3.設計編(考え方に関するQ&A) |
Q3−1. |
水セメント比、水結合材比、有効水結合材比はどのように違うのか |
A3−1. |
コンクリート標準示方書[施工編]におけるこれらの定義は以下のとおりです。
水セメント比:
フレッシュコンクリートまたはフレッシュモルタルに含まれるセメントペースト中の水とセメントの質量比。質量百分率で表されることが多い。
水結合材比:
モルタルまたはコンクリートにおいて、骨材が表面乾燥状態であると考えて算出されるペースト中の水量を結合材の質量の和で除した値。
結合材:
水と反応し、コンクリートの強度発現に寄与する物質を生成するものの総称で、セメント、高炉スラグ微粉末、フライアッシュなどを含めたもの。
また、結合材と水結合材比について以下のように解説されています。
結合材について
結合材とは、広義には骨材などを結合する材料を示し、たとえばアスファルトコンクリートではアスファルトを示す。同様に考えれば、セメントコンクリート中ではセメントペーストが結合材ということになるが、狭義にはセメントペースト部分の硬化に寄与する粉体をさす。この示方書では、後者を結合材と定義し、セメントのほか、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム、膨張材など、セメントと類似の結合効果をもたらす粉体材料も含めて、これらを総称する用語として用いることとした。
水結合材比について 水結合材比W/(C+F)
ここで、W:水の質量
C:セメントの質量
F:フライアッシュその他の結合材として使用する混和材の質量
フライアッシュセメント、高炉セメント等を用いる場合には、これらのセメントの質量はCで表される。
有効水結合材比は中性化速度係数の予測値を次式で推定する際に用いるW/Bをいいます。
αp=a+b・W/B
ここに、W:単位体積あたりの水の質量
B:単位体積あたりの有効結合材の質量
B=Cp+k・Ad
Cp:単位体積あたりのポルトランドセメントの質量
Ad:単位体積あたりの混和材の質量
k:混和材の種類により定まる定数
フライアッシュの場合、k=0
高炉スラグ微粉末の場合、k=0.7 |
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Q3−2. |
水セメント(結合材)比を入力した場合の質量はどのように定義しているか |
A3−2. |
水の質量を百分率で表した水セメント(結合材)比としています。したがって、このときのセメント(結合材)の質量は100となります。これらの水およびセメント(結合材)の質量は単位量(モルタルまたはコンクリートを1m3つくるときに用いる量)ではありませんので注意して下さい。 |
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Q3−3. |
中性化速度係数の照査を満足する水セメント(結合材)比を求めることはできないのか |
A3−3. |
中性化速度係数を水と結合材の比率を用いて推定する場合は、有効水結合材比W/Bを用います。Bには混和材の量をそのまま算入することはできません。したがって、W/Bは求めることができても、W/CまたはW/(C+F)を求めることはできません。 |
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Q3−4. |
普通ポルトランドセメントには高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ質混合材を混合したものがあるが、これらのポルトランドセメントを使用したときの有効水結合材比はどのようにして求めているのか |
A3−4. |
普通ポルトランドセメントにおいては混合できる高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ質混合材の総量はセメントの5%以下に制限されています。したがって、有効結合材の質量と結合材の質量には大きな違いがないので、100%有効であるとしています。 |
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Q3−5. |
水セメント(結合材)比や有効水結合材比から求めた値が負の場合の取り扱いはどのようにしているか |
A3−5. |
本プログラムで使用している推定式には以下の形式のものがあります。
(1)中性化速度係数: Y=F(X)
(2)コンクリートの拡散係数、透水係数: logY=F(X)
(1)においてF(X)が負の場合は、F(X)=0とします。すなわち、有効水結合材比がある値より小さい領域では、コンクリートの中性化は進行しないものとして取り扱います。
(2)においてF(X)が負の場合は、Yの値が小数になるだけであり、何ら不都合は生じないので、そのまま求められた値を使用します。 |
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Q3−6. |
安全係数等の係数を複数与えて照査することはできないか |
A3−6. |
乾燥しにくい環境か乾燥しやすい環境か、部位が上面か否かなどの条件により安全係数等が異なってきますが、本プログラムでは同一構造物においては使用されるコンクリートの品質は同一であると考え、厳しい条件で照査することを標準としており、安全係数等の係数は照査対象項目に対して一つだけ設定できるようにしています。 |
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Q3−7. |
水密性の照査において、Qcjdを算出する際に用いるb(照査対象部分のひび割れ長(m))とはどのような量か |
A3−7. |
照査対象部分に存在するひび割れあるいは継目の全長になります。 |
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Q3−8. |
水密性の照査におけるA(透水経路の断面に相当するコンクリートの全面積)とはどのような量か |
A3−8. |
一般には照査対象部分の面積となります。 |
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Q3−9. |
照査パターン2(特性値を満足する水セメント(結合材)比を求める)場合、各照査を満足する最大水セメント(結合材)比のうちの最小値を表示(出力)できないか |
A3−9. |
本プログラムでは任照査項目ごとに異なる照査パターンを選択することができるようになっています。したがって、上記の機能を持たせておりません。実際の設計においては最小値以下になるように水セメント(結合材)比を設定して下さい。 |
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Q3−10. |
中性化に関する照査や塩化物イオンの侵入に伴う鋼材腐食に関する照査に用いるかぶりの期待値とひび割れ幅を算定する際に用いるかぶりとは異なるのか |
A3−10. |
中性化に関する照査や塩化物イオンの侵入に伴う鋼材腐食に関する照査に用いるかぶりの期待値は、照査対象部位においてコンクリート表面に最も近い鋼材のかぶりの期待値(一般には設計かぶりとしてよい)となります。一方、ひび割れ幅を算定する際に用いるかぶりはコンクリート表面に最も近い引張鋼材のかぶりの期待値(一般には設計かぶりとしてよい)となります。したがって、配力鉄筋が主鉄筋より内側に配置されている場合には通常は同じとなりますが、はりのようにスターラップがある場合には、中性化に関する照査や塩化物イオンの侵入に伴う鋼材腐食に関する照査に用いるかぶりの期待値は、スターラップのかぶりとなり、ひび割れ幅を算定する際に用いるかぶりは引張鉄筋のかぶりとなります。 |
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Q3−11. |
配合設計において、セメント(結合材)水比とコンクリートの圧縮強度の関係を設定することとしているが、この式における定数aおよびbはどのように与えればよいか |
A3−11. |
[施工編]の解説では、上記に関し以下のように記述されています。
「コンクリートの圧縮強度は、ある範囲では、式(6.4.2)に示されるように、セメント(結合材)水比と直線関係にあることが知られている。この式における定数aおよびbは、セメントの種類や骨材の品質などによって相違するので、同一の品質について十分な資料がない場合には、試験によってこれらを定める必要がある。その場合は、適切と思われる範囲内で3種以上の異なった水セメント(結合材)比を用いたコンクリートについて試験して定めるのがよい。試験における誤差を小さくするため、試験値は2バッチ以上のコンクリートから造った供試体における平均値をとるのが望ましい。」したがって、十分な資料を有しない場合には、基本的には試験により定数を定めることとなります。 |
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Q3−12. |
維持管理編とひび割れ調査編があるが、いずれかを購入すれば、どちらも使用できるのか。 |
A3−12. |
いいえ、それぞれ別製品となっております。ご了承ください。
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Q3−13. |
塩化物イオンに対する設計拡散係数Ddを求める際、温度ひび割れや収縮ひび割れなどの施工段階における初期ひび割れについて、ひび割れ幅および間隔を求めることが困難な場合、どのようにするべきか。 |
A3−13. |
現状のひび割れ幅が[構造性能照査編]の許容ひび割れ幅以下であれば、次式を用いて良い。
Dd=Dk・γc・βcl
ここに、
Dk :コンクリートの塩化物イオンに対する拡散係数の特性値(cm^2/年)
γc :コンクリートの材料係数。一般に1.0としてよい。
ただし、上面の部位に対しては、1.3とするのがよい。
なお、構造物中のコンクリートと標準養生供試体の間で品質に佐賀生じない場合は、
全ての部位において1.0としてよい。
βcl:初期ひび割れの影響を考慮した係数で、1.5として良い。
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Q3−14. |
中性化に関する照査において、中性化深さの設計値ydのばらつきを考慮した安全係数γcbは、どのような値を入力すれば良いか。 |
A3−14. |
一般には、1.15を入力し、高流動コンクリートを用いる場合は1.1としてください。
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