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杭基礎の設計計算 Q&A


8.底面前面水平抵抗

Q8−1. 地盤反力「K1,K2」を入力したにも拘らず、計算に反映されず前面水平抵抗を考慮しない場合と比べても結果が変わらない。
A8−1.

本プログラムでは前面の地盤反力は地盤の抵抗力「P1、P2」を超えないものと考えています。

  1. K1,K2による抵抗力>P1,P2による抵抗力の場合
    P1,P2による抵抗力を水平荷重として考慮します。

  2. K1,K2による抵抗力<P1,P2による抵抗力の場合
    K1,K2による抵抗力を水平荷重として考慮します。

  したがって、前面の地盤の抵抗力が小さい場合にはバネが弱い場合と同様の評価になります。地盤バネをそのまま評価したい場合には抵抗力に大きな値を入力して下さい。

 
Q8−2. 前面水平抵抗としてコンクリートがあるため、P1=P2=0.0と入力したい。
A8−2. その場合は「Q8− 1.」で述べたように便宜上「K1,K2」より大きな「P1,P2」を入力すれば「K1,K2」による抵抗力を考慮できます。

9.安定計算(杭反力、変位)

Q9−1. 市販の参考図書と杭反力等が一致しないのはなぜか。
A9−1.

 以下のようなことが考えられます。

 (1) 市販の参考図書が一様地盤モデルで計算されている。
  杭の支持力を算出する場合には多層地盤とし、杭軸直角方向のバネ定数は一様地盤と仮定して安定計算や杭体断面力の算出を行っている例が数多くあります。
 (2) 準拠示方書が旧く水平方向地盤反力係数の値が異なっている。

  以前は換算載荷幅を杭径として地盤反力係数を求め、常時、地震時とも同じ地盤反力係数を用いていました。

 
Q9−2. 斜杭が前方に2列ある場合2列目の杭反力の方が大きいのはなぜか。
A9−2. 杭の軸方向バネ定数が大きい場合、上記のような基礎に水平力が作用すると、フーチング前方が持ち上がるような変位が生じます。このため水平力による押し込み力は第1列の杭よりも第2列の杭の方が大きくなります。このことにより作用力の案配(鉛直力や回転力に対して水平力が大きいなど)によっては上記のようなことになります。斜杭の場合は直感と異なる現象になることがありますので、じっくり考えることが大切です。
 
Q9−3. 「原点変位:δx」とδfxの違いは何か。
A9−3. 「δfx」は設計地盤面での変位です。
したがって底版下面=設計地盤面の場合:「δx=δfx」、
      突出杭の場合:「δx>δfx」となります。
 
Q9−4. 杭頭の結合条件を剛結と設定したが、結果確認は剛結で良いのか。
A9−4. 杭頭結合条件が剛結・ヒンジと設定されたとき、剛結,ヒンジ両方の計算を行っています。
これは、「道路橋示方書・同解説W下部構造編(平成8年12月)社団法人日本道路協会」10.9.1完成後の荷重に対する検討で杭頭ヒンジ結合と考えた曲げモーメントを用いて設計するよう記載されているためです。したがって、杭軸方向反力が許容支持力をこえない,杭基礎の変位が許容変位を超えないことの照査は杭頭剛結で確認すれば良いと考えます。

10.断面変化の扱い

Q10−1. 杭の断面変化を行った場合、杭体の剛性等はどのように考えているのか。
A10−1.

杭種に関わらず断面変化毎にそれぞれの剛性を用いています。
なお突出杭区間では断面変化できません。

 
Q10−2. 杭の断面変化を行った場合換算載荷幅はどのように考えているか。
A10−2. 換算載荷幅を算出する際に用いる剛性は上杭のものを用いることにしています。これは換算載荷幅を算定するのに用いる長さが設計地盤面から特性長までの深さであり、この特性長を求めるには上杭の剛性を用いるのが最適であると判断したためです。
 
Q10−3. 杭の断面変化を行った場合軸方向バネ定数はどのように考えて算出しているのか。
A10−3. 杭の純断面積としては上杭のそれを用いています。これにより難い場合には軸方向バネ定数を別途算出し、入力して下さい。
 
Q10−4. PC、PHC杭で「断面変化あり」とし、「断面二次」の扱いを「総断面」とすると、仮に上杭、中杭、下杭それぞれについての種別(A、B、C種)を変えた場合、杭の剛性はどのように変わるか。
A10−4.

「総断面積」とした場合は、常に杭径、板厚から内部計算された断面二次モーメントを杭長全体に渡って使います。
「換算断面」とした場合のみ「杭データ」における種別指定が有効となります。

11.杭体断面力、断面計算

Q11−1. 地中部Mmax及びSmaxの検索方法。
A11−1. ・地中部Mmax:設計地盤面の次の着目点から杭先端までの間でせん断力S=0.0になる点をMmaxとしています。
・Smax:設計地盤面から杭先端までの間で水平変位δx=0.0になる点をSmaxとしています。
 
Q11−2. 杭のモーメント及びせん断力値が、地中部以下が急に全て 0.000となる。
A11−2. プログラム内で、マトリックス乗算を何度も行っているため、M、Sが微小値になるにしたがってゴミがついてしまいます。そのためプログラム内で自動的に 0.000セットしています。(杭先端条件によってδx、M、Sの何れかの値が一定値以下になりますと 0.000セットしています)。
 
Q11−3. 断面力図の印刷が常に(1、1)の杭しか印刷されない。指定した杭の断面力を印刷できないのか。
A11−3. 杭長、杭径が全て同じで地層が水平であれば、どの杭の断面力も同じなので常に(1、1)の杭断面力図が印刷されます。
 
Q11−4. 杭体の応力度算定において軸方向力が安定計算時の杭頭鉛直反力と異なっているのはなぜか。
A11−4.

本プログラムでは杭体の応力度計算において以下の2つの考え方のうちどちらかが選択できるようになっています。

(1) 杭頭の結合状態によらず杭頭剛結合の場合の軸方向力を用いる。
この場合、以下の組合せについて応力度を算定し、いずれか厳しい方を出力します。
 (NとM
 (NとM

(2) 杭頭の結合状態に対応した軸方向力を用いる。
この場合、以下の組合せについて応力度を算定し、いずれか厳しい方を出力します。
 (NとM
 (NとM

ここに、 N:杭頭剛結合状態の軸方向力
     M:   〃    曲げモーメント
     N:杭頭ヒンジ結合状態の軸方向力
     M: 〃     曲げモーメント

 したがって「地中部ヒンジのMmax 」の計算において、杭頭剛結時の軸力を使う場合は「(1)(剛結)」を、杭頭ヒンジの軸力を使う場合は「(2)(ヒンジ)」を選択します。

 したがって安定計算で得た(剛結時の)鉛直反力と一致させたい場合は「剛結」を選択して下さい。
 この軸力の扱いについては『道路橋示方書』ではどのように考えて照査するのか明記されていません。杭頭結合条件を変えて安定計算を再度行うことがかなり面倒であった頃のやり方が引き継がれて、(1)で照査している例が多いようですが、(2)で照査する方が合理的であると考えています。
 なお、安定計算時の杭頭の結合条件がヒンジ結合の時は(NとM)の組合せになります。

 
Q11−5. 杭頭剛結合とした場合、杭体の応力度は杭頭ヒンジ結合の場合の検討も行うが、安定計算ではこの照査を行わないのはなぜか。
A11−5.

杭頭の結合条件が変わると杭反力は変わってきます。したがって、杭頭ヒンジ結合の状態の押し込み力のほうが杭頭剛結合状態のそれよりも大きくなる場合もありえます。ただ、杭基礎全体の安定を考えたとき@杭の許容支持力が不足している場合とA杭体の耐力が不足している場合とではその意味するところは大きく異なります。

(1)の場合許容支持力が多少不足していても地盤が破壊されて杭の変位が急激に大きくなることは考えられず、基礎の安定は十分保たれていると考えられます。

(2)の場合杭体が仮に破壊されたとすると基礎の安定は保たれているとはいえず、構造物を支え続けることはできません。

以上のことが杭頭剛結合の場合でも杭体の照査はヒンジ結合の状態でも行うことの理由であろうと思います。

 
Q11−6. 「2.5次元解析」で断面計算時、着目杭全てを網羅しているか。
A11−6.

安定計算は、指定した杭すべてについて行います。
断面計算は、以下の仕様になっています。

  (1) 「地層変化なし、かつ杭径変化なし」で直杭のみの場合
   「断面計算」で「行〜列」(0〜0)とすればモーメントは杭毎に同じなので荷重ケースごとにPmax、Pminになる杭をそれぞれ抽出して、その杭について応力度計算を行います。

  (2) 「地層変化なし、かつ杭径変化なし」で直杭、斜杭混在の場合
    「断面計算」で「行〜列」(0〜0)とすれば直杭について1)と同様に、荷重ケースごとにPmax、Pminになる杭をそれぞれ抽出して、その杭について応力度計算を行います。
   斜杭についても「行〜列(0〜0)」とすれば、全斜杭に対して応力度計算を実行します。

  (3) 「地層変化あり、かつ杭径変化なし」の場合
    杭毎に断面力が異なりますので断面計算時に「行〜列(0〜0)」とすれば、全杭に対して応力度計算を実行します。

  (4) 「地層変化あり、なし」に関わらず「杭径変化あり」の場合
    異なる杭径が混在しているため「行〜列(0〜0)」の指定ができません。断面計算時に一本ごとに杭断面(杭径、板厚、種別など)を入力し応力度計算を実行してください。

 
Q11−7. 「場所打ち杭」の場合、杭反力が正(押し込みの状態)の場合、断面照査時の軸力を0にしなくてよいのか。
A11−7.

S61「杭基礎設計便覧」には上記の記述がありましたが、H4「杭基礎設計便覧」にはその記述がなくなっています。
そこで本プログラムでも、上記の取扱いはしておりません。

 
Q11−8. 鋼管杭の場合、板厚を杭配置入力画面で入力しているのに「断面計算」データで、再び板厚の入力を促すのはなぜか。
A11−8.

断面計算時に板厚を小さく入力することで仮に応力がもったとしたら、再び杭配置の入力に戻り、板厚を入力し直すことで安定計算をし直すことに使えます。
また「上杭、下杭」と断面変化し、それぞれ板厚が異なる場合、板厚を上杭断面検討用、下杭断面検討用と2回入力する場合にも使います。

 
Q11−9. 杭の厚さを,上杭と下杭で変更しているが、断面計算の中杭上端の照査を行うと、下杭で設定した杭の厚さにならず,上杭で設定した杭の厚さで計算しています。下杭の厚さでの計算結果はでないのですか?
A11−9. 断面計算での板厚等の断面情報は、初期データとして安定計算に用いる上杭の断面情報を設定していますが、任意に変更可能という仕様になっています。
 
Q11−10. 杭本体の設計に於いて、道路橋示方書W編p361では、杭の引き抜き力を、地盤の状況に応じ低減すると記載してありますが、これに対応しているのか?
A11−10. 本プログラムでは、道示WP.361記載の軸力の低減には対応しておりません。
入力諸元を元に引き抜き力を算定し、その照査位置にかかわらず、常に杭頭における軸力を用いて断面照査を行っていおります。

12.段落とし

Q12−1. 1/2MmaxにおけるMmaxはどの状態の値を用いているか。
A12−1. 杭頭剛結時の杭頭モーメントMtおよび地中部モーメントMm、杭頭ヒンジ時の地中部モーメントMmの3つの中から最大Mの1/2をとります。
 
Q12−2. 1/2Mmaxの応力度算出時における設計軸力は杭頭剛結時の値か、杭頭ヒンジ時の値か。
A12−2. ・軸力選択のスイッチが「杭頭ヒンジ」の場合
  1. 杭頭剛結時の杭頭Mtおよび地中部Mmax、杭頭ヒンジ時の地中部Mmaxの中から最大Mの1/2を取り出します。

  2. その1/2Mmaxと杭頭剛結時の軸力Nとヒンジ時の軸力Nについてそれぞれ応力度を求め、大きい方を設計軸力としています。

・軸力選択のスイッチが「杭頭剛結」の場合
  常に杭頭剛結時の軸力を用います。

 
Q12−3. 「上杭、下杭」の「下杭」の断面計算をする際、照査位置の選択は「中杭上端」でよいか。
A12−3.

「上杭、下杭」の場合は「下杭上端」を選択できません。「中杭上端」を選択してください。
応力度計算に用いる断面は「断面計算」で入力した断面情報(杭種、杭径、板厚、種別など)とします。

 
Q12−4. SC杭の場合、抵抗モーメントMrは鋼管中心、鋼管外側のどちらで算出しているか。
A12−4.

 抵抗モーメントMrは「鋼管中心」で求めています。
 なお引張応力度は「断面計算」データで「鋼管中心、鋼管外側」の選択肢があります。またせん断応力度算出方法についても同画面において「換算、鋼管のみを考慮」の選択肢があります。(許容値も2種類用意しています。)

 
Q12−5. Mr(抵抗モーメント)の発生位置はどのように決定しているか。
A12−5. 応力度照査時に決定したケース、例えばσsが最大となるケースとして杭頭剛結時であったとすれば、この条件でMrは計算します(剛結時の軸力を使用する)。
 次に発生位置は、このMrと杭頭剛結時のモーメント図、ヒンジ時のモーメント図との(交点)を求め、どちらか深い方を選択します。
 なお発生位置は常に杭頭からの距離で示しています。
 
Q12−6. 上杭、中杭、下杭(あるいは上杭、下杭)と分けた場合、Mrの関係で適切な断面変化位置を計算するのか。
A12−6.

 上杭、中杭、下杭それぞれの杭長は自身で入力します。

 これに対して例えば照査位置を「中杭上端」とし、そこの断面情報(鉄筋量や鋼材量など)から抵抗モーメントMrを求めます。

 結果画面で「中杭上端」における断面力MやMrの「発生位置」(MrとMとの交点)が表示されますので、どこまで中杭を使用できるのかという判断材料が得られます。

 
Q12−7. Mrの「発生位置」が「0.00m」となる。
A12−7. Mrと断面力Mとの交点がないことを意味します。

13.結果一覧表

Q13−1. 安定計算結果で得た各杭位置で鉛直反力の最大、最小が「Pmax、Pmin」にセットされていない。
A13−1.

本プログラムでは杭径変化、杭長変化、地層傾斜ありなどの場合、杭タイプごとに許容支持力、許容引抜力を求めています。そしてこれらのタイプごとの許容値に対する杭反力(Pmax、Pmin)の比の中から、厳しい比を抽出したものが一覧表にセットされます。
また、杭反力と許容値の差が最大(Pminについては最小)となるものを抽出することも「計算条件」にあるスイッチにより指定できます。

なおタイプごとの許容値は「予備計算結果」の「許容支持力、許容引抜力」の出力において確認できます。

 
Q13−2. 「杭頭モーメントMt」と「地中部モーメントMm」が等しくなっている。
A13−2.

「Mm:地中部モーメント」は杭頭剛結時のMmと杭頭ヒンジ時のMmと絶対値を比較し、そのうちの大きい方をセットしています。
ただし杭頭剛結時のMmに関してはせん断力S=0.0となる点を検索しており、その点が見つからない場合は、結果的に設計地盤面位置のMにMmをセットしています。

 
Q13−3. 結果一覧表の出力が選択できない。また選択できても安定計算結果までは出力されるが、応力度の出力がされない。
A13−3.

 結果一覧表の出力が可能なための条件は以下の通りです。

 ・杭径が全て同一であること。
  (「基本条件」で「杭径 変化あり」としても入力した杭径が全て同一であれば出力可能です。)
 また応力度計算まで出力するためには
 ・「断面計算」データで荷重ケースNO(0〜0)と指定していること。
  (「0〜0」以外の場合、安定計算結果までしか出力できません。)
 ・応力度計算後、「保存メモの入力」を「確定」すること。
  (メモ名は入力してもしなくてもかまいません。)

※上記の各条件を満たせば「基本条件」において
  「地層傾斜、斜杭、断面変化、杭突出部の水平荷重」の各項目が何れも「あり、なし」に関わらず、また2次元解析、2.5次元解析に関わらず一覧表の出力ができます。

 
Q13−4. 「保存メモの入力」の「メモ名」は何に用いるのか。
A13−4.

 本プログラムは断面計算時に照査位置を変えたり、板厚を変えて断面計算を何度も実行できます。計算後、「保存メモの入力」を行えばメモ名別に結果を保存しておくことができます。そして「印刷項目設定」→「安定断面計算」→「計算結果一覧表」→「設定」→「断面計算結果出力データの選択」画面および「杭体断面力」→「杭体応力度」→「設定」→「応力度出力データ」画面においてメモ名が表示され、複数ケースの応力度結果の中から任意に出力するケースNOを選択できます。なお「メモ名」はプリンタ出力はいたしません。

 
Q13−5. 剛結・ヒンジ条件で設計したとき、杭頭ヒンジの結果を計算結果一覧表で出力出来るか?
A13−5. 杭頭条件が剛結・ヒンジのとき、計算結果一覧表の安定計算結果には、常に杭頭剛結の結果を出力しています。
これは、杭頭ヒンジ状態は杭体断面照査を目的としたものと判断しているためです。
その為、計算結果一覧表に杭頭ヒンジの安定計算結果を出力するには、杭頭条件をヒンジとして安定計算を行って頂く必要があります。
なお、この場合、杭頭固定の計算は行いませんので杭体断面照査も杭頭ヒンジのみが対象となります。

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