「デジタル・コンストラクション」コンソーシアムは、慶應義塾大学SFC 研究所の主催により、建設生産とデザインを総合的に捉えたデジタル技術の具体的な応用展開を目的とした情報交換ネットワークづくりとして進められているプロジェクトです。
フォーラムエイトも、一般会員として2017 年より参画しています。ここではその内容について簡単にレポートします。
BIMなどのデジタル情報技術の建築生産への応用により、施工における精度確保、安全性向上、短工期化といったイノベーションが起きています。これまでの規格化部品による矩形の建物だけでなく、非規格化部品による複雑な形状の建物が可能になり、建築のデザインを革新し、新しい価値を生み出すことが期待されています。
コンソーシアムでは、建設生産とデザインを総合的に捉えたデジタル技術の具体的な応用展開のための情報交換ネットワークづくりとして、シンポジウム、データベースの整備などが行われています。また、昨年は、慶應義塾大学SFCが研究活動成果を公開する場として毎年開催している「SFC
Open Research Forum (ORF)」にて、「産学連携で探る建築・建設システムのイノベーション」と銘打ち、「デジタル・コンストラクション」コンソーシアムについてのセッションも行われました。
本稿では、2018年に入ってから開催された勉強会の内容をご紹介します。
2017年度 第3回勉強会 「デジタルファブリケーションの現場を見学」 |
2018年2月23日(金)、東京都江東区新木場にある、株式会社乃村工藝社の新木場第2スタジオ(ノムラトレーニングセンター)にて開催されました。
デジタル・デザイン、デジタル・コンストラクションを得意としている建築家である、AnS Studio/aT ROBOTICS Inc.の竹中司様の講演では、石材および木材を人間の職人レベルでの加工ができるロボットの制御を行った実例が紹介されました。そのほか、現場での溶接や天井板施工などの建設のロボティクスについても開発中とのことです。
「ディスプレイ会社の BIMへの挑戦」 と題して、乃村工藝社 BIM委員会から、第3回先端コンテンツテクノジー展でBIMのプロセスを試行した事例が紹介されました(図1)。1点1点が異なる形状のパネルを組み合わせた展示用壁面の制作において、モデリングソフト→BIMソフト→作図→ナンバリングし鉄板加工機へデータ受け渡し→現場施工という一連のデータ連携を行ったとのことです。案を変更した際の再作図や、正確なナンバリングを現場まで引き継ぐことで、設計と施工の工程が大幅に効率化されたそうです。
展示物にBIMを利用した事例は先駆的であり、BIMの裾野の広がりを感じます。
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▲図1 複雑な形状の展示用壁面 |
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2018年度 第1回勉強会 「池田靖史教授によるオーストラリア視察報告」 |
2018年5月24日(木)に行われた勉強会は、現在海外留学中の池田靖史教授の帰国と合わせて開催されました。池田教授から海外視察報告として、オーストラリアの複数の大学での、先端的なデジタル・コンストラクションやコンピューテーショナルデザインの取組が紹介されました(図2)。RMIT(ロイヤルメルボルン工科大学)、メルボルン大学、シドニー大学、クイーンズランド大学では、それぞれ、デジタル・コンストラクションをテーマにした課題やワークショップ、研究が行われています。
RMITのRoland Snooks教授のラボでは骨組みをマルチエージェントシステムで生成し、3Dプリンタ出力した強度のあるオブジェ作成が行われています。クイーンズランド大学では、"外部ポストテンション展開式木材構造"(“External
post tensioned deployable timber structure”)という、木材のCNCカッターでの加工と組立を迅速に行うプレファブリケーションの技術開発が行われています。
これらの取組からわかるのは、ロボティクスの活用が工法だけでなくデザインにまで及んでおり、ただ複雑な形態や格好のよい形態を作り出すという狭義のデザインは行われず、実現可能な工法、新たなデバイスを使用した工法とセットで形態が考えられています。
参考:
【STUDIO ROLAND SNOOKS】
http://www.rolandsnooks.com/
Rapid Assembly with Bending-Stabilised Structures. UQ
【CFTS Research Pavilion 2016】
https://www.youtube.com/watch?v=sCO9KzDMuUo |
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▲図2 池田教授による講演 |
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2018年度 第2回勉強会 「Rhinoプラグインと
デジタルコンストラクション会員サイトの紹介」 |
2018年7月30日(月)に行われた勉強会では、Rhinocerosのプラグインの紹介や、デジタル・コンストラクションの事例や知見を収集、会員で共有するための会員サイトも紹介されました(図3)。
フォーラムエイトもUC-win/Road Rhinoプラグイン・オプションをリリースしています。これはRhinocerosで作成した3Dモデルを、UC-win/Roadの3D空間上に表示するためのプラグインです。VR-CloudRとの併用により、モデルをVR-Cloud®のユーザが閲覧することが可能になり、合意形成の効率向上や、シミュレーションのクオリティ向上などの効果が期待できます(図4)。
普及期に入ったBIMのデータ連携、プラグインは目覚ましい発展を遂げており、様々なプログラムをユーザがセルフビルドのようにカスタマイズできるエコシステムができています。
デジタル・コンストラクションコンソーシアムの詳しい情報は以下に掲載されています。
>> https://www.kri.sfc.keio.ac.jp/ja/consortium/digicon.html
コンソーシアムでは、今夏に1日程度の予定で、参画企業・大学参加によるワークショップが企画されており、参加各社の技術を融合することにより新しいソリューションが生み出されるきっかけづくりとして期待されています。
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