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 第10回 UC-win/Road協議会/VR-Studio(TM)協議会

新版(UC-win/Road)および新製品(VR-StudioTM)、リリース目前へ
 ―多様化する3D・VR活用シーンとともに「World16」の概要も紹介


 2009年5月20日、フォーラムエイトは、 「第10回 UC-win/Road協議会/VR-StudioTM協議会」を東京コンファレンスセンター 品川で開催いたしました。
 3次元リアルタイム・バーチャルリアリティ(VR)ソフトウェア「UC-win/Road」をリリースしたのは2000年5月。同年11月には最初のUC-win/Road協議会が帝国ホテル大阪で開催されています。以降、この協議会を継続的なソフトウェアの改良・開発の目標と位置づけ、毎回バージョンアップなどの発表を行ってきました。そうした中で、同協議会は年を追うごとに規模を拡大。当初は大阪のみだった会場も東京、さらに海外主要都市を含むリレー開催へと発展(2006年の第7回は東京・ソウル・北京・上海で順次開催)。第8回(2007年)からは現在の形とし、海外からも数多くの講演者およびユ ーザの皆様をお迎えすることを考慮、日本語のほか、複数言語(今回は英語・中国語・韓国語)の同時通訳を用意するなど対応に努めています。
 10回目を数える今協議会では、UC-win/Roadの新バージョン(Ver.4)が今年9月に、さらにその後継ツールとして期待される「VR-StudioTM」が8月にも初版リリースを予定していることを踏まえ、それらを中心に関連する当社製品の最新開発情報をご紹介。VRの先進的かつユニークな活用事例を中心とした「VR-Studioへの新展開」と題するメインセッションのほか、「ドライビング・シミュレータ」と「CAD & VR」それぞれにフォーカスした技術セッションにより構成しました。併せて、メイン会場前のオープンスペースに6軸モーション対応体験シミュレータなどを設置し、最新のVR技術を多くの参加者に体感していただきました。

 第10回 UC-win/Road協議会 レビュー(発表資料)


 ■ 午前のメインセッション

 午前11時にスタートした協議会の冒頭、当社社長伊藤裕二はまず、2000年のUC-win/Road初版リリースおよび協議会発足から、9年に及ぶそれぞれの推移を整理。次いで直近にリリースが迫るUC-win/RoadおよびVR-Studioの位置づけ、これらの開発・サポート体制およびそれによる高度かつ多様なニーズへの対応について説明しました。
 また、「ソフトウェア・プロダクト・オブ・ザ・イヤー2002」受賞を機に2002年にスタートした「3D・VRシミュレーションコンテスト」に対し、2007年からはVR-Studioをベースとする次代の市場展開に向けて組織された「World8」を軸とする「国際VRシンポジウム」を併催してきました。今年はこれに、従来は別途開催してきた立体骨組み構造の3次元解析プログラム「UC-win/FRAME(3D)」および「UC-win/UC-1」の各ユーザ向け協議会「FORUM8デザインコンファランス」を統合。「FORUM8デザインフェスティバル」(2009年11月 18日〜20日、東京コンファレンスセンター 品川)として、さらに規模を拡張して実施する予定である旨ご紹介しています。
 併せて、UC-win/Roadの入門書や応用ハンドブックなどの教育ツール、FORUM8認定VRエンジニアをはじめとする認定制度を整備。その一方で、CADや解析ソフト、GIS(地理情報システム)といったソフトウェア、あるいはドライビング・シミュレータやモーションプラットフォームなどハードウェアとの連携も強化。こうした取り組みを通じ、10年前に描いた当社の全体構想がほぼ実現されつつあり、今後はVR-Studioが力強い牽引役となって新たな可能性へと展開していくものとの考え方を示しました。

 ● 開発者講演
 続く開発者講演の前半は、FORUM8 NZのVR-Studio開発担当者が8月リリース予定の新製品について「VR-Studio Ver.1、先端VRの新機能」と題し、まずリボンコントロール技術の採用による新しいユーザインターフェース(UI)の実現、大規模な地形(空間)データへの対応、マルチユーザ・エディティングへの対応、といったUC-win/Roadとの違いを中心に解説。道路や断面、切土・盛土、ランプなどの作成・設定・編集の手順を説明した上で、それらの機能を使って操作する様子をデモンストレーションしました。
 講演の後半は、当社担当者がまず6月中にリリース予定の「UC-win/Road Ver.3.4」における新機能として、火と煙に関する多様な表現とその設定方法、英国交通研究所(TRL)の交通ネットワークの交通信号制御を最適化する「OSCADY」との連携機能をご紹介。次いで、9月リリース予定の「UC-win/Road Ver.4」におけるバージョンアップ内容について、データ作成機能の改良、映像品質の向上、対応するディスプレー・ハードウェアの拡張、ドライビング・シミュレーション体験のステップアップ、使い勝手の改善といったポイントから説明。その後はさらに、スクリプト機能の改善、ログ出力 機能の実現、歩行者表現の改善、データ変換機能の拡張を目指す方針を述べました。
▲会場・東京コンファレンスセンター・品川 ▲VR-Studio Ver.1、先端VRの新機能


 ■ 午後のメインセッション

 午後1時から5時までのセッションは3会場に分けて実施。メインセッション(Stream-1)は「VR-Studioへの新展開」、技術セッションはStream-2が「ドライビング・シミュレータ」、Stream-3が「CAD & VR」という、それぞれテーマを掲げました。各セッション(Stream)を構成する特別講演およびプレゼンテーションのポイントは以下の通りです。

 メインセッション : VR-Studioへの新展開

 ● 特別講演 1
 Stream-1最初の特別講演は、NPO地域づくり工房代表理事の傘木宏夫氏(長野大学非常勤講師)による「地域づくりにおける合意形成技術〜まちの安心・安全マップとVRモデリング〜」。同氏はまず、地域づくりにおいて行政および技術者側と住民側との間に立って合意形成を支援するファシリテーターの役割を解説。自らファシリテーションを担った神戸市西須磨地区の都市計画道路事業(2001年)においてUC-win/Roadを最初に活用して以来、その有効性に着目してきたと振り返ります。そこで今回、まちづくりにおけるファシリテーションの一手法としてマップ作りに焦点を当て、アナログ的なマップ作りの手順を説明。続 いて、今回講演に向け事前に中目黒駅周辺を実際に歩いて取り組んだマップづくりの様子を再現、さらにそれを基に当社担当者がUC-win/Roadを使って作成したVRデータを紹介しました。その結果、ハザードマップと連携した代替案の比較検討など、従来の紙ベースのみではなし得ない新たな計画協議のあり方も期待できるとしています。
▲NPO 地域づくり工房 傘木宏夫氏 ▲『地域づくりにおける合意形成技術』
〜まちの安全・安心マップとVRモデリング〜

 ● 特別講演 2
 続く首都高速道路(株)東京建設局調査・環境第一グループ担当マネージャーの田沢誠也氏は「DSを活用した大橋JCTの走行支援策の実証実験」と題して講演。中央環状線新宿線と同品川線、高速3号渋谷線を双方向で接続しようという大橋ジャンクション(JCT)に関し、まず、その空間的制約から最大約70mの高低差がある地下トンネル(地下35m)と高架構造(地上35m)を四枝交差で処理、2回転のループ状で接続する構成など事業の概要を紹介。ただ、閉鎖空間をループ状に走行するためドライバーの空間認知能力低下への懸念もあり、走行支援対策を反映したドライビング・シミュレータ(DS)によりその 効果や影響の検証が求められたと経緯を述べます。その際、とくにポイントとなったのが時間で、今回は当社DSの導入決定からほぼ3ヵ月でUC-win/RoadによりJCTの完成イメージをリアルに再現。講演では分岐案内・速度抑制・追突防止の各観点から施された対策案について18名の被験者が検証で使用したDSの映像をデモンストレーションしました。DSの結果を受け、実際の現場に近い材料を用いて再度検証実験。それらを通じ、色による誘導案内は有効だが色のコントラストへの配慮は必要、距離標示やトンネル警報板は有効、などの知見を得。加えて、イベントの体験コーナーなどでDSの有効活用も図られたと語ります。
▲首都高速道路株式会社 田沢誠也氏 ▲『DSを活用した大橋JCTの
走行支援策の実証実験』

 ● 特別講演 3
 (独)自動車事故対策機構(NASVA)安全指導部チーフの布施智行氏による講演は「運転適性診断システム『ナスバネット』におけるDSの活用」について。同氏は初めに、NASVAが行う適性診断業務の目的や実態を解説。その中から、測定結果の安定性を確保し、定期的な受診者を飽きさせず、しかも実際の運転ぶりを分析できる新たなDSが求められたと言います。こうしたソリューションとして、UC-win/Roadを使い約5kmの市街地幹線道路、商店街の道路、高速道路を走行する間に20程度イベントが発生するというモデルコースを作成。運転車種はトラック・バス・乗用車の3種を想定し、20代〜70代の運転業務従事 者から成る被験者(年代・運転車種ごとに各10名)計200名以上を対象に模擬運転診断を実施。その際、UC-win/Roadのデータ記録機能により、1/30秒ごとに自動車の速度、走行位置、周囲の物体との距離などを記録して年代・車種ごとの測定データ分布を算出。サンプルの点数分布を基に安全エコ運転度・先急ぎ運転度・予防安全運転度・思いやり運転度の各診断に対して評価尺度を作成し、受診者の評価に用いることとしました。すでに2万人近くの診断に適用。2回繰り返し受診時の影響なども窺えるものの、いずれの診断項目に関しても妥当性が認められると分析。その上で、今後はさらに運転コースを増やすとともに、業態に 特化したコースの設定なども図っていく考えに触れます。
▲独立行政法人 自動車事故対策機構
布施智行氏
▲『運転適性診断システム
「ナスバネット」におけるDSの活用』

 ● 特別講演 4
 また、慶応義塾大学理工学部電子工学科の青木義満准教授は「ITS画像センシング技術の新潮流とVR活用」と題する講演を行いました。同研究室ではもともとITS(高度道路交通システム)に関連し、安全運転支援あるいは快適性・利便性の向上を目的にさまざまな画像認識技術を展開。今回はその一環として自ら取り組む安全運転支援技術とVRとの連携の可能性に焦点を当てます。同氏が注目する一つが運転の質(QOD)を評価するシステムで、ビデオカメラで撮影した前景動画像を基に蛇行の度合いや速度の適正さ、車間距離の確保などをリアルタイムでセンシングしながら記録、評価のパラメータとするも の。これまで使用してきたDSが古くなったため、当社のDSにより長時間運転や酒酔い運転、居眠り運転時のQOD評価など多様な実験への活用を期待しています。もう一つはドライブレコーダーの事故映像を画像処理により解析、事故の発生状況を定量的に再現する事故解析ソフトの開発。今回はその概念を具体的に示すため、当社で作成したデータを使ってデモンストレーションしました。今後は実映像の画像解析が困難なケースなど、リアルなセンシングの結果とVRの融合がもたらすメリットを駆使、学外とも協力しながら有用なシステムを世に出していきたいと述べます。
▲慶應義塾大学 青木義満氏 ▲『ITS画像センシング技術の新潮流とVR活用』


 技術セッション : ドライビング・シミュレータ

 ● プレゼンテーション 1
Stream-2はまず、当社担当者による「TOYOTAインフラ協調シミュレータの構築」と題するプレゼンテーションからスタート。2008年11月にニューヨークで開催された「第15回ITS世界会議」において、トヨタ自動車のブースで活用された「インフラ協調シミュレータ」の開発経緯、およびその概要などをご紹介しました。

『TOYOTAインフラ協調シミュレータの構築』

 ● プレゼンテーション 2
続く「ドライブ・シミュレータ最新情報〜DS最新機能、エコドライブオプション〜」では、担当者が当社DSの最新機能について説明しました。とくに、エコドライブオプションとして、エコドライブの観点からドライバーの運転特性を測定できるプラグインを用意。これは、UC-win/Roadの走行ログを基に当該走行時の燃料消費量を計算、二酸化炭素排出量のグラフ表示もできるもの。鉄道シミュレータをはじめ各種シミュレータへの対応も提案しています。

『ドライブシミュレータ最新情報』 〜DS最新機能、エコドライブOp.〜

 ● 特別講演 6
(株)バーチャルメカニクス技術部長の滝田栄治氏は「車両運動モデルCarSimとUC-win/Roadの連携」と題して講演。車両運動シミュレーションソフト「CarSim」による車両の物理的な挙動計算から、自動車メーカーを中心とする多様な導入例、UC-win/Roadをはじめ関連ソフトとの連携とそれによる更なる可能性などにも言及しています。

『車両運動モデルCarSimとUC-win/Roadの連携』

 ● プレゼンテーション 3
OpenMicroSimは当社が開発・提案するオープンフォーマット(その利用ファイルフォーマットは、http://openmicrosim.org/にて公開)。「OpenMicroSimプラグイン」と題する当社担当者のプレゼンテーションでは、同プラグインのマイクロシミュレーションプレーヤーについて解説。3Dモデルの移動で表現されるさまざまなタイプのシミュレーションを再生する機能やその活用事例などもご紹介しました。

『OpenMicroSimプラグイン』


 技術セッション : CAD & VR

 ● 特別講演 7
Stream-3のオープニングは、(財)日本建設情報総合センター(JACIC)標準部長の秋山実氏による特別講演「社会基盤情報標準化委員会における3次元CADへの取り組み」。初めに同委員会の活動の推移、活動体制と主要な取り組みなどを概括。次いで、これまでの同委員会、あるいはCALS/ECアクションプログラム(AP2005およびAP2008)、第4次社会基盤情報標準化推進三カ年計画に向けた社会基盤情報の利活用グランドデザインにおける3次元CADや3次元情報に関わる動向、位置づけなどを解説しています。

『社会基盤情報標準化委員会における3次元CADへの取り組み』

 ● プレゼンテーション 4
これを受けて、当社担当者による「CAD-VRデータ交換最前線〜解析、CAD、GIS、Google EarthからVR〜」では、VRに関わる多様な建設情報標準化の動向と、VRと連携するCAD、解析、GIS、建機、設計の関わりを整理。とくに、交通流解析「OSCADY」やGISデータなどとのUC-win/Roadとの連携、マイクロシミュレーションプレーヤーや3次元配筋といった新機能について詳述しました。

『GIS-VRデータ最前線』 〜解析、CAD、GIS、Google EarthからVR〜

 ● 特別講演 8
また、(株)ニュージェック執行役員近畿支店長の寺尾敏男氏は「OHPASSとUC-win/Road連携〜3次元道路景観設計システムの構築〜」と題して講演。まず、遺伝的アルゴリズム(GA)を用いた道路最適線形探索システム(OHPASS)の開発に至る背景、システム概要、その利用による設計の効率化について解説。さらに、UC-win/Roadとの連携により構築した3次元道路景観設計システムに関連し、その概要、システムの検証、それらを通じて浮かび上がった課題、今後の可能性への見方にも言及しています。
『OHPASSとUC-win/Road連携』

 ● プレゼンテーション 5
さらに、「3Dデジタルシティの構築」と題する当社担当者のプレゼンテーションではVR-Studioを利用した3D都市モデルの構築を提案。それに基づく景観から交通、各種災害など多様かつ高度なシミュレーションへの適用可能性を説明しました。

『3Dデジタルシティの構築』
<最後のメインセッション>
 今回協議会のクロージングは、各セッション会場から再びメイン会場に統合する形で午後5時から、特別講演5として行われました。

 ● 特別講演 5
 FORUM8 AZ代表の小林佳弘氏(アリゾナ州立大学(ASU)建築環境デザイン学部建築・ランドスケープ学科助教授)は「第3回 国際VRシンポジウムへの新展開」と題して講演。まず、2006年からASUにおいて取り組まれている「デジタル・フェニックス・プロジェクト」を契機とする当社との関わり、自身の研究におけるVR技術の位置づけ、および最近の研究について紹介しました。
 一方、冒頭でも触れた「World8」は同氏の提案を受け、2007年11月に発足。初の試みとなったこの国際学術グループは、7ヵ国に及ぶ8大学9氏により構成されました。「第1回 国際VRシンポジウム」(2007年11月)から「VRワークショップ at ASU」(2008年8月)を経、「第2回 国際VRシンポジウム」(同年11月)をもって当初予定された活動が区切りとなったのを受け、VR-Studioのリリースとも重なる2009年度は規模をさらに拡大。新たに「World16」プロジェクトが動き出している、と同氏は語ります。
 これに関しては既に「World16」に関する情報の発信・共有を狙いとして専用Webサイト(http://world16.forum8az.com/)を立ち上げているほか、新規に参加するメンバーの選出も進んでいます。
 そこで今回協議会では、新メンバーのうち、フロリダ大学建築学科ルース・ロン アシスタントプロフェッサーが「フロリダ州オーランド市中心街、I-4(州際道路4号線)橋梁地区の再設計」と題してビデオ参加。また、当初予定された台湾国立交通大学建築研究所の劉育東(Yun-Tung Liu)教授に代わって、同じく新メンバーである台湾国立交通大学博士課程の呉彦良(Yen-Liang Wu)氏(亞州大学非常勤講師)が「建築におけるバーチャルリアリティのアプリケーションの探究」と題し、さらにウィンストン・セーラム州立大学美術学科トーマス・タッカー アシスタントプロフェッサーが「地理的状況から見た首長国の建築遺産:ラムス、ダヤ、バラマを結ぶ三角地帯に関する事例研究」と題し、それぞれ「World16」としての活動を視野に講演を行いました。

すべてのセッション終了後、関係者およびユーザの皆様に情報交換の場としていただくべくネットワーキング・パーティを開催し、多くの皆様にご参加いただきました。有意義な機会となりましたことを重ねてお礼申し上げます。

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2009年11月18日〜20日  会場:東京コンファレンスセンター・品川(予定)

 ●第8回 3D・VRコンテスト 2009年11月20日開催予定
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