示回数)で評価を行います。
・成績評価基準:安全(80%以上)、普通(60%以上80%未満)、注意(40%以上60%未満)、危険(40%未満)
認知機能の測定方法
交差点右折時の衝突余裕時間(TTC)により評価を行い、国土交通省が定めた自動ブレーキに関する技術指針を基に判定ラインを設定しています。
対向車の速度(40km/h・60km/h)と歩行者の横断の有無で4種類の運転負荷を設定して測定を行っています。
・右折状況に対する評価基準:安全運転(1.4秒≦TTC・2点)、注意運転(0.6秒≦TTC<1.4秒・1点)、衝突(TTC<0.6秒・0点)
・成績評価基準:安全(総合7〜8点)、普通(総合5〜6点)、注意(総合3〜4点)、危険(総合0〜2点) |
70代の高齢者では「注意」の評価が突出していることが分かりました。
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■図1 実験結果:先行車の急停止 |
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■図2 実験結果:人の飛び出し |
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■図3 実験結果:車の飛び出し |
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訓練はカーナビを想定したタッチパネルを使用し、下記3項目の課題訓練を5分程度行い、訓練前後の運転能力を測定し単純反応時間の向上度合いを評価します。
・カウントアップ課題(前頭前野の活性化)
・地図回転課題(頭頂葉の活性化)
・ストループ課題(前頭前野の活性化)
脳の前頭前野を活性化させる課題は、注意や適切な行動の選択に関係し、脳の頭頂葉(頭頂連合野)を活性化させる課題は、運動と視覚情報(空間の情報処理)に関係します。訓練前に対する訓練後の単純反応時間の減少、および反応むらの低下により、訓練による能力向上を確認しました。 |
・運転能力測定シミュレータを用いて運転行動を測定し、総合的な運転能力の成績を評価。
・運転直前の短時間の訓練により、緊急時への単純反応という限られた認知機能の検証で、訓練効果を確認。
・今後は自動車学校での実地検証、ならびに地域性や生活習慣の異なる高齢者群を調査する予定。
フォーラムエイト東京本社ショールームでは、中野教授のご厚意により、このシミュレータを展示させていただいております。操作体験も可能ですので、ご興味のある方はぜひお立ち寄り下さい。 |
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