平成29年道路橋示方書の安定計算(偶発作用)の計算手法
        偶発作用時の安定計算は、杭体と地盤について荷重増分法により弾塑性解析を行っています。荷重増分法では、前ステップまでの状態における杭前面地盤の弾塑性状態、杭体の曲げ剛性等を用いて作成した計算モデル(杭基礎の剛性行列)に、前ステップからの荷重増分を載荷して得られた変位、反力、断面力等の状態量を、前ステップまでの累計値に加算していきます。つまり、ステップごとに上記の計算を行って、原点変位の増分,各杭の杭頭反力の増分,各杭の状態量分布の増分を算出し、累計しています。
        具体的には、ステップごとに前ステップまでの累計値を用いて次のように計算しています。
        
          - 各杭の杭軸方向ばね定数Kvを設定
 押込み・引抜きの上限値に達した杭はKv=0.0とします。
- 各杭の地盤反力係数kHE分布を設定
 水平地盤反力度の上限値に達した部材はkHE=0.0とします。
- 2と杭体曲げ剛性を用いて各杭の杭軸直角方向ばね定数K1〜K4を算出
 杭頭モーメントが全塑性モーメントに達した杭は杭頭ヒンジとします。
- 道示W(参6.1),(参6.2)に記述されている三元連立方程式を作成 
          
- 4の三元連立方程式を解いて原点変位を算出 
          
- (参6.4)より、各杭の杭頭変位を算出 
          
- 5,6を用いて(参6.3)より、各杭の杭頭反力を算出 
          
- 7,2と杭体の曲げ剛性を用いて各杭の状態量(断面力,変位)分布を算出 
        
よくあるエラーメッセージの対処法
        偶発作用時の安定計算において、特に質問の多い杭前面地盤が全て塑性化する場合のエラー対処方法について紹介いたします。
        <ステップ1> エラーメッセージ
        
        地盤の弾塑性解析は、地盤反力度に上限値を設定し、上限値に達した後のステップではその部分の地盤ばねをとりはずしたモデルに変更します。このメッセージはこのモデル変更が進行し、地盤の全てが塑性化してしまい地盤ばねが無くなってしまった場合に表示しています。この場合、水平方向に支持するものがなくなりますので、構造解析が成り立たない構造となります。そのため、これ以上解析できないことを示すメッセージとして表示しています。
        
        
        <ステップ2> 該当ケースの詳細状態を確認
        
        地盤反力度の状態を確認するために「詳細表示」−「断面力図/地盤反力図」画面の描画対象で「前面地盤反力」を選択します。杭頭(深度0m)〜杭先端(深度6m)あたりまで、前面地盤反力度(赤線)が地盤反力度の上限値(青線)に達していることがわかります。また、杭頭(深度0m)で地盤反力度の上限値=0であることも分かります。
        <ステップ3> 入力箇所の見直しを検討する
        
        杭頭(深度0m)で地盤反力度の上限値=0であることは「上載荷重q」が考慮されていないと判断出来ます。
        <ステップ4> 上載荷重q=30(kN/m2)で再検討
        
        「偶発作用」−「地盤データ」画面の上載荷重q=30を入力し、受動土圧強度を再計算します。
        <ステップ5> 再計算後のメッセージ
        
        再計算したところ正常に終了しました。
        
        <ステップ6> 該当ケースの詳細状態を再確認
        
        地盤の塑性化が深度3m程度までになった事が確認できました。
        以上は、本ケースの対策方法としての一例です。他エラーについても製品ヘルプ「Q&A」−「杭基礎」−「地震時保有水平耐力」のQ23−27、33、34、35、36にエラー原因と対策方法などを掲載しておりますので、エラーが発生した場合はそちらもご覧頂けると幸いです。